新・ことば事情
7101「シェムリアップか?シエムレアプか?」
カンボジアの世界的な遺跡「アンコールワット」がある町の名前である、
「シェムリアップ(シエムレアプ)」
で、日本人による事件が起こりましたが、この町の名前の表記に揺れがあります。
3月21日の日本テレビ「every.」では、
「シェムリアップ」
でしたが、『新聞用語集』『読売新聞スタイルブック2017』『毎日新聞ハンドブック』(2007年版)は、
「シエムレアプ」
です。
そして『NHK日本語発音アクセント新辞典』『共同通信記者ハンドブック第13版』『朝日新聞の用語の手引き』(2005年版)には、この町の表記は載っていませんでした。
実は4年前(2017年)9月の新聞用語懇談会放送分科会で、同じことについて伺いました。その際は、
「京都市が2年連続で世界一魅力的な観光都市に選ばれたというニュースで、同じくランキング上位に入っていた『カンボジアのアンコールワット遺跡がある都市の名前』の表記に揺れがある。各社はどう表記するか?」というもので、各社の回答は以下の様なものでした。
(TBS)外国地名の表記は現地音に近いものにすると弊社の「ガイドブック」に記してある。「①シエムレアプ ※『シェムリアップ』も使われている」と記してあり、1つの番組の中では統一するようにしている。
(ABC)クメール語「SIEMREAP」は、「シャム人がクメール人に敗れた地」の意味だと、ネットで調べたら載っていたが・・・。
(NHK)実際、世の中は「シェムリアップ」が圧倒的に使われている。それなのに『新聞用語集』が「シエムレアプ」を採用する理由の一つには、「シエムレアプ」=6文字、「シェムリアップ」=7文字で、「シエムレアプ」のほうが「文字数が少ないから」ではないか?
(共同通信)『新聞用語集』に従い「シエムレアプ」でやっている。共同通信が出している『世界年鑑』も「シエムレアプ」。しかし、実際の出稿例をみてみると、「シェムリアップ」もある。
(ABC)恐竜の名前で「テラノサウルス」は、昔は「タイラノサウルス」「チラノサウルス」などもあった。バラつきがあるのは、それと似ているのでは?
(NHK)新聞各社にも、総会で聞いてみてはどうか。
というような意見が出ました。(その後「総会」では聞いていません。)
その際①2017年9月4日と、②現在2019年3月21日の「グーグル検索」の件数は、
【1】「シェムリアップ」(外務省サイト他、ネット上では圧倒的多数派)
①51万1000件→②348万0000件
【2】「シュムリアップ」(外務省サイト「在外公館医務官情報」)
①3万5000件→②2万5800件
【3】「シエムレアプ」(新聞用語集、日本テレビ、外務省サイトODA白書)
①1万5500件→②5万3100件
【4】「シェムレアップ」
①2880件→②3810件
【5】「シアムリアップ」(外務省サイト「在外公館医務官情報」)
①1430件→②994件
【6】「シアムレアップ」
①44件→②61件
でした。
また今度の放送分科会で、各社の対応を聞いてみたいと思います。
(追記)
旅行会社のパンフレットを見ると、JTB・日本旅行・近畿日本ツーリストの3社は、いずれも、
「シェムリアップ」
でした。
(2019、4、18)