新・読書日記 2019_024
『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』(熊野英生、文春新書:2019、1、20)
「働き方改革」が叫ばれ、この4月からは「改正労基法」が施行されるこの時期、興味深いテーマ。長時間労働を減らして能率を上げる、生産性を向上させるには、どうすればいいのか?そもそも、なぜ日本は生産性が低いのか?(だから長時間労働になり、残業が増える)
その謎を解くべく読みだした。
「旧日本軍」の失敗から、「それと逆の作戦」を取ればよいというところから始まる本書。その「作戦」は、次の3つ。
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生産性を引き上げるために現場が予算を使い、投資が出来ること(物量重視)
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技術の優秀さよりも継続して儲ける方(フレーム)をつくること(持久戦志向)
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新しいテクノロジーを採用し、外部環境の変化に対応すること(判断の柔軟性)
だそうだ。
構造改革への舵切りを間違った大本は「成果主義」の導入であったと。この制度の欠点は、仕事の中には「個人の貢献」では測れない・データ化できない部分が無数にあることと、成果の評価が恣意的になったことだそうだ。そんなことみんな、最初から分かっていたことだが。それによってモチベーションが下がった。士気が下がった。当然でしょうね。
また、パソコンの普及で「ワンオペ」の傾向に拍車がかかったことが「生産性」を低くしていると。個人の業績を突き詰めれば突き詰めるほど「ワンオペ化」が進む。そうだなあ・・・。そして今言われている「働き方改革」が「脱時間給」で、それは結局(失敗に終わった)「成果主義」に行き着くのだと。
本書は途中からデータ・表が増えて、ちょっと難しくなったが、結論めいたというかポイントとなった言葉をピックアップする。
「働き方の生産性を高めることを通してしか、1日の労働時間を短くすることはできない」
「長時間労働を自制できない人は、どの職場にも必ずいる。企業側が強く指導するか、もしくは脱時間給をあてはめないかいずれかでしか防止することはできないだろう」
「個人の成果を追求する姿勢が、企業の業績に本当に寄与するのか(中略)短期的かつ刹那的な利益追求志向に陥る弊害」
「中長期的な利益を重視するものに対して、成果主義はそういった要請に応えにくいシステム」
「最大の問題は、成果主義を謳っているのにもかかわらず、成果が正しく分配されないことである」
「経費削減したまま生産性向上を求めようとする愚」
「生産性を高めるためには、時間をかけて『人づくり』をするしかないのだ」
「『目線』の高さが生産性アップにつながる」
まあ、簡単には難しいということは、よくわかりました。
経営者から労働者まで、みんなが同じ意識を持って戦う・働ける企業であれば、生産性を上げることができるのかも知れないなと思いました。しかし・・・そんな企業、ある?
あと、私が通勤途中に思いついて呟いた言葉も、UPしておきますね。
「一定の仕事量があって、限界まで効率を上げた場合に、その仕事にかかる時間を減らすには、二つの方法しかない。
一、全体の仕事量を減らす。
二、仕事に関わる人数を増やす。
『働き方改革』とは、この当たり前のことを経営陣が認識して対応することではないか?」と。