新・読書日記 2019_021
『もっと言ってはいけない』(橘玲、新潮新書:2019、1、20)
前著『言ってはいけない』の続編。
大きく言うと「遺伝」の話。
人間の性格や能力は、「遺伝」と「環境」のどちらが優勢か?
これを「遺伝」と言ってしまうと、遺伝的に優秀な人たちは孫子の代までずっと優秀で、優秀でない人たちは孫子の代まで優秀ではないということになって、努力する人がいなくなってしまう。ダメな人に教育しても「無駄」ということで「教育の否定」につながる。だからそれは、
「言ってはいけない」
ことだった。
しかし著者は、「環境」の影響ももちろん認めながらも、「遺伝」の持つ要素の強さに関して語る。
プロローグの「日本語の読めない大人たち」はショッキングだ。
OECD主催の学力の国際調査「PIAAC=ピアック」で、16歳から65歳の成人を対象として、社会生活において成人に求められる「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の3分野のスキルの習熟度を測定するもの。24か国・15万7000人を対象に行われた。
それによると、日本の順位は意外なことに各分野とも「1位」なのだ!
やっぱり日本人はスゴイ!と、ネトウヨのように喜ぶ前に、著者はこう続ける。
「日本ではレベル3の問題(本のタイトルと著者名を一致させる)ができない成人が27.7%いる。レベル4の問題(設問と本の概要を比較する)ができない成人はなんと76.3%だ。」
「なぜこんなことになるかというと、やり方がわからないからではなく設問の意味が理解できないからだろう。日本人の3割は、むかしから『教科書が読めない子どもたち』だった。そんな中高生が長じて『日本語が読めない大人』になるのは当然なのだ。」
また、「ITを活用した問題解決能力」の「レベル3」に設問例は、
「会議室予約の申込みメールの処理」
だ。しかしこれに対して、
「対象となった成人のうち『コンピューター経験なし』『コンピューター導入試験不合格』『コンピューター調査拒否』が合わせて36.8%もいる」
というのだ。これらを著者は、こうまとめる。
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日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない
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日本人のおよそ3分の1以上が小学校3~4年生の数的思考力しかない。
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パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。
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65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない。
えー!いくら何でも本当かなあ?・・・と思うけれども、心当たりがないではない。そりゃあ、「サイバー担当大臣」もパソコンは使わない(使えない)国だからなあ・・・。あながち「嘘」とも思えないわけである。
要は、
「環境によって獲得した形質は遺伝する。つまり『環境も遺伝も、共に子孫に影響を与える』と。その『遺伝部分』を『差別だ』と否定するのは間違いではないか?」
ということを述べているのだと思いました。