新・ことば事情
7062「帰化か?国籍取得か?」
「テニスの大坂なおみ選手は、アメリカと日本の二重国籍でも『日本人』として扱われる一方で、大相撲の力士は、日本人に帰化しても『(モンゴル出身)日本人力士』と、『日本出身(日本人)力士』とは区別される傾向があります。このように帰化した『日本人力士』と、日本出身の『日本人力士』を区別する『日本出身力士』という表現は必要なのでしょうか?議論された社はありますか?」
と、2月に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で質問したところ、各社から意見を頂きました。その中で、私を含めた委員の皆さんが特に注釈を付けずに使った、
「帰化」
という言葉について、日本テレビの委員から、
「先ほどから皆さん、『帰化』という言葉を使っているが、本来は『日本国籍取得』と言うべきではないか?」
という疑問が呈されました。
たしかに以前は「帰化」は、
「朝廷に帰属すること」
というのが本来の意味なので、差別的に捉えられるので使用せず、必ず、
「日本国籍取得」
と言い換えていましたが、最近は新聞も放送も特に気にせずに、
「帰化」
と使っているようです。この件について各社からは、
(NHK)「日本国籍取得」か「帰化」だが、「帰化」は法務省への「帰化申請」などの場合以外は使っていないと思う。
(WOWOW)1998年の長野冬季五輪の際に、アイスホッケー日本代表チームには「日系カナダ人」で日本国籍を取得した「日本人選手」がたくさんいたが、その際は「帰化」という言葉は使わないようにしていたと思う。最近は「大坂なおみ選手」などについて話すときでも「帰化」は使われている。大坂選手は3歳まで日本にいたので「日本人」という意識が、本人も周りも強いのではないか。
(共同通信)法務省の「帰化申請」のように、法律上は「帰化」を使うが、「帰化」は使わないことになっている。原則は「(日本)国籍取得」を使う。
とのことでした。
(追記)
2月23日(土)放送の読売テレビ「ニュースドライブ~辛坊さんついてきて」で「外国人労働者問題」を取り上げていました。実際に働いている外国人労働者たちの意見を聴きに行くという企画です。
その中で、群馬・大泉町の日系ブラジル人の女性が、
「日系ですが、帰化しました」
と話していて、そのまま文字をスーパーでフォローしていました。
(2019、3、26)