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『道浦TIME』

新・ことば事情

7061「日本人力士か?日本出身力士か?」

「テニスの大坂なおみ選手は、アメリカと日本の二重国籍でも『日本人』として扱われる一方で、大相撲の力士は、日本人に帰化しても『(モンゴル出身)日本人力士』と、『日本出身(日本人)力士』とは区別される傾向があります。このように帰化した『日本人力士』と、日本出身の『日本人力士』を区別する『日本出身力士』という表現は必要なのでしょうか?議論された社はありますか?」

と、2月に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で質問したところ、各社から意見を頂きました。それによると、

(NHK)スポーツデスクなどに聞いた。ラグビーでも「帰化」選手が多いので、「日本生まれ・日本育ち」じゃない選手に「日本人選手」は使わない。外国出身力士に「日本人力士」を使わず、「日本生まれ・日本育ち」の力士に「日本出身力士」と使うが、その取り決めをしているとか、議論したとかいうことはない。

(NHK・考査)(相撲実況を長年担当してきたが)国籍関係には、立ち入らないことにしている。「力道山」なども。歴史を振り返ると「2012年夏場所(5月)」に「旭天鵬」が優勝した際に、「旭天鵬」の国籍に関してクイズをした。実は「モンゴル出身」の「旭天鵬」は、優勝より前に「日本国籍」を取得していたので「日本人」だったと。その後、「2016年初場所」で「琴奨菊」が優勝して、「日本人力士」として「2006年初場所」の「栃東」以来「10年ぶりの優勝!」と言うつもりが、「日本国籍を取得して、日本人力士」となっていた「旭天鵬」が「2012年」に優勝していたので「4年ぶり」と価値が下がった。それで「日本人力士」と単純に言うのでなく「日本出身(日本人力士)」という表現が出て来たのだと思う。「2017年」に「稀勢の里」が横綱になるときも「日本人横綱」ということが取りざたされた。「1998年」の「若乃花」以来「19年ぶり」かと思ったら、「1999年」に日本国籍を取得していた「武蔵丸」が「日本人横綱」になっていたので、「日本人力士」とすると「18年ぶり」と少し期間が短くなってしまう。そういったこともあって「日本出身(日本人)横綱」という分類が出て来たのだと思う。NHKの実況では「日本出身力士(横綱)」は、あまり言わないようにしている。

NHKのこの委員は、メモも見ずに、とうとうと述べられたので、他社の委員から拍手が湧き起こりました。

(共同通信)以前は「日本"出身"力士」ではなく「日本"人"力士」だった。原稿データベースを見たら、野球の「メジャーリーガーは〇人目」という場合は、本当は「韓国籍」でも「日本人」に勘定して、「2012年頃」から「日本出身(メジャーリーガー)」という表現が登場し始めた。「大坂なおみ」も日本国籍を持っているし、国際的に活躍するスポーツでは、国籍がはっきりしないケースも多い。

(テレビ大阪)相撲は特別。国際的ではないからでは?

(テレビ朝日)ノーベル賞受賞者も「日本出身」を使っている。「ラグビー」の日本代表はどうか?

(日本テレビ)ラグビーは「日本代表」としている。帰化した選手も多い。

(共同通信)暗殺された、北朝鮮の金正男(キムジョンナム)も、「ベトナム」のパスポートを持っていたが、だからと言って「ベトナム人」と言えるかというと、疑問だ。

といった意見が出ました。

(2019、2、18)

2019年2月18日 19:57 | コメント (0)