新・ことば事情
7057「『固執』の読み方」
「固執」
という言葉の読み方は、
「コシツ」か?「コシュー」か?
と聞かれました。私は普通、
「コシツ」
と読みますが、実は「コシュー」も「間違いではない」という話を、最近聞いたことがあります。『三省堂国語辞典』編集者の飯間弘明さんからだっけな?うろ覚えですが。
確かに「固執」の「執」は「執念」の「しゅう」です。でも「執事」の「しつ」でもあるわけですよね。
そこで現状を調べてみました。
*「コシツ」が「見出し」(「コシュー」は空見出し):〇「コシツ」×「コシュー」
『三省堂国語辞典』「コシツ」。「コシュー」=空見出し
『三省堂現代新国語辞典』「コシツ」。「コシュー」=空見出し
『デジタル大辞泉』「コシツ」(「こしゅう(固執)の慣用読み」、「コシュー」=空見出し
『明鏡国語辞典』「コシツ」(「固執」(こしゅう)の慣用読みだが、今日では「こしつ」が一般的」。「コシュー」=空見出し
『新明解国語辞典』「コシツ」。「コシュー」=「こしつ」の古風な表現、とのみ。
『旺文社標準国語辞典』「コシツ」(参考)「こしゅう」とも読む。「コシュー」=空見出し
『現代国語例解辞典』「コシツ」「しつ」は「執」の慣用音。漢音は「しゅう」。その意味から、伝統的な読みは「こしゅう」だが、今日の口頭語では「こしつ」の方が一般的。「コシュー」=空見出し。
『新潮現代国語辞典』「コシツ」=「こしゅう」の慣用読み。「コシュー」=空見出し。
『NHK日本語発音アクセント新辞典』「コシツ」のみ
『NHKことばのハンドブック第2版』〇「コシツ」 ×「コシュー」
『新聞用語集2007年版』(放送で標準とする読み方例)〇「コシツ」 ×「コシュー」
*「コシュー」が見出し(「コシツ」が空見出し)
『精選版日本国語大辞典』「コシュー」。「コシツ」=空見出し(「しつ」は「執」の慣用音。漢音は「しゅう」)「コシュウ」用例=1422年『旱霖集』、「コシツ」用例=1915年『搦手から』(長谷川如是閑)
『広辞苑』「コシュー」(コシツとも)。「コシツ」=空見出し。
『岩波国語辞典』「コシュー」。「コシツ」=空見出し。
というような現状で、やはり現状では、
「コシツ」
が圧倒的のようです。