「ど真ん中」
という言葉について、2月の新聞用語懇談会放送分科会で、テレビ大阪の委員から質問が出ました。
「1月の夕方ニュースの、あすの予告ナレーションで、
『あすのやさしいニュースは、寒い冬でもほっこり温かい!大阪のど真ん中でたき火ができる新スポットから生中継です。』
というように『ど真ん中』という言葉を使ったところ、ベテランのアナウンサーから、
『"ど"真ん中という表現は、いかがなものか?』
という指摘がありました。実は、ナレーションを読んだアナウンサーも放送前に気付いて『まんまん中』への変更を提案したのだが、『ニュアンスが少し違ってくる』とディレクターに言われてそのまま『ど真ん中』で読んだとのこと。名古屋では1999年から『にっぽんど真ん中祭り』が定着していたり、関東でも『ど真ん中サミット』もあるようで、『ど真ん中』という言葉が身近に使われている気もいたします。接頭語の『ど』を使用する言葉の許容度含め、皆さまのご意見を伺いたい」
とのことで、ちなみにテレビ大阪では、
・「どスケベ、どアホ、ど近眼」など「人をけなす表現」は不可。
・「ど根性、ど真ん中、ど迫力」など「強調」のど」は許容。
だそうです。各社の意見は以下の通りです。
(NHK)1992年に山形県で「どまん中」という銘柄のコメが売り出され「名前がユニーク」と話題になった。NHKでは「ど真ん中」を禁止しているわけではない。しかし「俗に響く(聞こえる)ことがある」として、使い方には注意するよう言っている。「日本国語大辞典」には「ど真ん中」には2つの意味が載っており(1)関西地方で古くからある罵(ののし)る言葉(2)強めて言う言葉、となっている。
(日本テレビ)「ど真ん中」は関西の言葉で「まん真ん中」は関東の言葉、と大昔に習ったが今はTPOを考えて使い分ければいいのではないか。
(TBS)ラジオのCMで「ド迫力」というのが出て来る。「ドスケベ」「ド近眼」などの差別・侮蔑の言葉は、CM考査ではNG。
(フジテレビ)ニュース原稿では、政治家の言葉でよく「ど真ん中」は出て来る。ヒマネタでの「〇〇のど真ん中」は、数は少ないが出て来る。使い方に気を付ければ、使ってもいいのではないか。
(テレビ朝日)そもそも「ど真ん中」は使わない、特に女性アナは。若手男性アナウンサーに聞いたところ、先日の新橋の火事の中継で「オフィス街のど真ん中」と使ったという。「強調」する「ど」だ。あとは「ど根性ガエル」「ど根性大根」など。
(テレビ東京)「超弩(ど)級」の「ど」は、当時(1905年)世界最大(全長161m)のイギリスの潜水艦「ドレッドノート号」(=ド号)が基準となって、それを「超える」大きさという意味だったが、「ド根性」の「ド」と混同されているかも。
(MBS)放送で「ど」はあまり使わないが「ど真ん中」ぐらいは使う。「好みのタイプ」のことを「どストライク」と言うことも。しかし最近(侮蔑の)「ドスケベ」「ド近眼」は聞いたことがない。
(ABC)野球漫画「ドカベン」の岩木選手が、よく「ど〇〇」を使っていたイメージがある。スポーツニュースでは「ど真ん中」はよく使う。「まん真ん中」は「原稿」には似合わない。「実況」では先輩アナウンサーが「まん真ん中」を使っていたので、自分も使うようになった。これに対して「ど真ん中」は、ミスをして見逃してしまった場合などに使っている。また「左中間(右中間)のど真ん中」とは言わず、「左中間(右中間)のまん真ん中」という。明文化はされていない。
(KTV)テレビ大阪と同じ意見。関西出身アナウンサーが「『ど真ん中』はおかしい」と言っていたが、うちでは「どまんなか」というタイトルの番組を放送していた。ニュースでは「大阪のど真ん中」とは言わずに「大阪の中心部」にすると思う。
(共同通信)「どえらい」「ど真ん中」などはハンドブックに載っているが「まん真ん中」は載っていない。「政局のど真ん中」「青春ど真ん中」「東京のど真ん中」「ニューヨークのど真ん中」などの言葉の使用を、規制してはいない。
(WOWOW)新人の頃は(TBSでは)「『ど真ん中』は下品なので『まん真ん中』を使え」と研修で習ったが・・・。
というような感じでした。
ちなみに、過去に私がワードウォッチングした「ど〇〇〇」「ド〇〇〇」という例の記録を挙げると、
・「どキレイ」(2001年・エプゾンのプリンター「カラリオ」のCM)
・「どがいしょ(甲斐性)なし」(2005年・わかぎゑふ「大阪弁の秘密」、2009年・北野義則「知っているようでよく間違う日本語」)
・「ど真剣に生きる」(2006年・京セラの稲森和夫氏を取り上げたNHKの番組名)
・「会期が火曜から木曜でド平日」(2007年・辛酸なめ子「ヨコモレ通信」~週刊文春)
・「ド演歌」(2007年・「読売新聞」8月27日付)
・「どアラフォー」(2009年・米国人IT社長と結婚した歌手・長山洋子の発言)
・「ド金持ち」(2009年・田丸久美子「シモネッタの本能三昧イタリア紀行」)
・「痛みにどストライク」(2009年・筋肉痛緩和薬「バンテリン」のCM)
・「顔面どストライクや」(2009年・万城目学「プリンセス・トヨトミ」より)
・「ど暑い平日の昼下がり」(2010年・酒井順子「女子と鉄道」)
・「どタイプなんです」(2010年・日本テレビ「しゃべくり007」で女優・桐谷美玲の発言)
・「TOKIOドハマリ中!!」(2011年・GREEケータイゲーム「探検ドリランド」CM&新聞広告)
・「ドハンサム」(2012年・米原万里『他諺(たげん)の空似』)
・「ど生鮮」(2014年・「西友」のCM)
・「マンションの『ど真ん前』ですねえ」(2014年・読売テレビ「かんさい情報ネットten.」の「若一ミステリー」で女性アナウンサー)
・「ド真面目な彼女」(2014年・「週刊文春」AKB総選挙1位の渡辺麻友を指して)
・「スマホ どはやい」(2014年・スマホのCM)
・「超絶イケメン、どストライク!」(2016年・日本テレビ水曜ドラマ『地味にスゴイ!~校閲ガール・河野悦子』で、女優・石原さとみのセリフ)
・「どびつこう」(2016年・NHK朝ドラ「あさが来た」のスピンオフ番組で「がんすけ」さんのセリフ)
などがあり、「どどどどどど」っと、宮沢賢治のように書いてしまいましたが、コマーシャルやドラマなどで使われる傾向が強いようですね。
(2019、2、18)