新・読書日記 2018_185
『日本が売られる』(堤未果、幻冬舎新書:2018、10、5第1刷)
「幻冬舎」から出ているというのも注目だが、この本がベストセラーとなっている。
『日本が売られる』が売られる」状態ということは、現在の日本の状態を憂える人がかなりの数いるということで「希望」が湧く。
「いつの間にかどんどん売られる日本!」
と題された「まえがき」の後の、目次の前には、
「ある晴れた昼さがり」
で始まる有名な「ドナドナ」という曲の日本語の歌詞が記されている。
売られていく子牛。悲しいメロディーに、「日本」という国の将来を重ね合わせるようなこの「歌詞」の掲載は、堤未果さんが必要以上に「悲観的」に日本を見つめているように感じる。しかし本文を読んでいくと、「それも仕方ないかな」と思うぐらい、今の日本は"すでに"次々と売られている。気が付いたら、何も残らないのではないか?この国は。
第1章「日本の資産が売られる」では、
「水」(水道民営化)
「土」(汚染土の再利用)
「タネ」(種子法廃止)
「ミツバチの命」(農薬規制緩和)
「食の選択肢」(遺伝子組み換え食品表示消滅)
「牛乳」(生乳流通自由化)
「農地」(農地法改正)
「森」(森林経営管理法)
「海」(漁協法改正)
「築地」(卸売市場解体)
という「10のもの(分野)」が「売られている現状」が、詳しく説明されている。
さらに第2章では「日本人の未来が売られる」では、
「労働者」(高度プロフェッショナル制度)
「日本人の仕事」(改正国家戦略特区法)
「ブラック企業対策」(労働監督部門民営化)
「ギャンブル」(IR法)
「学校」(公設民営学校解禁)
「医療」(医療タダ乗り)
「老後」(介護の投資商品化)
「個人情報」(マイナンバー包囲網拡大)
が売られていると。
こうして見ると、ほとんどは「法律」によって個人の自由を奪っていくものばかり。当然「法律」は国会で審議されて決定していくのだが、その審議がおざなりで、強行採決などでどんどん可決していく現状。それに国民は、目を向けようとしない・・・。
もう、私達に残されたものは、何もないではないか!?
それを取り戻そうとすると「じゃあ、金を払え」という新自由主義の覇権国家。それはアメリカだけではない。覇権によって派遣になるのか、私たちは。
第3章では「このままではいけない」「売られたものは取り返せ」ということで、諸外国において同じような状態になったものを「取り戻す動きの実例」が記されている。
イタリア「お笑い芸人の草の根政治革命」
マレーシア「92歳の首相が 消費税廃止」
ロシア「有機農業大国となり、ハゲタカたちから国を守る」
フランス「巨大水企業のふるさとで水道公営化を叫ぶ」
スイス「考える消費者と協同組合の最強タッグ」
アメリカ「もう止められない!子供を農薬から守る母親たち」
我々、日本人は、「ドナドナ」の子牛のように売られて行くのを、指をくわえて「仕方ない」と思っていてはいけないのだという「励ましの言葉」が記されている。