新・ことば事情
7044「最高学府」
「最高学府」
というのは、具体的には「何」を指すのか?
「大学(一般)」
なのか?はたまた、学力では日本のトップとされる、
「東京大学」
だけを指すのか?
「2007読書日記176」に書いた本、
『最高学府はバカだらけ~全入時代の大学「崖っぷち」事情』(石渡嶺司、光文社新書:2007、9、20)
を読んでから、ずっと気になっていました。
この本の著者・石渡さんは「最高学府」を、
「大学全般」
を指して使っていましたが、それに対して私は「2007年10月21日」に、
「『最高学府』は、もともとは『単なる大学』のことを指すのではなく『旧帝国大学』のことを指していたので、正確な使い方とは言えないかもしれないですね。」
と書いています。
その後「2010年4月9日」には、
『女子と鉄道』(酒井順子、光文社文庫)という本を読んでいて、その中に、
「日本のトップオブ最高学府、東大と京大の鉄研を見てこようと思い立ちました。」
という使われ方をしているのを見つけました。
これは「トップオブ」が付いて「東大」「京大」なので、
「最高学府=大学全般」
を指しているようですが。単に「大学」ではなく「最高学府」という言葉を使うところから見ると、そこに「格式」と言いますか、なにがしかの、
「プレミアム感」
を醸しだそうとしているようにも思え、
「『東大』『京大』には『最高学府』という表現がふさわしかろう」
という思いも感じられます。
そのまま、ほったらかしになって、さらに9年近くが経った、2019年1月15日。
「ミヤネ屋」の原稿を持って、ナレーターの鹿瀬さんが、
「ちょっとよろしいでしょうか?」
と声をかけて来ました。
「原稿に『最高学府・東京大学で』とあるのですが、この『最高学府』の使い方は、これで良いんでしょうか?」
そこで『新明解国語辞典』で「最高学府」を引いてみたら、
「学問を学ぶ最高機関としての大学(特に、大学の数が少なかった旧制度化における旧帝大や一部私立大学の異称)」
とありました。
そのそも、昔は大学の数も少なかったので、
「大学=最高学府」
だったのですが、「大学」の数が増えて、大学進学率が50%を超えるようになったので、
「大学の中でもレベルの高い大学=最高学府」
と呼ぶ傾向が出て来ました。
しかし、本来の「最高学府」の意味を考えれば、
「それも、一概に間違いとは言えない」
ということではないでしょうか?
ということで、今回の「ミヤネ屋」では、
「最高学府の一つ、東大で」
という表現にしました。