新・ことば事情
7042「栄光に"包まれた"か?"輝いた"か?」
レスリング女子の吉田沙保里選手(36)の引退会見を放送する1月10日の「ミヤネ屋」で、そのVTR原稿を書いていたYディレクターから質問を受けました。
「『数々の"栄光に包まれた"吉田沙保里選手』という表現は大丈夫でしょうか?少し引っ掛かりを感じるのですが・・・」
「え?大丈夫じゃないの?でも確かに言われてみれば『栄光に包まれる』は、少し引っかかるかな。」
と答えて辞書で「栄光」を引くと、用例で出て来るのはほとんどが、
「栄光に輝く」
でした。そこから考えて、こう答えました。
「『栄光』は『光』だから、『"(内(吉田沙保里)"から"外"に向かって"輝く"』んだよね。それに対して『包まれる』『包む』は、『"外"から"内"に向かう運動』だから、『称賛』とか『拍手』などの場合には『包まれる』という違いではないかなあ。そして『栄光』が"内から外"へ『輝く』から、それに応える形で『称賛に包まれる』のではないかな。これは"相互作用"なので、そこに"混交表現"となる原因があるんじゃないかなあ。」
これで、私もYディレクターも納得。結局、原稿は、
「栄光に輝く」
になりました。