新・ことば事情
6985「こけら落とし」
10月25日のNHK夜7時のニュースの最後の方で、ラグビー日本代表があす(26日)、世界選抜と試合を行うというニュースを放送していました。来年は「ラグビーワールドカップ」が日本で開催されるので、力を入れているんですね。
その中で、試合の行われる大阪・東大阪市の「花園ラグビー場」は、ワールドカップに向けて改装されたそうなのですが、女性アナウンサーは、
「この試合がこけら落としです」
と原稿を読んだのです。
え?ラグビー場が「こけら落とし」?
映像を見ましたが「ドーム球場」ではなく、グラウンド部分には、全く屋根はありませんでした。え?何を言っているかって?実は「こけら落とし」という言葉は、
「屋根のある劇場などの新装オープン」
の際に使われる言葉なんですね。
「こけら」というのは、漢字では、
「杮」
と書きます「柿(カキ)」と似ていますが、違う字です。
「柿(カキ)」は右側の「旁(つくり)」の一番上は「、」で「なべぶた」ですが、「杮(こけら)」の右側の「旁(つくり)」の「縦棒」は「1本」でつながっているんです。
わかりにくいよね。
それはさておき、その「杮(こけら)」の意味は、
「材木の削りくず」
のことなので、
「建物が完成した時に、それを払い落とすこと」
を「こけら落とし」と言うんですね。ですから、
「新築・改築の『劇場』の初興行」
に使うのが普通で、屋根のない「プール」や、興行を行うわけではない「役所の新庁舎」に使うのは不適当である、と読売新聞社の『読売スタイルブック2017』には記されています。NHKは「ラグビー場」でも「OK」なのかな?