新・ことば事情
6976「LGBTQ」
アメリカの中間選挙を前に、ツイッターのフォロワーが1億人以上という歌手の、
「テイラー・スイフトさん」
が、「民主党支持」を表明し、中間選挙に登録して投票に行こうと呼びかけました。
その理由として、
「共和党候補は『LGBTQ』の存在を許容していないから」
ということを挙げていました。この、
「LGBTQ」
というのは、見慣れない・聞き慣れない言葉です。
「LGBT」
に関しては、「平成ことば事情6627LGBT(性的少数者)」で、去年の年末に書きました。昨秋開かれた「新聞用語懇談会」で、このことが議題に上がったからです。その後この1年で「LGBT」という言葉とその存在は、かなり急速に普及したと思いますが、それに「Q」が付いた、「LGBTQ」は、日本ではまだ一般的ではないでしょう。
「Q」=「Questions(クエッションズ)」
つまり、
「自分の性的指向が男女どちらであるのかが、わからない人」
なんだそうです。
去年11月の「関西地区用語懇談会」では、「LGBT」以外の「性的少数者」として、
・「インターセックス」=身体的に男女の区別がつきにくい人
・「アセクシャル」=無性愛者。同性も異性も好きにならない人
・「クエスチョニング」=自分の性別や性的指向に確信が持てない人
などがいて、「LGBT」が全ての「性的少数者」を含むわけではない、と。
そして、
「LGBTの認知度が上がる中で、かえって『その他の性的少数者』の疎外感が深まる恐れもある。」
と指摘していました。
また、同じく去年11月に岡山で開かれた新聞用語懇談会秋季合同総会では、
「最近ではLGBTの他に、自分の性別や性的指向に確信の持てない、模索中の人『クィアー・クイアー(Queer)』『クエスチョニング(Questioning)』の単語の頭文字である『Q』を加えた『LGBTQ』という表現も見かける他、『LGBTT』(最後の「T」は「身体と心の性が異なるため外科的手術によって一致させることを望む人=トランスセクシュアル(Transsexual)の頭文字)など、性の多様性を表す『頭文字語』は、まだたくさんある」
という発表がありました。この時点では、やはりまだ、
「『LGBTQ』は、まだ用例は少ないようだ」
とした上で、
《【ロサンゼルスAFP=時事】...ディズニー・チャンネルの番組に性的少数者(LGBTQ)が登場するのはこれが初めてではなく、2014年にドラマ「グッドラック・チャーリー」のあるエピソードにレズビアンのカップルが登場している。しかし同チャンネル番組のメインストーリーで性的少数派が扱われるのは今回が初めて。【翻訳編集 AFPBBNews】(2017/10/27-12:53)》
といったように、外信記事(翻訳含む)での使用例はあったようです。
また、
「2017年11月1日付『朝日新聞』のコラム『ことばの広場』で『SOGI(ソジ)』という言葉を紹介していた。『SO』=性的指向、『GI』=性自認。『LGBT』のうち『LGB』は『SO』であり、『T』は『GO』だ。」
という意見が、「産経新聞」の委員から出ました。
NHKの委員も、
「『LGBT・性的マイノリティー(の人々)』としている。『LGBTQ』での出稿はない。」とのことでした。
フジテレビの委員も、
「ここ1年の原稿では『性的少数者(LGBT)』『LGBT(性的少数者)』。少し前の原稿では『レズ、ゲイなどを指すLGBT』で『LGBTQ』はなし。」
とのことでした。
この1年を見ていると、表記は、
「LGBTなど性的少数者」「性的少数者(LGBTなど)」
が多いようですね。
とここまで書いて、一つ気付きました。
例の『新潮45』を休刊に追い込まれた「LGBT」を巡る杉田水脈(みお)議員と小川榮太郎氏の文章。読もうと思って本屋さんなどを捜したのですが見つからなかったので、それを報じた週刊誌などの記事しか読んでいないので、これまでコメントは差し控えて来たのですが、週刊誌報道によると、このうちの小川氏の文章に、「LGBT」を指して、
「性的嗜好」
という言葉が出ていました。ここはポイントではないでしょうか?
「LGBTは『嗜好』ではなく『指向』」
なのではないでしょうか?そこの「漢字の使い分け」「言葉の使い分け」から、「LGBT」がどういうものであるのかということを理解していないように感じたのでした。