新・ことば事情
6966「サタンとデビルの違い」
先月、同志社グリーのOB合唱団に混ぜてもらってコンサートに出た時に、
「黒人霊歌(スピリッチュアルズ)」
を6曲歌いました。その中の
「♪Little Innocent Lamb」(イノセントラム=無垢な羊)
という曲の中に、
「Devil, he's got a slippery shoe.」
「Just take one brick from Satan's wall,」
という歌詞が出て来るのですが、ここに示された、
「『デビル』と『サタン』の違い」
が判りません。
どう違うんだろう?と思っていたら「週刊文春」2018年9月20日号の町山智弘さんの連載コラム「言霊USA」の第447回に、
「The Satanic Temple」
というタイトルが。
読んでみると、8月16日に米・アーカンソー州の州議会議事堂前で悪魔を称える儀式が行われたとのこと。この儀式を執り行ったのが「The Satanic Temple」(サタニック・テンプル=悪魔寺院)の信者たち。
なぜそんなことをしたか?実は彼らは、神も悪魔も信じていない。アーカンソー州議会がキリスト教の「十戒」の碑を設置したので、それに抗議して、黒山羊の頭に両性具有の体と翼をもち、右手で天を左手で地を指さす魔物「バフォメット」の像を置いたとのことです。「バフォメット」とは、キリスト教の悪魔の一人で、「黒ミサ」を司る元々は「異教の神」なのだそうです。そして「サタニック・テンプル」がそれを掲げるのは、
「公共サービスは、あらゆる宗教から切り離さなくてはならない」
という抗議のしるしだそうです。
この「サタニック・テンプル」の創立者は、
「ルーシエン・グリーヴス」
という人物。現代のアメリカにおいて、中世の「魔女狩り」のようなことが行われている暗愚を啓蒙するために、グリーヴスは「サタン」を選んだ、と。
「ミルトンの『失楽園』の主人公、かつて天使だったが、神に反乱を起こし、地獄に落ちても屈伏せず、『天国の奴隷よりは地獄の主たれ』と叫んだ永遠の反逆児サタンを。グルーヴスのルーシエンという名前もサタンの天使時代の名前ルシファーから取られており、闇を照らす光を意味する。」
と記されていました。
そうなのか!「サタン」は「元天使」だったのか!ということは、
「堕天使」
とは「サタンのこと」なのか!しかも天使時代の名前は、
「ルシファー」
で、それは「光」を意味すると。ラテン語系では「ルーチェ」が「光」ですよね。同じ語源だなあ。明るさの基準の「ルクス」も、たぶんそこから来てるんだろうなあ。
あ、そういえば私は読まないんだけど、たしか漫画の『One Piece』(ワンピース)の主人公も、そんな感じの名前だったのではないか?・・・・調べたら、
「ルフィー」
でした。ちょっと似ている。
ふむ、そこから考えると、
「『サタン』が『悪魔の元締め・親玉』で『デビル』は『下っ端』」
なのかな。漫画の、
「デビルマン」
も「悪魔の親玉」という感じではなかったな。じゃあ、「デーモン閣下」の、
「デーモン」
はどうなるんだろうか?
それはちょっと、「♪Little Innocent Lamb」(イノセントラム=無垢な羊)には出て来なかったので、わからないけど。次への宿題ですね。
「平成ことば事情3051マット・デイモンは悪魔か?」もお読みください。