新・読書日記 2018_132
『痕跡本の世界~古本に残された不思議な何か』(古沢和宏、ちくま文庫:2015、6、10)
ツイッターで紹介されているのを見て「おもしろそう」と思って取り寄せた、ちょっと前に出た本。
「痕跡本」
というのは(この本の著者が名付けたようだが)、書き込みがあったり、手紙が挟まっていたり、カバーが糊付けされていたりと、何らかの「痕跡」が残っている「古本」のこと。そこから「その本の、以前の持ち主の人生」を想像するというのが「痕跡本」の楽しみなのだそうだ。たしかに古本を買って、そういった痕跡が残っていたりすると、その本の数奇な「人生」ならぬ「本生(ほんせい)」や、「前の持ち主」に思いを馳せることがある。
古本屋さんで手に入れたものだと「他人」だが、「両親」や「親戚の本」だと、
「父はこの年代に、こんなことを考えていたのか」
などと、その直筆の文字を見るところから想像できたりするので、私も「痕跡本マニア」になる素質は十分あると思う。でも、他人の本で「呪い」みたいなのが残っていると、嫌だな。
この本で紹介された中では、やはり『平和の政治学』という岩波新書、
「この本を拾った人は、持って来て感想を聞かせて」
と書かれていた45年も前の本のエピソードが印象深い。名前と住所が書かれていたところから辿って行って、なんと持ち主が分かって返しに行くというストーリー。これは番組になるな!と思ったら、実際にテレビ番組になったのだそうです。結末は、本書を読んでみてください。
ちなみに「カバーを逆につけて読む」という本のシーンもあったので、そこから後は、私もこの本のカバーを「さかさま」につけて読んでみましたが、何となく落ち着かないものですね。
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