新・ことば事情
6960「母校」
ネットで見た記事に、
「『母校』とは、その学校を卒業した人が呼ぶもので、在校生は使えない」
と書かれていて、
「え!そうなの!?」
と驚きました。本当かな?辞書を引いてみると、
「自分が学んで卒業した学校。出身校。」(広辞苑)
「自分が卒業した学校。出身校。」(精選版日本国語大辞典)
「自分がそこで学び、卒業した学校。出身校。」(新明解国語辞典)
「自分の出身学校。」(岩波国語辞典)
「その人が卒業した学校。出身校。」(デジタル大辞泉)
「その人が学び、卒業した学校」(新潮現代国語辞典)
ほんとにそう書いてある!
「卒業した後」
でないと「母校」と呼べないの?「中退」したらダメ?「転校」した場合は?
「中学1年から3年の2学期まで在籍して、その後転校して3学期だけを過ごして別の学校を卒業したというような場合」
は、「卒業した学校」が「母校」なの?「中学の大半を過ごした学校」は「母校」じゃないの?と、つい、ひねくれた例を思いついてしまいます。
大体、「わが母校」である「早稲田大学」の校歌『都の西北』の歌詞に、
「都の西北 早稲田の森に 聳(そび)ゆる甍(いらか)は 我らが母校」
と書かれています。
「我らが母校」
です。「在校生」も当然、歌います。「明治大学」だって、
「おお明治 その名ぞ 我らが母校」
と歌っているし、「法政大学」だって、
「法政 おお わが母校 法政 おお わが母校」
と歌っているではありませんか。これは「在校生」のための曲ではないのか???
「卒業生しか『母校』と呼んではいけない」
のであれば、この「校歌」は誰のためのものでありましょうか?
それに、
「母校の名誉を懸けて戦います」
という大学のスポーツ部の現役学生は「母校」と呼んではいけないのか!!?
まあ、しかし、そんなに熱くならなくても
「自分が学んでいる学校。また、自分が学んで卒業した学校。出身校。」(明鏡国語辞典)
「自分の学んでいる学校。また、卒業した学校。出身学校。」(旺文社標準国語辞典)
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自分の卒業した学校。②自分の在学している学校」(三省堂国語辞典)
「自分が学んでいる学校。また、卒業した学校。出身校。(現代国語例解辞典)
と、ちゃんと「在校生」も「母校」と呼んで構わないとしている国語辞典もあるので、ちょっと、ホッとしました。
でも「広辞苑」をはじめとした国語辞典は、「母校」の語釈を換えることを考えるべきではないでしょうかね?「広辞苑」なんかは、
「自分が学んで卒業した学校。出身校。」
というのを、
「自分が学んでいる学校。卒業した学校。出身校。」
と「4文字」増やすだけで直せるんだから。