新・ことば事情
6957「ノーベル生理学・医学賞の表記2」
10月1日午後6時20分ごろ、ことしの「ノーベル生理学・医学賞」に、京都大学の、
「本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授」
の受賞が決定しました!がん治療薬「オプジーボ」の開発などにつながった免疫チェックポイント分子「PD-1」を発見したことが評価されたそうです。ここ数年、毎年、
「受賞するのではないか?」
と本命候補に挙がっていたので、難しいお名前ですが、もちろん存じ上げています!
日本人の「ノーベル生理学・医学賞」受賞者(肩書は当時)は、おととし(2016年)の
「大隅良典・東京工業大学栄誉教授」
3年前(2015年)の、
「大村智・北里大学特別栄誉教授」
さらにさかのぼると、いまだに受賞時のイメージが強い、2012年受賞iPS細胞の、
「山中伸弥・京都大学教授」
と、日本人で初めて「ノーベル生理学・医学賞」を受賞した1987年の、
「利根川進・マサチューセッツ工科大学教授」
と、今回の本庶佑・京都大学特別教授の5人ですね。
この「ノーベル賞」の表記がマスコミによって違うということは、3年前の大村智・北里大学特別栄誉教授の受賞の際に気付き、その直後に開かれた新聞用語懇談会の秋季合同総会(2015年11月、愛媛・松山)で各社の表記について以下のように質問していました。
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『大村智さんの受賞が決まった「ノーベル生理学・医学賞」ですが、その部門の表記が各社、異なります。私の観察では以下の通りです。それ以外の各社の表記を教えていただきたいのと、なぜその表記になったかという「理由」も教えてください。
(日本テレビ・読売テレビ系列では、2012年、iPS細胞の京都大学・山中伸弥教授の受賞時から「ノーベル生理学・医学賞」で統一されました。「生理学」が先で「・」が入ってから「医学賞」の順番です)
★「ノーベル生理学・医学賞」=読売新聞・日経新聞・日本テレビ
★「ノーベル医学生理学賞」=朝日新聞・毎日新聞・テレビ朝日・TBS・山梨日日新聞(共同通信)
★「ノーベル医学・生理学賞」=産経新聞・NHK・フジテレビ・テレビ朝日
なお、英語での表記は
「Nobel Prize in Physiology or Medicine」(「Japan Times」)でした。
また、会議の前に寄った松山の書店で見かけた「大村先生に関する本の帯」も(「主婦の友社」と「小学館」だったと思いますが)「ノーベル生理学・医学賞」でした。』
これに対する各社の回答は、以下の通りです。
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(朝日新聞)慣習で戦前から「ノーベル医学生理学賞」。見出しで「医学賞」とすることもあり、そのためには「医学」を先にしたほうが良いのではないかなと思う。
(毎日新聞)理由はわからないが、戦後は「ノーベル医学・生理学賞」だったが、2004年に共同通信の表記に合わせて「・」を取り「ノーベル医学生理学賞」になった。
(共同通信)加盟社から表記に関して数回、問い合わせがあった。1987年、利根川進氏がノーベル賞を受賞した際から「ノーベル医学生理学賞」とした。(「・」は、なし。)「医学賞」と、見出しなどでは略す。ノーベルの遺言では「生理学」が先だが、既に「医学生理学賞」で定着しているので、そのまま。
(NHK)科学文化部のデスクに聞いた。「以前から『ノーベル医学・生理学賞』。他社もそれが多いと認識している。数年前に表記を変えるかどうか相談したが、『医学』が先に来た方が分かりやすいということで『そのまま』になった」ということだった。
今回(10月1日)、夕方のニュースを見ていたら、
(日本テレビ)生理学・医学賞
(読売テレビ)生理学・医学賞
(毎日放送)医学生理学賞
(NHK)医学・生理学賞
でした。