新・読書日記 2018_139
『下町ロケット~ヤタガラス』(池井戸潤、小学館:2018、10、3第1刷)
『下町ロケット~ゴースト』の続編、というか「ゴースト」が上巻で「ヤタガラス」が「下巻」ですね。他局でドラマも始まりましたが、まだ見ていない。
「ヤタガラス」というのは、神武東征の伝説に出て来る、神武天皇の道案内をしたとされる、太陽の中に住むと言われる「三本足のカラス」で、日本サッカー協会のマークにも使われていることで知られますが(知られてる?私はもちろん知っていますが)、この小説では、
「帝国重工の大型ロケットによって宇宙に送られた、準天頂衛星に付けられた名前」
です。その衛星を使って、数センチの誤差しかなく動く無人トラクターの開発の物語が、この『下町ロケット~ヤタガラス』です。
おもしろいです。
まず「悪役」をいっぱい設定するという意味では「時代劇」と同じで、しかも味方の内にも「内なる敵」がいたり、敵だと思ったら仲間だったり、その辺がさじ加減で面白いですよね。それでも「真心」というか「理念」を通す、「世の中を良くしたいという信念」で、周囲がうまく回るようになって行って、「めでたしめでたし」という「勧善懲悪」的なので、安心して読めますね。大体、読む前から、それは想像がつきましたが。安心理論。
ロケットの次は農機具。よく取材されていますね。
言葉で気付いた点。
(42ページ)満面の笑顔を浮かべた野木【満面の笑顔】
(62ページ)一時は佃製作所の売上げの相当部分を占めていたことすらある親密先だ。【親密先】
(82ページ)この日耕耘(こううん)するつもりの休耕田【耕耘(こううん)】
(95ページ)現在専務取締役の柴田和宣(しばた・かずのり)は(中略)いまの地位にまで上り詰めた。【専務=上り詰めた】
(154ページ)まさに背水の陣頭指揮を執ろうという考えなのかも知れない。まさに、乃公(だいこう)出(い)でずんばーーーである。【乃公(だいこう)】【背水の陣頭指揮】【まさに・・・まさに】
(174ぺーージ)的を射たらしい。【的を射る】
(212ページ)どこまで品質を追究するかが作り手に問われている。【追究】
(242ページ)ようやく訪れた汚名返上の好機なのだ。【汚名返上】
(272ページ)納得するまで原因を追究しているだろうよ。【追究】
(276ページ)第八章 帝国の逆襲とパラダイムシフトについて【帝国の逆襲】
(302ページ)その会議で檄を飛ばし【檄を飛ばす】
(311ページ)勿怪(もっけ)の幸い【勿怪(もっけ)の幸い】
(320ページ)"豪腕"の的場俊一【豪腕】
(325ページ)遊星ギアか【遊星】
(366ページ)重苦しく言葉を噤(つぐ)んだ【言葉を噤(つぐ)む】
ということで、「言葉の題材(ネタ)の宝庫」でもあります。