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『道浦TIME』

新・ことば事情

6998「9勝6ハイ」

10月29日のNHKお昼のニュース。大阪のスタジオからのニュースで、大相撲九州場所の番付発表を伝えていました。関西出身の力士の番付を、何と「十両」まで知らせるという、地方局ならではのニュースです。BK、以前からここまでやってたっけ?

その中で、小結・貴景勝の先場所の成績、

「9勝6敗」

「6敗」を、女性アナウンサーが、

「ロクハイ」

と読んだのには違和感がありました。ここはやはり「促音」で、

「ロッパイ」

でしょうね。

スポーツニュース関係の数字の読み方は、最近は、

「促音化しない傾向」

があるように感じますが、どうなんでしょうねえ。

(2018、10、29)

2018年10月31日 20:40 | コメント (0)

新・ことば事情

6997「レトロスペクティブ」

京都国立近代美術館で開かれている『没後50年 藤田嗣治展』に行ってきました。

そのポスターを見たら、英語で、

retrospectiveレトロスペクティブ)

と書かれていました。そうか、「回顧展」は「レトロスペクティブ」なのか!

「レトロ」

は日本語の外来語としてもよく使う、

「昔を懐かしむ」

という意味ですよね。そうすると、

spectiveスペクティブ)は『見る』」

というような意味かな。

そこで思い浮かんだのは、

「perspective(パースペクティブ)」

という言葉です。これって、

「完成予想図」

のことですよね。そうか、あの、

「パース」

というのは「パースペクティブ」の略語だったのか!

いやあ、つながってますねね。

調べてみると、「パー・スペクティブ」の「パー(per)」は「through(スルー)」、つまり「通して、貫いて」という意味だそうです。また、

「予測」「予測する」「予測の」

という意味の英語に、

「prospect」「prospection」「prospective」

がありますが、この接頭辞の「pro(プロ)」は、

「後=時間的な後=未来」

という意味ですね。見えて来たぞ!スペクティブ!!

(2018、10、31)

2018年10月31日 20:39 | コメント (0)

新・ことば事情

6996「A380の読み方」

会社の同期のS撮影部長(カメラマン)が、

「けさの『す・またん』で、アナウンサーが『A380』を、

『エアバス・サン・ハチ・マル』

って読んでたけど、それでいいの?」

と聞いてきたので、

「いや、エアバスは『サンビャク・ハチジュー』って読むことになってるはずだよ。新聞協会の用語懇談会放送分科会でまとめた『放送で気になる言葉2011』にもそう載っているよ。ボーイングは『787』を『ナナ・ハチ・ナナ』と読むけど。そのアナウンサーと、原稿にルビを振ったディレクターが知らなかったんじゃないの?」

と答えました。

その後、去年(2017年)6月の新聞用語懇談会放送分科会で、フジテレビの委員から、「A380」の読み方についての質問が出て討議していた記録を見つけたので、ここに載せておきます。

******************************

(フジテレビ)弊社では、エアバス社の航空機について「エアバスA380」は「エアバス・エー・サンビャク・ハチジュー」、「エアバスA340」は「エアバス・エー・サンビャク・ヨンジュー」と読んでいます。これについて、国土交通省の担当記者が、JALとANAに聞いたところ、

「社内や業界内では、『エアバス・エー・サン・ハチ・マル』などと読む。『サンビャク・ハチジュー』と読んでも別に間違いではないが」

との答えが返ってきたとのことです。各社どのように読んでいらっしゃるのでしょうか。

(テレビ東京)放送分科会で検討したものをまとめた『放送で気になる言葉2011』の100ページに載っている通り、「サンビャク・ハチジュー」と読む。

(日本テレビ)ルールマスターに聞いたら「サンビャク・ハチジュー」。『緊急取材ハンドブック2011』も「サンビャク・ハチジュー」。ただ「ボーイング」は「ナナ・××・ナナ」と読む。

(テレビ朝日)「A380」は「サンビャク・ハチジュー」。「ボーイング777」は、元々は「ナナヒャク・ナナジュー・ナナ」だったが、数年前「ボーイング787」が就航した際に「ボーイング」に関しては「ナナ・××・ナナ」に変更した。ただし、原則は「業界の慣習」と「放送での呼び方」は別と考えるべきだ。「FA18」「F35」などの数字も、そのまま「ジュー・ハチ」「サンジュー・ゴ」と読む。「P3C」も、アメリカや業界は「ピー・スリー・シー」だが、放送では「ピー・サン・シー」、「B2爆撃機」も、業界は「ビー・ツー」だが、放送では「ビー・ニ」。「ボーイング777」は、業界では「トリプルセブン」だが、放送では「ナナ・ナナ・ナナ」。「飛行機の便名」も「123便」は「ヒャク・ニジュー・サンビン」。「イチ・ニー・サンビン」とは言わない。

(MBS)全く賛成!電車でJR西日本の新型車両「225系」の読み方(呼び方)も、JR西日本の広報に取材したところ、

「業界では『ニー・ニー・ゴ』と呼んでいるが、放送で『ニヒャク・ニジュー・ゴケイ』と呼ぶのなら、それは放送の決まりでやってください。」

とのことだった。業界の呼び方を、放送に持ち込むのはダメだ。

(TBS)弊社前任の用語委員が、「ボーイング787」を以前の「ナナンヒャク・ハチジュー・ナナ」から「ナナ・ハチ・ナナ」にしたことについて、すごく怒っていた。たしか「ボーイング787」の日本就航の際に、通訳の人が「ナナ・ハチ・ナナ」と訳したのがきっかけだと、以前の放送分科会で聞いた覚えがある。ちなみに「トリプルセブン」は「全日空(ANA)の登録商標」なので、他の航空会社の「ボーイング777」を「トリプルセブン」とは呼べない。業界独特、ということで言うと「アクセント」にも、そういうものがある。宮内庁の人は「宮殿」を「頭高アクセント」で「キュ\ーデン」と言う。普通は「キュ/ーデン」と「平板アクセント」だろう。また、三菱のジェット機「MJ5」の「5」は、業界では「ファイブ」と読むが、ニュースでは「ゴ」。「H2A」も、業界では「ツー」だが、放送では「ニ」。ただし「PAC3」は「スリー」が定着してしまった。

(日本テレビ)病原性大腸菌「O―157」も、本当は「ヒャク・ゴジュー・ナナ」と呼ぶべきところだったが、最初に出て来たときに「イチ・ゴー・ナナ」に引きずられて広まり定着してしまった。「フェイズ1」「フェイズ2」なども「ワン」「ツー」の傾向が強い。

(ABC)しかし、読み方がわからないときには「専門の人=業界の人」に聞いて「専門家は、そう読むから」と、その読み方を取ることがある。「業界用語」と「放送用語」、どちらを優先すべきか?

(読売テレビ)原則は「放送用語」が主導だが、部分的には専門家に聞いて、それを採用することもあるのが現状。

(フジテレビ)「専門家のインタビュー」の言葉と「原稿の言葉」が違う場合もある。特に「新しい言葉」に関しては難しい・・・。

平成ことば事情3013「航空機の読み方」も、ちょっと古い情報ですが併せてお読みください。

とここまで書いて、

「これはもしかしたら、去年のフジテレビからの質問も、現場の記者が『サンハチマル』というケースが増えてきたので、各局の現状を聞きたかったのではないか?」

という事に思い至りました。その波が、ついに読売テレビにも押し寄せてきていると。現場の専門家の読み方が、放送業界に押し寄せてきているということかもしれませんね。

(2018、10、31)

2018年10月31日 20:17 | コメント (0)

新・ことば事情

6995「列伝」

10月15日の「ミヤネ屋」で、亡くなった元横綱の輪島大士(ひろし)さんの「名言」ならぬ、ユニークな「迷言」の特集をしました。その際に、

「迷言列伝」

という表記が。この、

「列伝」

は、

「多くの人」

がいて成り立ちます。

「一人の人間の名(迷)言」

「列伝」とは言えません。辞書を引くと、

*「列伝」=多くの人々の伝記を並べ記したもの。(例)名将列伝(『明鏡国語辞典』)

でした。

サイドスーパーの担当者にそう言って直そうとしたら、テロップ担当者が、

「でも、パネルには、そう出てるんですけど・・・」

「え?きょうパネル、俺チェックしてないよ!パネル、きょうはないんじゃないの?」

ということで、パネルチェックを、この日は私のところに持って来ていないことが「発覚」。。。結局、

×「迷言列伝」→〇「迷言の数々」

にしました。

ちなみに「あさパラ!」では、

「天然ボケ名言語録」

としたそうです。

「迷言語録」

というのは「あり」だったな。

輪島さん、昭和49年(1974年)の名古屋場所の相撲は覚えています。そして「黄金の左」、「黄金のまわし」・・・。

安らかにお眠りください。

(2018、10、30)

2018年10月31日 19:01 | コメント (0)

新・ことば事情

6994「『揺るがせた』か?『揺るがした』か?2」

「揺るがた」か?「揺るがた」か?

という質問をディレクターから受けました。

「うーん、どちらでも間違いとは言えないが、ここは、

『揺るがた』

かな」

と答えました。

自動詞「揺るぐ」に「使役の助動詞」である「せる」の活用形「せ」と、過去の助動詞「た」をくっつけると、

「揺るがた」

になり、他動詞「揺るがす」の「連用形」である「揺るがし」に、過去の助動詞「た」をくっつけると、

「揺るがた」

になるということで、「せ」のほうが、より大きく「揺らした」感じ(「揺らせた」感じ)がします・・・

と、私は感じました。

平成ことば事情6980「揺るがせた」か?「揺るがした」か?もお読みください。


(2018、10、30)

2018年10月30日 18:46 | コメント (0)

新・ことば事情

6993「昴と昂」

日本シリーズを前に、10月25日にドラフト会議が開かれました。今年の目玉選手は、何といっても2度目の春夏連覇を成し遂げた大阪桐蔭高校の二刀流・根尾昂(ねお・あきら)選手と、四番打者の藤原恭大(きょうた)選手、そして秋田県勢として103年ぶりの準優勝を果たした、金足農業高校の吉田輝星(こうせい)投手でしたね。

根尾選手は4球団、藤原選手は3球団が1位で指名。抽選の結果、根尾選手は中日ドラゴンズ、藤原選手は千葉ロッテマリーンズが交渉権を獲得。吉田投手は北海道日本ハムファイターズが1位指名で交渉権獲得です。各選手の活躍・成長に期待したいです。

さて、「ことば」の問題でドラフトを見た時に気になったのは、

「根尾選手の名前」

です。これは

「昂(あきら)」

と読むのですね。この「昂」という字は、谷村新司さんの名曲、

「昴-すばる-」

とよく似ていますが、違う漢字です。

え?どこが違うの?同じでしょ?と思った人、よーーーく見てください。

根尾選手の名前の「昂」は、「日」の下の部首が「叩」に似ていて、左側に「ヒゲ」がありません。

それに対して「昴(すばる)」は、「日」の下の部首の左に「ノ」の「ヒゲ」がある。つまり「卯の花」の「卯」と同じ。ホラ、違う字です!

ちなみの根尾選手の名前の「昂」の音読みは「こう」です。

これ、間違いやすいですよねえ。

実は以前は、「昴(すばる)」という漢字は、「人名用漢字」に入っていませんでした。

子どもに名前を付けて届ける場合に使える漢字は、「人名用漢字表」か「常用漢字表」に載っている漢字に限られ、それ以外の漢字を使うことは認められていません。(平仮名&カタカナは、もちろんOKです)

もちろん「常用漢字」にも入っていないので、名前に「昴」という漢字を使うことができなかったのです。ですから、元マラソンランナーの瀬古利彦さんは、長男に「昴(すばる)」と名付けようとして届け出たのですが、お役所が「人名用漢字にないからダメ」と受理せず、瀬古さんはそれで「人名用漢字」である「昂」の字にして「すばる」と読ませることにして届けたんだそうです。(その後、1990年3月に「昴」は人名漢字表に追加されました。)

戸籍の名前の漢字の「字種」は制限されているんですが、「読み」に関する規定はないのです。だから極端なことを言うと、「昂」と書いて、たとえば「マイケル」とか「レディーガガ」と読ませてもいいわけですね。(ダメかな?あんまりふざけてたら。)あんまりこんなことを言うと、

「誰も読めないキラキラネーム」

が増えそうで嫌なんですけど・・・。

いずれにせよ、「昂」と「昴」を間違えないように、気を付けなければ!!

(2018、10、29)

2018年10月30日 18:42 | コメント (0)

新・ことば事情

6992「アーパー」

10月26日の「ミヤネ屋」で放送予定だった、沢田研二さんのコンサート中止問題で、ディレクターから、

「沢田研二さんが自分を指してのコメントで『アーパー』というのがあるんですが、使ってもいいですか?」

と質問されました。

私は、

「まあ好ましくはないがOK。『アーパー』というのは、いわゆる『倒語』、つまり『さかさまにした言葉』です。よく音楽関係者(ジャズなど)や芸能人が使うと言われる、

『ズージャ』(=ジャズ)、『シーメ』(=メシ(飯))、『ナオン』(=オンナ(女))

などの言葉の一種です。つまり『アーパー』は、元の言葉に戻せば、

『パー』

になります。意味は『アホ』という感じですね。『隠語』(業界用語)で当然『俗語』なので、放送で使うのはあまり好ましくないが、沢田研二さんが自分を指して使っていることなど状況から考えれば、今回は『許容』ですね。」

ところが、このネタは放送されませんでした。あ、「ネタ」も「倒語」で、本来の言葉は、

「タネ(種)」

ですね。撒かぬタネは生えぬ。

(2018、10、29)

2018年10月30日 18:40 | コメント (0)

新・ことば事情

6991「8倍の性能」

10月29日のNHKお昼のニュースで、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」の打ち上げが、間もなく行われると報じていました。

「いぶき2号」は、9年前(2009年)に打ち上げられた「いぶき」に比べると観測精度が、

「約8倍の性能」

を持っているのだそうです。この「8倍」というのが、気になりました。以前なら

「約10倍」

と言ったのではないか?今なぜ「8倍」かというと、

「2進法」

だからですね。

「2×2×2=8=2の3乗」

「デジタル」だから、その性能もこういうふうに表示されるんでしょうね。

以前は「アナログ」だったから「10進法」で表示されていたと。

そういう時代になりました。

わが業界の、

「4K」「8K」

テレビも、そういえばそうだな。

「4K」=フルハイビジョン(2K)の4倍

「8K」=フルハイビジョン(2K)の16倍

の画素数なのだそうです。「2の倍数」ですね。問題は、

「その差を、人間様が感じ取れるのかどうか?」

というところではないかと思うのですが・・・。

(2018、10、29)

2018年10月30日 18:38 | コメント (0)

新・ことば事情

6990「古式ゆかしいのアクセント」

10月29日、三笠宮家の三女・絢子さまが、守谷慧さんと結婚されました。

その模様を、日本テレビのお昼の「ストレイトニュース」で、東京の明治神宮から中継で伝えた女性記者が、

「古式ゆかしい」

という言葉をコンパウンドして、

「コ/シキユカシ\イ」

と言っているのを聞いて、違和感を覚えました。普段、使ったことがないんでしょうね、こういう言葉を。これは正しくは、2語に区切って、

「コ\シキ・ユ/カシ\イ」

でしょう。「古式」が「ゆかしい」のですから。コンパウンドしたアクセントは、「古式ゆかしく」ありません。そんなアクセントは、

「ちゃんちゃらおかしい」

ですね。これはコンパウンドして、

「チャ/ンチャラオカシ\イ」

です。つまりコンパウンドした「コ/シキユカシ\イ」というアクセントは「チャ/ンチャラオカシ\イ」と感じたのでした。

そんなことはさておき、絢子さま、守谷さん、ご結婚おめでとうございます!

(2018、10、29)

2018年10月30日 18:35 | コメント (0)

新・ことば事情

6989「推測だけどね(just my feeling)」

在トルコ・サウジアラビア総領事館内で、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏が殺害された事件に関連して、アメリカのトランプ大統領が「ウォール・ストリート・ジャーナル」のインタビューに対してこう答えたと、10月26日の「ミヤネ屋」でお伝えしました。

「ムハンマド皇太子は、サウジ政府の中でかなりの実権を握っている。(カショギ氏の殺害に)誰かが動いたのであれば、ムハンマド皇太子だろう・・・推測だけどね。」

この、「ミヤネ屋」のディレクターが訳した最後の部分、

「推測だけどね」

に当たる部分の、トランプ大統領がしゃべった英語は、

「just my feeling」

でした。アメリカ大統領ともあろうものが、事実に基づいた発言ではなく、

「推測」「フィーリング」

で、「犯人」を名指しするとは!

でも、これを見て思ったのです。

この「just my feeling」の部分を「大阪弁」に訳するとすると、こうなるでしょう。

「知らんけど」

つまり、

「誰かが動いたのであれば、ムハンマド皇太子だろう・・・知らんけど」

たぶんトランプ大統領の発言は、こんな、

「大阪のおばちゃん」

みたいな発言なんですよ、きっと。緩いなあ・・・。

(2018、10、26)

2018年10月26日 18:37 | コメント (0)

新・ことば事情

6988「首都と最大都市」

シリアで3年4か月拘束されていた安田純平さんが解放されたニュースで出した「中東の地図」。その中のトルコの地名で、

「イスタンブール」

のところに、

「首都」

と付いているのを見逃してしまいました。

「トルコの首都は『アンカラ』」

であり、

「イスタンブールは『トルコ最大の都市』」

ではありますが「首都」ではありません。

実はこれ、今月16日に間違って出ていたのですが、誰も気付かず、同じものを24日に出したところ、視聴者からご指摘を受けました。

今後のために、こういった、

「一見、首都と思われるが、実は違う」

世界の都市の一例を挙げておきましょう。

(国名)      (最大の都市)   (首都)

【トルコ】     イスタンブール   アンカラ

【アメリカ】    ニューヨーク    ワシントン

【オーストラリア】 シドニー      キャンベラ

【ニュージーランド】オークランド    ウェリントン

【ブラジル】    リオデジャネイロ  ブラジリア

【スイス】     チューリッヒ    ベルン

【カナダ】     トロント      オタワ

【ミャンマー】   ヤンゴン      ネピドー

(2018、10、25)

2018年10月26日 18:12 | コメント (0)

新・ことば事情

6987「燃焼中」

ことし7月大阪・東大阪市で工場の火事がありました。そのニュースの原稿の、

「大阪府東大阪市の工場で火事あり、現在も燃焼中です。」

という中の、

「燃焼中」

という言葉に対して、視聴者の方からこういった苦情が届きました。それは、

「火事で『燃焼中』というのは、言葉の選び方おかしくないか?テロップでも『工場火災燃焼中』となっていたが、『現在も燃え続けています』など他の言い方があるのではないか?『燃焼中』というのは、すごく違和感があった。」

というものです。

これまで私はあまり気にしていませんでしたが、たしかに「燃焼中」は、言われたら引っかかりますね。「燃焼実験」のように、

「燃焼させることが目的で、それが続行中である」

ように感じますね。「燃焼中」という漢字3文字ではなく、

「火は、現在も燃え続けています」

と「和語」で言うべきでしょうね。しかし、もしかしたらこれは、

「消防用語」

かもしれません。報道デスクに聞いたところ、やはり、

「消防の広報でも言っているし、ニュース原稿でも使っている。」

とのことでした。そこが原因・火元か。

もし「漢語」にするなら、

「炎上中」

のほうが適当かもしれません。しかし、最近「炎上」と言うと「SNSの世界」のようで・・・・。

今、新聞用語懇懇談会放送分科会で改訂作業中の『放送で使う言葉・敬語編』で、

「『何でもかんでも漢語にしてしまう傾向』は良くない」

という話が出ていますが、この「燃焼中」も、その一つかもしれませんね。他には、

「ご愛用の」→「愛用されている」

「間もなくの発車です」→「間もなく発車します」

などがあります。

(2018、10、25)

2018年10月26日 11:15 | コメント (0)

新・ことば事情

6986「西向く士 9月31日」

このところ続けて、

「9月31日」

という間違いに出会いました。

私なんかから言わせれば、

「なんで『9月31日』やねん!9月は『30日まで』に決まってるやん。小学生でも知ってるで!」

というところです。同年代の人に聞いてみても同じ答えです。そして、

「小学校の時に、『西向く士(さむらい)』って習ったから、絶対に忘れへんわ」

という答えも返って来ました。ああ、習った、習った!というか、家で両親から教わったのかもしれないですが。

「西向く士」

というのは、「一年」のうちには、

「大の月」=「31日まである月」

「小の月」=「30日以下しかない月」

があって、「小の月」の覚え方として、

「2・4・6・9・11(月)」=「ニ・シ・ム・ク・サムライ(西向く士)」

という語呂合わせがありました。

「11月」は「十一」なので、縦に並べると漢字の「士」になると。「武士」の「士」です。

これももう、若い人は知らないのかなあ。だから「9月31日」なんて間違いが出て来るのかな。

そうそう、この間の「かんさい情報ネットten.」で、亡くなったおばあさんの誕生日が、

「弐月参拾壱日(2月31日)」

と戸籍に書いてあるのを見つけて、その謎を解いてほしいという依頼が浅越ゴエさんにありました。結論から言うと、本当は、

「拾弐月参拾壱日(12月31日)」

生まれだったんですけど、手書きの戸籍が読みにくくて役所の人がそれを書き写すときに、

「一番上の『拾』を書き落としたために『弐月参拾壱日(2月31日)』になってしまった」

ということだったのですが、「9月31日」は、それと関係ないですよね。

(2018、10、25)

2018年10月26日 11:14 | コメント (0)

新・ことば事情

6985「こけら落とし」

10月25日のNHK夜7時のニュースの最後の方で、ラグビー日本代表があす(26日)、世界選抜と試合を行うというニュースを放送していました。来年は「ラグビーワールドカップ」が日本で開催されるので、力を入れているんですね。

その中で、試合の行われる大阪・東大阪市の「花園ラグビー場」は、ワールドカップに向けて改装されたそうなのですが、女性アナウンサーは、

「この試合がこけら落としです」

と原稿を読んだのです。

え?ラグビー場が「こけら落とし」?

映像を見ましたが「ドーム球場」ではなく、グラウンド部分には、全く屋根はありませんでした。え?何を言っているかって?実は「こけら落とし」という言葉は、

「屋根のある劇場などの新装オープン」

の際に使われる言葉なんですね。

「こけら」というのは、漢字では、

「杮」

と書きます「柿(カキ)」と似ていますが、違う字です。

「柿(カキ)」は右側の「旁(つくり)」の一番上は「、」で「なべぶた」ですが、「杮(こけら)」の右側の「旁(つくり)」の「縦棒」は「1本」でつながっているんです。

わかりにくいよね。

それはさておき、その「杮(こけら)」の意味は、

「材木の削りくず」

のことなので、

「建物が完成した時に、それを払い落とすこと」

「こけら落とし」と言うんですね。ですから、

「新築・改築の『劇場』の初興行」

に使うのが普通で、屋根のない「プール」や、興行を行うわけではない「役所の新庁舎」に使うのは不適当である、と読売新聞社の『読売スタイルブック2017』には記されています。NHKは「ラグビー場」でも「OK」なのかな?

(2018、10、25)

2018年10月25日 20:21 | コメント (0)

新・ことば事情

6984「ハスラー」

2018読書日記137で書いた『ルポ 川崎』(磯部涼、CYZO(サイゾー):2017)の中に出て来た、

「ハスラー」

という言葉。

「ビリヤードをする人」

のことかと思いました。そういうタイトル・内容の映画もあったしね。

でも、どうも文脈上は、当てはまりません。注釈が出ていたので見たら、

「ヤク(覚醒剤など))の売人」

のことを言うようです。知らなった!まさに「隠語」ですね。知らなくてよい言葉でしょうか。

グーグル検索では(10月23日)

「ハスラー、ビリヤード」=11万4000件

「ハスラー、薬物」   =23万7000件

更に、

「『ハスラー』は日本ではビリヤードをする人のことを意味すると思われているが、本来は賭けビリヤードなど、ギャンブルで相手をだまして金を巻き上げる勝負師の意味」

という記述も!

そうか、それならちょっと「薬物の売人」にニュアンスが近くなってきましたね。

(2018、10、23)

2018年10月25日 20:20 | コメント (0)

新・ことば事情

6983「来春(らいはる)」

「来春」

と書いて、

「らいはる」

と読むのは、「重箱読み」で

違和感があると、法政大学の尾谷昌則教授が、ツイッターで呟いてらっしゃいました。

でも、能の流派、

「金春(こんぱる)流」

の場合も「重箱読み」だし、「らいはる」も「無くはない」が、と。

なぜ「らいはる」と読むのか?私が考えたのは、もし「音読み」で、

「らいしゅん」

と普通に読むと、

「らいしゅう(来秋)」

と聞き間違う恐れがあるからではないでしょうかね?そういえば、

「一日付(いっぴづけ)」

「いっぴ」という読み方も、これに似ていますかね?こちらも「重箱読み」かな?

それと、

「聞き間違いを防ぐ」

という目的で言うと、

「首長(しゅちょう)」を「くびちょう」

「私立(しりつ)」を「わたくしりつ」

「市立(しりつ)」を「いちりつ」

と読むのも、そういった目的ですね。

(2018、10、23)

2018年10月23日 18:52 | コメント (0)

新・ことば事情

6982「公式の場所 選手人生」

10月23日午後3時から、卓球の福原愛さんが「引退報告会見」を行いました。「ミヤネ屋」でも少しだけその模様をお伝えしましたが、読売テレビ夕方の「かんさい情報ネットten.」でもトップニュースで伝えていました。そのVTRの冒頭のナレーションを聞いて、「おや?」っと思いました。それは、

「引退を表明してから初めての公の場所」

という言葉。この中の、

「公の場所」

というのは少しおかしい。正しくは、

「公の場」

でしょうね。「場」と「場所」はどう違うか?

ほぼ同じと言えばそうなのですが、ニュアンスは違いますね。

「場所」は、

「具体的な場所」

で、「住所、所在地」などを示すでしょう。

それに対して「場」は、もう少し、

「抽象的な空間・スペース」

を指すと思われます。特にこういう場合の「公の〇〇」という言い回しでは、

「公の場」

がふさわしいでしょう。その旨、プロデューサーに伝えたら、

「その通りですね。気を付けます」

ということで、引き続き、愛ちゃん・・・愛さんのニュースを見ていたら今度は、

「26年間の選手人生に区切りを付けました。」

という文章が。この、

「選手人生」

もおかしいですよね。この場合は、

「選手生活」

が妥当です。「人生」と「生活」。似ているけど、明らかに違いますよね。「人生」はトータルで俯瞰しているけど、「生活」は日々連続して続けて来たものの積み重ねという感じがしますよね。

この原稿を書いたディレクター、言葉遣いが微妙にストライクゾーンからずれて、

「ボール」

になる球を投げて来ますねえ・・・。

(2018、10、23)

2018年10月23日 18:42 | コメント (0)

新・ことば事情

6981「やられてきて」

10月21日、卓球の愛ちゃんこと「福原愛選手」が引退を表明しました。

このニュースを伝えた、翌日10月22日の日本テレビ「スッキリ」で、「ハリンセンボン」の近藤春菜さんがこうコメントしました。

「ずっと(卓球を)やられてきて」

この「やられてきて」という"敬語"に違和感が。これだと、

「受け身」

のように感じられます。「やっつけられてきて」のような感じです。ここは

「ずっと やってこられて」

が正しいでしょうね。

ちなみに、愛ちゃんが出したコメントも、

「ご期待に沿えられず、すみません」

とあって、これにも違和感が。「ご期待に」の後は、

「沿えられず」

ではなく、

「沿えず」

でしょうね。「られず」を使うならば、

「ご期待に応えられず」

でしょう。混交表現かな。

それはさておき、小さいときから26年間、みんなの期待を一身に背負い、

本当にお疲れさまでした!

(2018、10、22)

2018年10月23日 18:41 | コメント (0)

新・ことば事情

6980「揺るがせた」か?「揺るがした」か?

10月22日の「ミヤネ屋」の放送でナレーターさんから質問を受けました。

「原稿には『揺るがした』と書いてあるが、これは『揺るがした』が正しいのか?それとも『揺るがせた』か?」

うーん、どちらでも間違いとは言えないけど、私の語感としては、

「揺るがせた」

かな、と答えました。

語構成を見ると、

*「揺るがせた」=自動詞「揺るぐ」に「使役の助動詞」である「せる」の活用形「せ」と、過去の助動詞「た」をくっつける。

*「揺るがした」=他動詞「揺るがす」の「連用形」である「揺るがし」に、過去の助動詞「た」をくっつける。

という違いですよね。どちらも間違いではありませんんね。

しかし、「せ」のほうが、より大きく「揺らした感じ」がします・・・と私は感じます。

平成ことば事情6994「『揺るがせた』か?『揺るがした』か?2」もお読みください。


(2018、10、22)

2018年10月22日 17:38 | コメント (0)

新・ことば事情

6979「ブサイ」

<2017年5月28日に書き始めました>

コンビニのイートインにいた女子高校生の会話が耳に入って来ました。

「ブサい」「ブサくない」

という言葉。これって、

「ブサイク(不細工)」

という「名詞」が「形容詞化」しているんですよね!

そういえば、生理痛の薬(バファリンルナi)のコマーシャルで、高畑充希さんが、

「ブチャクなる」

と言っているのがありましたが、従来であれば、

「ブサイクになる」

というように(さっきも書いたように)「ブサイク(不細工)」というのは「名詞」なのですが、おそらく女子の間では「形容詞化」しているのだろうなと思いました。

グーグル検索では810月19日)

「ブサい」  =     1

「ブサイ」  =6万3100件

「ぶさい」  =3万5800件

「ブサクない」=   163件

「ブサくない」=1万6200件

「ぶさくない」=  1380件

「ぶちゃくなる」= 8740件

「ブチャくなる」= 3050件

「ブチャクなる」=  785件

でした。思ったほど使われていませんでした。

(2018,10、19)

2018年10月22日 17:37 | コメント (0)

新・ことば事情

6978「亀の手、ペルセベス」

先日、行きつけのスペインバルのメニューに

「亀の手」

というのがありました。聞いたことはあるけど、食べたことはないので、頼んでみることにしました。それで、出て来たのが写真のようなもの。

201810192.jpg

なるほど、「亀の手」のような感じですね。その意味では、ちょっとグロテスクです。

「これ、何なんですか?」

とマスターに聞くと、

「貝の一種ですね。キュッとひねって食べるんですけど、その際にピュッと汁が飛ぶんで、気を付けてくださいね」

と言われました。食べてみると・・・確かに汁がピュッとかなり飛びました。なかなか難しいです。

あまり食べるところはなくて、そうですね、ピスタチオを食べるような感じでした。

ちなみにマスターによると、「スペイン語」では、

「ペルセベス」

といって、ガリシア地方では欠かせない高級食材なのだそうです。

ま、一度でいいかな、食べるのは。

(2018、10、19)

2018年10月19日 19:04 | コメント (0)

新・ことば事情

6977「オムすび」

先日、コンビニで見つけて購入したおにぎり。

こんな名前でした。

「オムすび」

201810191.jpg

これ、うまいなあと思いました。

「おむすび」を「玉子」でくるんでいるのでまるで「オムライス」のよう。

そこで「オムライス」の「オム」と、「おむすび」の「オム」をかけて、合わせて、

「オムすび」

いやあ、うまい!シンプルでうまい!

お味の方も「うまい!」でした。

やるな、セブン-イレブン!

(2018、10、19)

2018年10月19日 18:51 | コメント (0)

新・ことば事情

6976「LGBTQ」

アメリカの中間選挙を前に、ツイッターのフォロワーが1億人以上という歌手の、

「テイラー・スイフトさん」

が、「民主党支持」を表明し、中間選挙に登録して投票に行こうと呼びかけました。

その理由として、

「共和党候補は『LGBTQ』の存在を許容していないから」

ということを挙げていました。この、

「LGBTQ」

というのは、見慣れない・聞き慣れない言葉です。

「LGBT」

に関しては、「平成ことば事情6627LGBT(性的少数者)」で、去年の年末に書きました。昨秋開かれた「新聞用語懇談会」で、このことが議題に上がったからです。その後この1年で「LGBT」という言葉とその存在は、かなり急速に普及したと思いますが、それに「Q」が付いた、「LGBTQ」は、日本ではまだ一般的ではないでしょう。

「Q」=「Questions(クエッションズ)」

つまり、

「自分の性的指向が男女どちらであるのかが、わからない人」

なんだそうです。

去年11月の「関西地区用語懇談会」では、「LGBT」以外の「性的少数者」として、

・「インターセックス」=身体的に男女の区別がつきにくい人

・「アセクシャル」=無性愛者。同性も異性も好きにならない人

・「クエスチョニング」=自分の性別や性的指向に確信が持てない人

などがいて、「LGBT」が全ての「性的少数者」を含むわけではない、と。

そして、

「LGBTの認知度が上がる中で、かえって『その他の性的少数者』の疎外感が深まる恐れもある。」

と指摘していました。

また、同じく去年11月に岡山で開かれた新聞用語懇談会秋季合同総会では、

「最近ではLGBTの他に、自分の性別や性的指向に確信の持てない、模索中の人『クィアー・クイアー(Queer)』『クエスチョニング(Questioning)』の単語の頭文字である『Q』を加えた『LGBTQ』という表現も見かける他、『LGBTT』(最後の「T」は「身体と心の性が異なるため外科的手術によって一致させることを望む人=トランスセクシュアル(Transsexual)の頭文字)など、性の多様性を表す『頭文字語』は、まだたくさんある」

という発表がありました。この時点では、やはりまだ、

「『LGBTQ』は、まだ用例は少ないようだ」

とした上で、

《【ロサンゼルスAFP=時事】...ディズニー・チャンネルの番組に性的少数者(LGBTQ)が登場するのはこれが初めてではなく、2014年にドラマ「グッドラック・チャーリー」のあるエピソードにレズビアンのカップルが登場している。しかし同チャンネル番組のメインストーリーで性的少数派が扱われるのは今回が初めて。【翻訳編集 AFPBBNews】(2017/10/27-12:53)》

といったように、外信記事(翻訳含む)での使用例はあったようです。

また、

「2017年11月1日付『朝日新聞』のコラム『ことばの広場』で『SOGI(ソジ)』という言葉を紹介していた。『SO』=性的指向、『GI』=性自認。『LGBT』のうち『LGB』は『SO』であり、『T』は『GO』だ。」

という意見が、「産経新聞」の委員から出ました。

NHKの委員も、

「『LGBT・性的マイノリティー(の人々)』としている。『LGBTQ』での出稿はない。」とのことでした。

フジテレビの委員も、

「ここ1年の原稿では『性的少数者(LGBT)』『LGBT(性的少数者)』。少し前の原稿では『レズ、ゲイなどを指すLGBT』で『LGBTQ』はなし。」

とのことでした。

この1年を見ていると、表記は、

「LGBTなど性的少数者」「性的少数者(LGBTなど)」

が多いようですね。

とここまで書いて、一つ気付きました。

例の『新潮45』を休刊に追い込まれた「LGBT」を巡る杉田水脈(みお)議員と小川榮太郎氏の文章。読もうと思って本屋さんなどを捜したのですが見つからなかったので、それを報じた週刊誌などの記事しか読んでいないので、これまでコメントは差し控えて来たのですが、週刊誌報道によると、このうちの小川氏の文章に、「LGBT」を指して、

「性的嗜好」

という言葉が出ていました。ここはポイントではないでしょうか?

「LGBTは『嗜好』ではなく『指向』」

なのではないでしょうか?そこの「漢字の使い分け」「言葉の使い分け」から、「LGBT」がどういうものであるのかということを理解していないように感じたのでした。

(2018、10、19)

2018年10月19日 18:08 | コメント (0)

新・ことば事情

6975「100%を超えるパーセンテージ」

以前、

「2万パーセント、出馬はない」

と言って選挙に出た人もいましたが、その後も、

「200%ない」「120%大丈夫」

など、

「100を超えるパーセンテージ」

を口にする人は後を絶ちません。

でも、皆さんも経験上ご存知でしょうけど、そういった場合は、

「たいてい『ウソ』だったり、『そのようにはならない』ことが多い」

ですね。

そこで、きょう道を歩いていて、ハタと思い付きました。

「100%を超えるパーセンテージを示された場合は、そこから100を引いた分が、その主張と正反対のベクトルを持つのではないか」

と。いかがでしょうか?

(2018、10、18)

2018年10月19日 18:07 | コメント (0)

新・読書日記 2018_139

『下町ロケット~ヤタガラス』(池井戸潤、小学館:2018、10、3第1刷)

『下町ロケット~ゴースト』の続編、というか「ゴースト」が上巻で「ヤタガラス」が「下巻」ですね。他局でドラマも始まりましたが、まだ見ていない。

「ヤタガラス」というのは、神武東征の伝説に出て来る、神武天皇の道案内をしたとされる、太陽の中に住むと言われる「三本足のカラス」で、日本サッカー協会のマークにも使われていることで知られますが(知られてる?私はもちろん知っていますが)、この小説では、

「帝国重工の大型ロケットによって宇宙に送られた、準天頂衛星に付けられた名前」

です。その衛星を使って、数センチの誤差しかなく動く無人トラクターの開発の物語が、この『下町ロケット~ヤタガラス』です。

おもしろいです。

まず「悪役」をいっぱい設定するという意味では「時代劇」と同じで、しかも味方の内にも「内なる敵」がいたり、敵だと思ったら仲間だったり、その辺がさじ加減で面白いですよね。それでも「真心」というか「理念」を通す、「世の中を良くしたいという信念」で、周囲がうまく回るようになって行って、「めでたしめでたし」という「勧善懲悪」的なので、安心して読めますね。大体、読む前から、それは想像がつきましたが。安心理論。

ロケットの次は農機具。よく取材されていますね。

言葉で気付いた点。

(42ページ)満面の笑顔を浮かべた野木【満面の笑顔】

(62ページ)一時は佃製作所の売上げの相当部分を占めていたことすらある親密先だ。【親密先】

(82ページ)この日耕耘(こううん)するつもりの休耕田【耕耘(こううん)】

(95ページ)現在専務取締役の柴田和宣(しばた・かずのり)は(中略)いまの地位にまで上り詰めた。【専務=上り詰めた】

(154ページ)まさに背水の陣頭指揮を執ろうという考えなのかも知れない。まさに、乃公(だいこう)出(い)でずんばーーーである。【乃公(だいこう)】【背水の陣頭指揮】【まさに・・・まさに】

(174ぺーージ)的を射たらしい。【的を射る】

(212ページ)どこまで品質を追究するかが作り手に問われている。【追究】

(242ページ)ようやく訪れた汚名返上の好機なのだ。【汚名返上】

(272ページ)納得するまで原因を追究しているだろうよ。【追究】

(276ページ)第八章 帝国の逆襲とパラダイムシフトについて【帝国の逆襲】

(302ページ)その会議で檄を飛ばし【檄を飛ばす】

(311ページ)勿怪(もっけ)の幸い【勿怪(もっけ)の幸い】

(320ページ)"豪腕"の的場俊一【豪腕】

(325ページ)遊星ギアか【遊星】

(366ページ)重苦しく言葉を噤(つぐ)んだ【言葉を噤(つぐ)む】

ということで、「言葉の題材(ネタ)の宝庫」でもあります。


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(2018、10、15読了)

2018年10月18日 18:51 | コメント (0)

新・ことば事情

6974「クワッドアクセル」

9月30日、テレビ朝日系で、午後9時から2時間枠で放送された「ドクターX」のスペシャル版。

その中で、フィギュアスケートのオリンピック・メダリストの氷室幸次郎選手は、

「4回転半ジャンプ」

のことを、

「クワッドアクセル」

と言っていました。「3回転半」のことを、

「トリプルアクセル」

と言うのはよく聞くのですが、さすがに「4回転半」の英語は初めて耳にしました。それもドラマの中で。

グーグル検索では(10月18日)、

「4回転半ジャンプ」=  2万8400件

「クワッドアクセル」=  1万5500件

「3回転半ジャンプ」=  3万4100件

「トリプルアクセル」=105万0000件

でした。ということは、やはりまだ「クワッドアクセル」という言葉はあまり普及していないと。日本語にした「4回転半ジャンプ」も、それほどは普及していない。それに比べると、外来語の、

「トリプルアクセル」

は、日本語の「3回転半ジャンプ」よりも、

「30倍以上、使われている」

ということですね。

「クワッドアクセル」を使った文章を読んでいたら、やはり「羽生結弦選手」が、ことしの8月に、

「クワッドアクセルの今季中の成功を目指す」

と発言しているのが見つかりました。まだ実戦では成功していないのですね。それならば、あんまり出て来ないのも「さもありなん」です。

しかし、今季中に羽生選手が「成功」したら、もうこの冬は、バンバン出てくるようになるかもしれませんね!

(2018、10、18)

2018年10月18日 18:49 | コメント (0)

新・ことば事情

6973「隻腕」

先日、報道の若いプロデューサーが質問してきました。

「パラリンピックを目指す『隻腕』のアスリートを紹介するんですけど、『隻腕』という表現は使っても大丈夫でしょうか?『片腕』はダメだとは思うんですけど・・・」

たしかに「片腕」というか、

「片〇〇」

という表現は、

「2つそろっていないとダメ」

という考えがベースにあるので、あまり望ましくありません。でも、「片腕」も、例えば

「仕事の相棒・有力な部下」

という意味では使ってもいいかなと思います。

「右腕」

という表現もありますね。でも差別的な表現と捉える人もいるでしょうから、「片腕」は避けた方がいいかな。で、

「隻腕」

ですが、これはOKでしょう。

アメリカ・メジャーリーグで「隻腕投手」の、

「ジム・アボット投手」

が活躍した頃には、よく「隻腕」という表現を目にしましたね。

また「片目」の意味の

「隻眼」

も、ごくたまに見ることがありますが、「片足」の意味で、

「隻脚」

というのは、あまり見ないですね。

グーグル検索では(10月18日)

「片腕」= 181万0000件

「隻腕」=  11万5000件

「片目」= 982万0000件

「片眼」= 116万0000件

「隻眼」= 195万0000件

「隻目」=  45万1000件

「片足」=1480万0000件

「隻脚」=   3万4900件

でした。「隻脚」という言葉もあるようですね。あまり使われていないけど。

このうち「隻目」は、「艦船」を数えるのに、

「〇隻目」

という意味で使われているのが、引っ掛かったようです。

(2018、10、18)

2018年10月18日 18:47 | コメント (0)

新・読書日記 2018_138

『#名画で学ぶ主婦業』(田中久美子・監修、宝島社:2018、9、10)

きのう(10月17日)「ミヤネ屋」でもご紹介しましたが、そもそもはツイッター上で、主に肖像画などの「人物」が描かれた名画、もしその「人物」が"主婦目線"でコメントを言ったらどうなるか?というそういう発想から出てきています。いわゆる、

「見立て」

ですね。おもしろい!こういう視点。さすが、あの「VOW」を出していた宝島社!

「宗教画」を、ああいう目線で見るのは、不謹慎かもしれないけど、おもしろい。

「子どものわがまま」に対するお母さんの目線だったり、妻として「だらしない夫」へのいらだち・苦情、「義理の父母」へのグチなど。おもしろいなあ。


star4_half

(2018、10、16読了)

2018年10月18日 17:38 | コメント (0)

新・ことば事情

6972「ハトとヒト」

先月、同志社グリーのOB合唱団(DOBS)のコンサートに一緒に出させていただきました・・・というのは。このところ2~3回書きましたが、それで学んだ言葉シリーズ。

ドイツ語の歌(「リヒャルト・シュトラスの歌曲集」とドボルザークの「ジプシーの歌」から「我が母が教え給いし歌」)を歌う時の指揮者からの注意に、こういうのがあったのです。

「また『ハト』が、ようけ飛んでるで」

え?「鳩」?室内なのに?外で飛んでるのかな?と思って窓越しに目をやろうとして、ようやく意味が分かりました。

ドイツ語で「夜」の意味の「nacht(ナハト)」の母音部分の「na(ナ)」を伸ばして、

「ナーーーーハト」

と歌って、最後に切る時に語尾の子音の「cht(ハト)」が、みんなバラバラで揃わず、

「ナーーーーーハトハトハトハトハト」

と、「ハト」がたくさん聞こえる(飛び立つ)ということなのですね。

同じように「否定」の意味の「nicht(ニヒト)」も、

「ニーーーーーヒト」

と伸ばして歌う場合に、語尾の子音の「cht(ヒト)」が揃わずに、

「ニーーーーーーヒトヒトヒトヒトヒトヒト」

、たくさんの「ヒト出」になってしまこともありました。

げに、合唱は難しい。。。。

(2018、10、18)

2018年10月18日 17:09 | コメント (0)

新・ことば事情

6971「ゆかな【終助詞】」

先月、同志社グリーのOB合唱団(DOBS)のコンサートに一緒に出させていただきました。その際に歌った曲に三好達治作詞・多田武彦作曲の「わがふるき日の歌」がありました。この終曲、

「雪はふる」

は、テナーソロを聞かせる、とても素晴らしい曲です。その歌詞で疑問がありました。

「雪はふる」

海にもゆかな

野にゆかな

かへるべもなき身となりぬ

すぎこし方なかへりみそ

わが肩の上に雪はふる

雪はふる

かかるよき日をいつよりか

われの死ぬ日と願ひてし

この「ゆかな」の「な」の意味が、よくわからなかったのです。

辞書を引いてみました。

*『精選版日本国語大辞典』

  1. 動詞・助動詞の未然形を受けて希望の意を表わす上代語

(イ)自己の行動に関して希望や、その実現の意志を表わす。

*古事記(712)中・歌謡「鳰鳥の 淡海(あふみ)の海に 潜(かづ)きせ那(ナ)わ」

(ロ)他者の行動の実現を希望する。

*続日本紀ー天平十五年(743)五月五日・宣命「教へ賜ひ趣(おもぶ)け賜ひながら受け賜はり持ちて、忘れず失はず有るべき表(しるし)として一二人を収め賜(波奈止那毛・はナとなも)」

(2)文末にあって動詞・助動詞の終止形(ラ変は連体形)を受け、禁止の意を表わす。

*日本書紀(720)武烈即位前・歌謡「水(みな)そそく 鮪(しび)の若子を 漁(あさ)り出(づ)那(ナ)猪の子」

*竹取(9C末-10C初)「龍の首の玉取り得ずは帰り来

(3)文末にあって動詞型活用の語の連用形を受け、気安い相手に、ある動作を促す意を表わす。

*滑稽本・浮世風呂(1809-13)前「おめへは捕人(とった)に成(なん)な」

【語誌】

(イ)終助詞とされる「な」には、希望の意のものと禁止の意のものがあるが、このうち、希望の「な」は、上代特有のものである。意味の面では、助動詞「む」とかなり接近したもので、この点は、例えば「万葉集-三六四三」に、「沖辺より船人のぼる呼び寄せていざ告げ遣らむ旅の宿りを あるは云はく、旅の宿りをいざ告げ遣ら奈(ナ)」とあって、「告げ遣らむ」の形に対して「告げ遣らな」の形が異伝としてあったといったことでもうかがわれる。

(ロ)中古に入ると、「む」にその席を譲って、(1)の希望の「な」は用いられなくなる。一方、(2)の禁止の意の「な」は、今日まで用いられてきた。同じく禁止の言い方である「な...そ」とともに訓点資料には見られず、また、「な」は「な...そ」の形により禁止表現よりも直接的できびしいものといわれる。

(ハ)中世以降、禁止表現としては「な」の方がよく用いられたが、連体形を受けるもの、連用形を受けるものなどが現れる。「金毘羅保元-中」の「相構而(あひかまへて)一所へばし落ちぬる」、「太平記-六」の「懸入る敵に中を破(わら)れ」、「童謡・メーデーごっご<槇本楠郎>」の「おそれ みだれ」など。

*『広辞苑』

(1)活用語の未然形に接続して文を終止させる。

(ア)自分の意志を表す。...しよう。

*万葉集(4)「妹に会はず久しくなりぬ 生きて早(はや)見

*万葉集(5)「ことことは死なと思へど」

(イ)願望。要求・勧誘の意を表す。...したい。...しよう。...してください。

*万葉集(1)「家聞か告(の)らさね」

*万葉集(17)「道の中国つみ神は旅行くもし知らぬ君をめぐみ給は

*万葉集(19)「網取りに取りてなつけ涸れず鳴くがね」

(2)活用語の終止形に接続して、禁止する意を表す。平安時代には主に男性が目下に対して用い、女性は「な...そ」を用いた。

*万葉集(5)「いたづらに吾を散らす酒に浮べこそ」

*源氏物語(桐壺)「われ亡くなりぬとて口惜しゅう思ひくづほる

*浮世床(2)「イヱイヱもう必ずとおかまひなさいますな」。「それを言う

(3)活用語の連用形に接続して、命令を表す。...なさい。

*浮世風呂(4)「コレサコレサおてんばどん。マアだまんよ」「早くし

ということで、これは「禁止の『な』」ではなく、『精選版日本国語大辞典』(1)(イ)及び『広辞苑』(1)(ア)(イ)の「行こう」という、

「意思・希望の『な』」

ということで納得しました。

もっとも、この部分は、私のパートである「ベース」は「ハミングばっかり」で、

「歌詞は歌わない」

んですけどね。

(2018、10、18)

2018年10月18日 12:06 | コメント (0)

新・ことば事情

6970「泣ける」

最近、

「泣ける〇〇」

という言葉を、よく目にし、耳にします。そこで、ふと思いました。

「泣ける」の「る」は「助動詞」

ですよね。「泣く」という動詞の「連用形」である「泣け」に助動詞の「る」が付いていますが、その意味は、

「自発」と「可能」

ですね。おそらくこれまでは、

「自発の『泣ける』」

だったんだと思うのです。つまり、

「泣ける映画」

というのは、

「見ると自然に涙が出て来て、泣いてしまう映画」

という意味だと思っていたのですが、最近使われる「泣ける」は、

「ことし一番泣ける映画」

のように「泣くことができる」、つまり、

「可能の『泣ける』」

になってきているのではないでしょうか!?

というのも、

「泣くことが目的」

になってきているから。

これまでは、「泣きたいときに泣くのが普通」だったのに、仕事など日常生活では、それが許されなくなってきている。そこで、

「どこか、思いっきり『涙』を発散させる場所が求められている」

のかもしれませんね。


(2018、10、17)

2018年10月17日 18:43 | コメント (0)

新・ことば事情

6969「五十音の危機」

ふと、思いました。

「紙の辞書」

を引かなくなったことで、若い人たちは、

「五十音」

を言えなくなってきているのではないか?

「五十音」というのは、この場合、

「あかさたな はまやらわ ん」

のことです。皆さん、言えますか?

というのも「電子辞書」でも「ネット辞書」でも「あいうえお順」を知らなくても知りたい言葉を検索できるようになったから。

この傾向は、今後もっと進むのではないでしょうか?

同じようなことは、インターネットで電車や飛行機の時刻が分かるようになったので、

「紙の時刻表」

を引けなくなったことにも言えますね。

残念ながら、「紙の国語辞典」の行方も、そういうところではないでしょうか?

私は、愛用していますがね。

(2018、10、17)

2018年10月17日 18:31 | コメント (0)

新・ことば事情

6968「廃人」

9月30日テレビ朝日系で午後9時から2時間枠で放送された「ドクターX」のスペシャル版の中で、岸部一徳さん演じるアキラさんのセリフに、

「美智子からオペを取ったら廃人も同然」

というものがありました。この、

「廃人」

は、放送などでは使わない「注意を要する言葉」すね。一般社会でも、現在はあまり耳にすることはありません。ただ、国語辞典には載っています。

*「廃人」=(病気やけがによって)からだ・精神に障害が起こり、ふつうの生活ができなくなった人。(『三省堂国語辞典』)

*「廃人」=病気などのため、通常の社会生活を営むことができなくなった人。(『岩波国語辞典』)

この他『広辞苑』等の辞書にも載っていますが、『明鏡国語辞典』には、意味を説明した後の「注意書」きとして、

「貶(おとし)めていう語」

と記されています。そういう意味では、

「辞書には載っているが、放送で使うにはふさわしくない言葉」

なので、普段は接しないのでしょう。でも「ドラマ」だとそういう言葉も出て来るということですね。

(2018、10、17)

2018年10月17日 18:30 | コメント (0)

新・ことば事情

6967「動線と導線」

10月11日、当初の予定より2年遅れで、ついに築地市場から豊洲市場への引っ越しが行われました。それを報じた「ミヤネ屋」の放送の中で、

「トラックやターレの動く道・ライン」

のことを、漢字で書くと、

「『動線』か?『導線』か?」

という問題が出て来ました。私は、

「動線」

だと思ったのですが、発注は、

「導線」

でした。この同音異義語、『新聞用語集2007年版』『読売スタイルブック2017』『共同通信記者ハンドブック第13版』『NHKことばのハンドブック第2版』には「動線」「導線」ともに載っていません。

国語辞典では『広辞苑・第7版』『明鏡国語辞典・第2版』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『岩波国語辞典・第7版』には「導線」「動線」とも載っていましたが、『新明解国語辞典・第7版』『旺文社標準国語辞典』『現代国語例解辞典』には「導線」しか載っていませんでした。また『三省堂国語辞典・第7版』は「見出し」は「導線」だけですが、その意味の中に「動線」も記されていました。

新聞社などの「用語集」になぜ載っていないのか?それがよくわかりません。「動線」は、もともとは「業界用語」だったのかもしれませんが、いまや一般語なのではないでしょうかね?この日の「ミヤネ屋」の放送では、

「動線」

にしました。

(2018、10、17)

2018年10月17日 18:16 | コメント (0)

新・ことば事情

6966「サタンとデビルの違い」

先月、同志社グリーのOB合唱団に混ぜてもらってコンサートに出た時に、

「黒人霊歌(スピリッチュアルズ)」

を6曲歌いました。その中の

「♪Little Innocent Lamb(イノセントラム=無垢な羊)

という曲の中に、

Devil, he's got a slippery shoe.

Just take one brick from Satan's wall,

という歌詞が出て来るのですが、ここに示された、

「『デビル』と『サタン』の違い」

が判りません。

どう違うんだろう?と思っていたら「週刊文春」2018年9月20日号の町山智弘さんの連載コラム「言霊USA」の第447回に、

The Satanic Temple

というタイトルが。

読んでみると、8月16日に米・アーカンソー州の州議会議事堂前で悪魔を称える儀式が行われたとのこと。この儀式を執り行ったのが「The Satanic Temple」(サタニック・テンプル=悪魔寺院)の信者たち。

なぜそんなことをしたか?実は彼らは、神も悪魔も信じていない。アーカンソー州議会がキリスト教の「十戒」の碑を設置したので、それに抗議して、黒山羊の頭に両性具有の体と翼をもち、右手で天を左手で地を指さす魔物「バフォメット」の像を置いたとのことです。「バフォメット」とは、キリスト教の悪魔の一人で、「黒ミサ」を司る元々は「異教の神」なのだそうです。そして「サタニック・テンプル」がそれを掲げるのは、

「公共サービスは、あらゆる宗教から切り離さなくてはならない」

という抗議のしるしだそうです。

この「サタニック・テンプル」の創立者は、

「ルーシエン・グリーヴス」

という人物。現代のアメリカにおいて、中世の「魔女狩り」のようなことが行われている暗愚を啓蒙するために、グリーヴスは「サタン」を選んだ、と。

「ミルトンの『失楽園』の主人公、かつて天使だったが、神に反乱を起こし、地獄に落ちても屈伏せず、『天国の奴隷よりは地獄の主たれ』と叫んだ永遠の反逆児サタンを。グルーヴスのルーシエンという名前もサタンの天使時代の名前ルシファーから取られており、闇を照らす光を意味する。」

と記されていました。

そうなのか!「サタン」は「元天使」だったのか!ということは、

「堕天使」

とは「サタンのこと」なのか!しかも天使時代の名前は、

「ルシファー」

で、それは「光」を意味すると。ラテン語系では「ルーチェ」が「光」ですよね。同じ語源だなあ。明るさの基準の「ルクス」も、たぶんそこから来てるんだろうなあ。

あ、そういえば私は読まないんだけど、たしか漫画の『One Piece』(ワンピース)の主人公も、そんな感じの名前だったのではないか?・・・・調べたら、

「ルフィー」

でした。ちょっと似ている。

ふむ、そこから考えると、

「『サタン』が『悪魔の元締め・親玉』で『デビル』は『下っ端』」

なのかな。漫画の、

「デビルマン」

も「悪魔の親玉」という感じではなかったな。じゃあ、「デーモン閣下」の、

「デーモン」

はどうなるんだろうか?

それはちょっと、「♪Little Innocent Lamb(イノセントラム=無垢な羊)には出て来なかったので、わからないけど。次への宿題ですね。

「平成ことば事情3051マット・デイモンは悪魔か?」もお読みください。

(2018、10、17)

2018年10月17日 17:44 | コメント (0)

新・ことば事情

6965「わろし」

「古文」の授業で、清少納言の「枕草子」を学んでいるという中2の娘。その「冬」の場面で、こんなことがあったそうです。

「冬はつとめて。 火桶の火も 白き灰がちになり わろし。」

この中の、

「わろし」

という言葉を見て(聞いて)、娘とクラスメートは一斉にドッと受けたそうです。先生は、なぜ子どもたちが笑ったのか、訳が分からなかったそですが、実はこれ、子どもたちは、

「わろし」=「悪い」

という意味の言葉を、

「インターネット上で使われるスラングで『笑った』の意味の『わろた』と同じ意味だと思って『わろた』」

のだそうです。

「清少納言が、こんな言葉使ってる!」

と思って、受けたそうなのです。

いやあ、時代はそんなになってるんだ。清少納言もビックリです。

(2018、10、16)

2018年10月16日 22:31 | コメント (0)

新・ことば事情

6964「キャプテンマークを任された」

10月16日(「きょう」だ!さっきだ!)サッカーのキリンチャレンジカップ、"森保ジャパン"の3戦目、FIFAランキング5位でロシアワールドカップ「ベスト8」のウルグアイ相手に、なんと日本が4対3で勝利しました!

試合前は「良くて2-2の引き分けかなあ」と思っていたので、これはすごいですね。なんて攻撃的な、おもしろいサッカーをするのでしょうか!素晴らしい!

その試合でキャプテンを任されたのが、

「背番号22・ディフェンダーの吉田麻也選手」

でした。そのことを中継アナウンサーが、

「キャプテンマークを任された」

と言っていたのに、違和感がありました。これは、

「キャプテンを任された」

で良いのではないでしょうか。もし、「キャプテンマーク」を使いたいのなら、

「キャプテンマークを託された」

でしょうね。「混交表現」ですね、きっと。

ま、勝ったからいいか。

(2018、10、16)

2018年10月16日 22:15 | コメント (0)

新・ことば事情

6963「義実家」

『#名画で学ぶ主婦業』(田中久美子・監修、宝島社:2018、9、10)という本の中に出て来て、

「おや?」

と思った言葉に、

「義実家」

がありました。

この本は、ツイッターで主婦が、「名画」について今風の解釈コメントを付けたものを集めた本なので、この「義実家」というのは、

「夫の両親の家」

のことを指します。昔の家制度の流れで言うと、結婚して「夫の姓」を名乗り、

「嫁」

と呼ばれる立場であれば、「さと」と呼ばれる「実家」はありますが、「夫の家」はあくまで「本家」(?)になるのでは?「夫(妻)の両親」はたしかに、

「義父・義母」

ですが、「実家」に「義」を付けた「義実家」というのは、これまで言わなかったのではないでしょうか?少なくとも、私は聞いたことがありませんでした。やはり女性の方がよく使う言葉なのでしょうか?

グーグル検索では(10月16日)、

「義実家」=309万件

も出て来ました。トップに出て来たのは、「YOMIURI ONLINE」の「発言小町」。

http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2004/0916/015538.htm

しかもずいぶん昔、「2004年9月16日」で、

「よくこのコーナーでは『義実家』という言葉を聞くが、とても違和感ある。なぜなら『実家』は自分の『実の家』。それに"義理"ってあるんだろうか?相方の実家は『妻の実家』『夫の実家』でいいのでは?」

というご意見でした。

「その通り!」だと思います。

これに関する意見は賛成・反対両方が集まっていましたが、「夫の実家」は、

「婚家(こんか)」

という言葉がある、というご指摘も。

新しい言葉を素早く取り入れることで知られる『三省堂国語辞典』(第7版)も、さすがにこの「義実家」は載せていません。あくまで「俗語」ということでしょう。

「もしかして、『実家』の用例で載せているかも・・・」

と思って「実家」も引いてみましたが、載っていませんでした。

「婚家」「養家」

は載っていました。

しかし「義実家」って、なんか、

「鎌倉時代の武士の名前」

のような感じに見えます。「義家」か!

(2018、10、16)

2018年10月16日 22:13 | コメント (0)

新・ことば事情

6962「初発」

9月30日、「台風24号」の影響で、関西の電車のダイヤも大きく乱れました。

京阪電車でも、このような掲示が出ていました。

20181015.jpg

この中の、

「初発」

という文字に目を奪われました。我々利用者は、普通は、

「始発」

という言葉を使いますが、確かに、地下鉄の入り口などの看板には、

「初発」「終発」

という文字があったような気がします。

過去に「初発」について書いたことがあるような気がして検索してみたところ、何と、

「2002年6月28日」

に、地下鉄御堂筋線「心斎橋駅」で、

「初発」

という言葉を見たという「メモ」が出て来ました!確か米川明彦先生が「初発」について書かれていたような気もするなあ。

(2018、10、1)

2018年10月16日 08:59

新・読書日記 2018_137

『ルポ 川崎』(磯部涼、CYZO(サイゾー):2017、12、26初版・2018、3、20第5刷)

「川崎」

という所に行ったことが無いので、全く知らないが、よくニュースで出て来る。いろいろな「事件」が起きる。また「川崎か」と。一体どんなところなんだろう?と惹かれて、この本を読んだ。「ルポ」である。

著者は1978年生まれ。今年40歳のまだ「若い」、というか脂の乗ったライターさんだ。それも本職は「音楽ライター」とうことで「社会派」というわけでもない感じなのだが。

彼もまた、このルポの雑誌への連載を始めたきっかけの一つは、2015年2月20日に川崎市川崎区の多摩川の河川敷で、全裸の中学1年生の遺体が見つかった事件。1週間後に警察に出頭してきたのは、主犯格の18歳の少年と共犯17歳の少年2人。

なぜ、こんな事件が起こってしまったのか。

それを探る取材が始まった。

そして行き着いたのは、確かに過去のこの土地の持つ歴史・性格・生活。そして、その中から生まれて来たヒップ・ホップなど新たなグループの活躍。音楽ライターらしい視点だと思う。明るい面・暗い面、両方が見えて来る。

しかし、個人的にはラップとかスケボーとか、全く私は興味が無いので、よくはわからないまま、読み終えたという感じでした・・・。こういう街もあるのだな、としか。

とここまで書いてから、本屋さんでたまたま見つけた雑誌「VOICE」の11月号(最新号)に、著者へのインタビュー記事が大きく載っていた。注目の一冊なんだね。

それと、関西には「川崎」と名前のよく似た、

「尼崎」

がちょっとイメージがかぶるかもしれないが、ともに風土が似ているのではないか。

「川崎」=かつて「日本鋼管」という大企業の工場と労働者がいた。東京と港町・横浜に挟まれた街。

「尼崎」=かつて「川崎重工」「神戸製鋼」という大企業の工場と労働者がいた。大阪と港町・神戸にはさまれた街。

3年前に訪れたスペインのバスク地方にある街・ビルバオは、ニューヨークのグッゲンハイム美術館を誘致することで「造船業の街」から「現代美術の街」へと転身した。

川崎は「ヒップポップ」という「音楽」で、そういった転身を図れるのだろうか。



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(2018、10、9読了)

2018年10月12日 18:28 | コメント (0)

新・読書日記 2018_136

『プーシキン美術館展~旅するフランス風景画 図録』(国立国際美術館、2018、7)

大阪・中之島の国立国際美術館、地下に展示室がある美術館だ。

去年は、あの「バベルの塔展」があった。あれ以来かな。1年ぶりの感じです。

今回はロシア・モスクワにある「プーシキン美術館」の「風景画」特集。

いまや「美術」「絵画」では当たり前のテーマである「風景画」だが、実は18世紀半ばまでは「風景」は単なる「背景」であって、「テーマ」足りえなかった。それが「テーマ」になって来た歴史を学ぶ展覧会。

また、モネが「印象派」と呼ばれるきっかけとなった「日の出」の6年前に、マネの絵に影響を受けて、同じような構図で描いた絵画が、実は「印象派」の特徴である「光」を捉えた絵を描いていた!

「印象派の夜明け前」

と名付けたのは、うまいと思う。「日の出」より前だからね。

しかも、皆さん、

「モネがマネのマネ(真似)をしていたんですよ!」

と、一人、ほくそえんでいたのでした。

いやあ、勉強になった。


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(2018、10、7読了)

2018年10月12日 18:26 | コメント (0)

新・読書日記 2018_135

『1968年』(中川右介、朝日新書:2018、9、30)

いつもの中川さんの本、ぶ厚い365ページ。最近の新書なんて大体200ページぐらいなのを考えると、倍近い。

「1968年」というとちょうど、50年前。半世紀。その年にあった出来事をいくつかの観点から見ていくという試み。今回は、

「グループサウンズ」(第一話「ザ・タイガースと若者たちの闘争」)

「少年漫画」(第二話「『少年マガジン』と漫画雑誌攻防戦」)

「野球と野球漫画」(第三話「若きエースたち~江夏豊と星飛雄馬」)

「映画」(第四話「映画スターたちの独立戦争」)

つまり「音楽」「漫画」「野球(スポーツ)」「映画」という「4つの文化」の側面から「1968年」という年を語り、分析するもの。

あれ?これってもしかしたら、これまでの中川さんの作品執筆の中から生まれた「副産物的」なものなのかな?だとしたら、こうやっていろんな観点から分析・抽出して組み合わせることで、別のものが出来るというのは、面白いですよね。

私は、中川さんより「1歳年下」という、まあほぼ同世代で、「1968年」は「小学校1年生」。その意味では一番リアルタイムで感じられて覚えているのは、「漫画雑誌の攻防」ですね。確か小学校1年生の時に「少年ジャンプ」という新しい漫画雑誌が創刊されたのは覚えています。私は買っていなかったけど、1~2歳上の友達が買っていて、いつも回し読みというか外で一緒に並んで読んでいました。読むスピードが違うと、「このページ、もう読んだ?」みたいな目線で「うん」なんて、うなずいたりして。なつかしい「子どもの頃の思い出」のひとコマですね。「ハレンチ学園」も、読んでいましたよ!PTAからの評判は悪かったけど、「教育ママ」から。永井豪さん、今も現役で描かれています。50年経って「おっさん」となった私にとっては、ちょっと線がなじまないのだけれど。

そしても、ちろん「巨人の星」はアニメで見ていました。まさか大人になって、そのアニメを制作・放送していた会社に入社するとは思わなかった。マンガ雑誌は、散髪屋さんで順番を待っている間に読んでいました。「あしたのジョー」は、三重に住んでいた当時20代前半の叔父が漫画の単行本を全巻持っていて、叔父の家に行ったときに読んだ覚えがありました。

グループサウンズやフォークソングは、後から学んだ感じかなあ。まだ幼稚園だったからねえ。「フォーククルセダーズ」が、(1968年)10月17日の解散コンサートの後に、読売テレビの「11PM」に出演したのが最後の活動になったのだそうだ。(72ページ)当時は大阪・南森町の社屋だったよな。今調べたら、この日は「木曜日」。たしかに「木曜イレブン」と「火曜イレブン」は「大阪・よみうりテレビ」から放送していましたからね。

現代につながる歴史のワンシーンを読み取ることが出来て、面白かったです!

これって、続編で「1969年」「1970年」「1971年」・・・と毎年の分を、「50年前」を振り返って、出せますよね、「半世紀前シリーズ」。なかなか良いアイデアだと思いますが。調べて書くのは大変でしょうけど。

なお、誤植1か所発見。「227ページの後ろから3行目」、

×「西本幸男監督率いる阪急ブレーブス」→〇「西本幸雄監督率いる阪急ブレーブス」

ですね。改名したということは、ないですよね?


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(2018、10、6読了)

2018年10月12日 18:19 | コメント (0)

新・読書日記 2018_134

『あんことわたし~日日大あん吉日』(川田裕美、ぴあ:2018、9、26)

3年前にフリーになって今や大活躍、その顔を画面で見ない日はないという川田裕美アナウンサーは、読売テレビで私の後輩です!

いやあ、本当に良かったなと思いますね。そしてついに「本」まで出してしまいました。

「あんこ」好きが昂じて「あんこ本」ですよ、皆さん。好きこそものの上手なれ、ですね。

「あんこ」だけで本を一冊書けるアナウンサーなんて、他にいませんよ!

内容は、まあ仲間なので、読まなくても知っていることが、ほとんどですけど、フリーになってからのタレントさんとの交流の話などは、知らない部分ですね。ツイッターなんかでも紹介しているけど。

読売テレビアナウンス部に関しては、次の一節が、誇らしい。

「読売テレビアナウンス部は『自分たちはタレントではないんだから』という意識がしっかりしていて、なんでも自分で調べて動くことを新人のときからきっちりと指導されます。」(78ページ)

そうそう、川田さんはきっちり身についてますね。体に気を付けて頑張ってね!

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(2018、10、5読了)

2018年10月12日 09:15 | コメント (0)

新・ことば事情

6961「恐妻と鬼嫁」

9月24日の「ミヤネ屋」で、9月15日に亡くなった樹木希林さんと内田裕也さんの"夫婦の形"から、芸能界のさまざまな"夫婦の形"をご紹介しました。

その中で、俳優の遠藤憲一さんの奥さんが、かなり厳しくて、遠藤さんが、

「恐妻家」

であると紹介しました。そのVTRの原稿とテロップにこのような表記が。

「"恐妻"発動」

「実はかなりの"恐妻"」

うん?これは、おかしな表現です。この原稿を書いたディレクターは、明らかに間違っているぞ!「恐妻」とは、

「『恐ろしい妻』ではなく、『妻を(異様に)怖がる夫』のこと」

ですよね!そこで、次のように直しました。

×「"恐妻"発動」→〇「"鬼嫁"発動」

×「実はかなりの"恐妻"」→〇「実はかなりの"鬼嫁"」

まあ、

「鬼嫁」

という表現も、イマドキどうかとは思いましたが、「ミヤネ屋」の同じ時間帯で昔、読売テレビが放送していた、

「2時のワイドショー」

で、毎週「ミヤコ蝶々さん」が相談に応じていた人気コーナーで、

「究極の鬼嫁」

というのがあったのを思い出し、

「同じ時間帯の番組だし、ルーツを感じるような感じで、まあ、よしとするか」

と思って、そういった表現になりました・・・。

「猛妻」

でも良かったかな。「猛獣」みたいだけど。

(2018、10、11)

2018年10月11日 20:24 | コメント (0)

新・読書日記 2018_133

『生誕110年東山魁夷展図録』(京都国立現代美術館:2018、9月)

行きたい行きたいと思っていても、なかなか京都までは行けない。平日は行けないし土日もいろいろ用事があって。夕方5時までに行くのは無理ですね。でも実は金曜日と土曜日は、夜9時まで開館していることを知り、金曜日に夜6時半に会社を出て、京都まで行きました。午後8時前に着いて、見ることができました。そんなに混んでないし、これはお勧めです。(10月14日まで)

「東山魁夷」と言うと、「青い絵」が有名ですが、特に私は、

「緑の湖の湖畔を歩く白馬」

の幻想的な絵が好きですが、それを見ることも出来ました。

日本画と洋画の良い所を合体させたような感じがしたな。北欧に絵の取材旅行にも出かけたりしていたんですね。

今年、生誕110年。亡くなったうちの祖父とほぼ同年代だな。

また、ゆっくりと見たいものです。


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(2018、9、28読了)

2018年10月11日 19:45 | コメント (0)

新・読書日記 2018_132

『痕跡本の世界~古本に残された不思議な何か』(古沢和宏、ちくま文庫:2015、6、10)

ツイッターで紹介されているのを見て「おもしろそう」と思って取り寄せた、ちょっと前に出た本。

「痕跡本」

というのは(この本の著者が名付けたようだが)、書き込みがあったり、手紙が挟まっていたり、カバーが糊付けされていたりと、何らかの「痕跡」が残っている「古本」のこと。そこから「その本の、以前の持ち主の人生」を想像するというのが「痕跡本」の楽しみなのだそうだ。たしかに古本を買って、そういった痕跡が残っていたりすると、その本の数奇な「人生」ならぬ「本生(ほんせい)」や、「前の持ち主」に思いを馳せることがある。

古本屋さんで手に入れたものだと「他人」だが、「両親」や「親戚の本」だと、

「父はこの年代に、こんなことを考えていたのか」

などと、その直筆の文字を見るところから想像できたりするので、私も「痕跡本マニア」になる素質は十分あると思う。でも、他人の本で「呪い」みたいなのが残っていると、嫌だな。

この本で紹介された中では、やはり『平和の政治学』という岩波新書、

「この本を拾った人は、持って来て感想を聞かせて」

と書かれていた45年も前の本のエピソードが印象深い。名前と住所が書かれていたところから辿って行って、なんと持ち主が分かって返しに行くというストーリー。これは番組になるな!と思ったら、実際にテレビ番組になったのだそうです。結末は、本書を読んでみてください。

ちなみに「カバーを逆につけて読む」という本のシーンもあったので、そこから後は、私もこの本のカバーを「さかさま」につけて読んでみましたが、何となく落ち着かないものですね。


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(2018、10、7読了)

2018年10月11日 19:43 | コメント (0)

新・読書日記 2018_131

『決定版・天ぷらにソースをかけますか?~ニッポン食文化の境界線』(野瀬泰伸、ちくま文庫:2018、7、1)

本書は『天ぷらにソースをかけますか?』(新潮文庫、2009年1月)『納豆に砂糖を入れますか?』(新潮文庫2013年10月)の2冊を改訂の上、合本したものである。

2冊の新潮文庫、持ってますし、読みました。というか、その前の単行本も持っている。

でも、買っちゃった!「決定版」だっていうし。

で、「解説」は新しいでしょうから、それだけ読みました。小宮山雄飛さんという若い人(?)が書いています。

なんか、こういう食べ物に関する「地域差」って興味がありますよね。まさに「ケンミンSHOW」の世界ですが。日本地図を見るだけでも楽しいです。


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(2018、10、7読了)

2018年10月11日 19:42 | コメント (0)

新・読書日記 2018_130

『微妙におかしな日本語』(神永暁、草思社:2018、2、21)

うわー!ことし3月に買って読んだことを忘れて、また買って真剣に最後まで読んでしまったー!!と、今気付いたあ!!

詳しくは「2018読書日記031『微妙におかしな日本語~ことばの結びつきの正解・不正解』(神永暁、草思社:2018、2、21)」を読んでください!

でも、いっぱいページの端を折ってしまったぞ。

なんか、初めて読んだような気がしたな。おかしいな。記憶力は大丈夫かな?


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(2018、10、1読了)

2018年10月11日 19:40 | コメント (0)

新・読書日記 2018_129

『歴史と人生』(半藤一利、幻冬舎新書:2018、5、30)

半藤さんがこれまで書いてきた膨大な文章の中から、「人生の教訓」になりそうな一節を「抜き書き」した一冊。という意味では、大変お得な、ためになる一冊なのではないでしょうか。

一つ一つが大変短いので、読みやすいですよ。

その中から一つだけ、全文を「抜き書き」します。170ページ~171ページ。

「積極的平和主義」の真の意味

いつの時代であっても、国の外に敵を想定し、危機感を煽り、挙国一致、精神総動員で国民を愛国化すれば、内なる憂いはすべて解消すると、お偉い人たちは考えるものらしい。いまの日本の、できるかぎりアメリカの「世界戦略」に協力すべきだという「積極的平和主義」なんか、その最たるものといえる。排他主義を正面に押したて、味方は「ここからここまで」ときちんと区分けすることを愛国の本質とする、そんな排他的同調の時代の到来はほんとうに恐ろしいと思うが・・・・(『B面昭和史』)


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(2018、9、28読了)

2018年10月11日 19:39 | コメント (0)

新・読書日記 2018_128

『日本衆愚社会』(呉智英、小学館新書:2018、8、8)

久々の呉智英の新刊だ!と本屋さんで見つけて、すぐに購入。タイトルも、いかにも呉さんらしいが、昔はこれがとても刺激的なタイトルだと思ったが、今は普通に今の日本を表しているようで逆に刺激がないというのは、一体世の中どうなってしまったのか?と思う。

「週刊ポスト」での2016年2月12日号から2018年6月1日号までの連載をまとめたものだそうだ。「ポスト」は読まないから知らなかったなあ。今、「呉智英」と言って、

「ああ、あの『バカにつける薬』の!懐かしいなあ」

とわかるのは「50代以上」なのかなあ。

本書は第1章「ポピュリズムを超えて」、第2章「俗論を疑え」、第3章「狂暴なる言論」と大きく3つに分けられて、合計55のコラムが掲載されている。自ら「極左封建主義」と名付けた思想の下で語られる論の大部分は、今なら「正論」と呼べるような考え方だと思う。

一番笑ったのは、「オカルトテロの恐怖」(166ぺージ~169ページ)。

2017年7月11日付『産経新聞』1面コラム「産経抄」で「胎内記憶の研究を続けている産婦人科医の池田明」センセの迷著『子供は親を選んで生まれて来る』を取り上げていて、

「池田センセは『精子の記憶』『卵子の記憶』まで唱えている」

と。

「ある男児、また別の成人男性は『精子のときの記憶』を語った」

「ある女性は『自分が卵子だったとき』の『記憶がよみがえった』という。」

と紹介した後に、

「あのう、センセ、精子が男性になり、卵子が女性になるわけじゃないんですけど。」

これは一人で爆笑した!呉さんも、おそらく笑いをこらえ呆れた顔をして、こう記したことだろう。

これを載せた「産経新聞」も大丈夫か?と心配になってしまう。


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(2018、9、15読了)

2018年10月11日 19:37 | コメント (0)

新・読書日記 2018_127

2018読書日記127『マーラーの交響曲』(金聖響・玉木正之、講談社現代新書:2011、12、20)

先日たまたま、フェスティバルホールで、サイモン・ラトル指揮「ロンドン交響楽団」の演奏を聴く機会に恵まれた。演奏曲は、生誕100年のレナード・バーンスタイン作曲の「交響曲2番」と、マーラーの「交響曲9番」。指揮者としても有名で、佐渡裕の師匠でもあったバーンスタインの曲と言うと「ウェストサイド・ストーリー」をまず思い浮かべるが、私の場合は、1982年に早稲田大学グリークラブの一員として参加した「シカゴ音楽祭」で歌った「チチェスター詩篇」という何だか難しい曲を思い出す。今回の「交響曲2番」は、思ったより楽しい曲だった。

そして、マーラーの「交響曲9番」。CDは4枚ぐらい持っていたが、どんな曲だっけなあ。聴いてみたら、まあー、長い。そして、

「マーラーは、どこを切ってもマーラー」

その意味では、

「サザンオールスターズと同じだなあ」

と感じました。

それで引っ張り出して来たのがこの本。「9番」をどのように書いているのかな?と思ったら、長い曲なのに、記述は短かったです。


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(2018、9、25読了)

2018年10月11日 19:36 | コメント (0)

新・ことば事情

6960「母校」

ネットで見た記事に、

「『母校』とは、その学校を卒業した人が呼ぶもので、在校生は使えない」

と書かれていて、

「え!そうなの!?」

と驚きました。本当かな?辞書を引いてみると、

「自分が学んで卒業した学校。出身校。」(広辞苑)

「自分が卒業した学校。出身校。」(精選版日本国語大辞典)

「自分がそこで学び、卒業した学校。出身校。」(新明解国語辞典)

「自分の出身学校。」(岩波国語辞典)

「その人が卒業した学校。出身校。」(デジタル大辞泉)

「その人が学び、卒業した学校」(新潮現代国語辞典)

ほんとにそう書いてある!

「卒業した後」

でないと「母校」と呼べないの?「中退」したらダメ?「転校」した場合は?

「中学1年から3年の2学期まで在籍して、その後転校して3学期だけを過ごして別の学校を卒業したというような場合」

は、「卒業した学校」が「母校」なの?「中学の大半を過ごした学校」は「母校」じゃないの?と、つい、ひねくれた例を思いついてしまいます。

大体、「わが母校」である「早稲田大学」の校歌『都の西北』の歌詞に、

「都の西北 早稲田の森に 聳(そび)ゆる甍(いらか)は 我らが母校」

と書かれています。

「我らが母校」

です。「在校生」も当然、歌います。「明治大学」だって、

「おお明治 その名ぞ 我らが母校」

と歌っているし、「法政大学」だって、

「法政 おお わが母校 法政 おお わが母校」

と歌っているではありませんか。これは「在校生」のための曲ではないのか???

「卒業生しか『母校』と呼んではいけない」

のであれば、この「校歌」は誰のためのものでありましょうか?

それに、

「母校の名誉を懸けて戦います」

という大学のスポーツ部の現役学生は「母校」と呼んではいけないのか!!?

まあ、しかし、そんなに熱くならなくても

「自分が学んでいる学校。また、自分が学んで卒業した学校。出身校。」(明鏡国語辞典)

「自分の学んでいる学校。また、卒業した学校。出身学校。」(旺文社標準国語辞典)

  1. 自分の卒業した学校。②自分の在学している学校」(三省堂国語辞典)

「自分が学んでいる学校。また、卒業した学校。出身校。(現代国語例解辞典)

と、ちゃんと「在校生」も「母校」と呼んで構わないとしている国語辞典もあるので、ちょっと、ホッとしました。

でも「広辞苑」をはじめとした国語辞典は、「母校」の語釈を換えることを考えるべきではないでしょうかね?「広辞苑」なんかは、

「自分が学んで卒業した学校。出身校。」

というのを、

「自分が学んでいる学校。卒業した学校。出身校。」

と「4文字」増やすだけで直せるんだから。

(2018、10、3)

2018年10月 3日 20:44 | コメント (0)

新・ことば事情

6959「セメント・モルタル・コンクリ」

8月30日の「ミヤネ屋」の「250ニュース」のコーナーで、

「夫をセメント詰めにした妻が 死体遺棄容疑で再逮捕された」

というニュース。最初は、

「セメント詰め」

だったのですが、「修正です!」とAD(アシスタントディレクター)さんが走って来て、

「モルタル詰め」

に変更。さらにまたADさんが、前より急いで走って来て(オンエア時刻が迫っているから)「再修正です!」ということで、

「コンクリ詰め」

になって放送されました。夫は、遺体になっても大変です。

さあ、この、

「セメント」「モルタル」「コンクリ」はどう違うのか?

よくわからないので、調べました。その結果、

「そもそもの『材料』となる、『セメント袋』に入っている粉が『セメント』」

です。

「それに砂を混ぜて水で練ったものが『モルタル』と『コンクリート』」

です。では「モルタル」と「コンクリート」はどう違うのか?

「『モルタル』」は『レンガの継ぎ目』『壁』などに塗られる」

のに対し、

「『コンクリート』は頑丈なので『構造材』として使われる」

という違いなのだそうです。

つまり、こんな感じかな。「セメント」は、

「インスタントコーヒーの粉」

だとすると、それに「水(お湯)」を入れたら、

「モルタル」や「コンクリート」

になると。「キリマンジャロ」が「コンクリ」で、「モカ」が「モルタル」みたいな感じ?違うか。素人のイメージです。

でもちょっと、「違いが分かったような気が」しました。

「セメント」・・・「セメタリー(墓)」・・・

「セメント盛り」・・・「メメントモリ(死を思え)」。

ちなみにこの日の「250」ニュースのメニューは「夫婦のトラブル3題」でした。

(1)夫コンクリ詰め 妻を死体遺棄で再逮捕

(2)札幌 妊娠8か月の妻を 夫が殴り死なす

(3)口論の末 妻を車で数回ひいた夫 逮捕

・・・「げに、夫婦は恐ろしきものなり」ですねえ・・・。

(2018、10、3)

2018年10月 3日 20:42 | コメント (0)

新・ことば事情

6958「停電は戸か?軒か?2」

「平成ことば事情6943停電は戸か?軒か?」の続きです。

9月30日、「台風24号」が日本列島にまた上陸しました。これにより各地で、

「停電」

が起きました。その「停電が起きた数」の「助数詞」は、翌10月1日の各紙夕刊は、「関西電力」「東京電力」も、「読売・朝日・毎日・産経・日経全紙」、

「戸」

でした。10月2日のNHK午後7時のニュースも「戸」でした。

また、同じく台風24号の被害で、いまだに大規模停電が起きている静岡県の様子を伝えた10月3日の「ストレイトニュース」で「中部電力」の発表としてSDT(静岡第一テレビ)は、

「約5万戸」

と伝え、10月3日のNHKのお昼のニュースでも、

「停電5万戸近く」

と伝えていて、やはり放送では、

「停電は『戸』」

で数えるのですね。

停電で信号機がつかなくて交差点での事故が増えているということなので、静岡県の方は十分ご注意ください。

(2018、10、3)

2018年10月 3日 12:16 | コメント (0)

新・ことば事情

6957「ノーベル生理学・医学賞の表記2」

10月1日午後6時20分ごろ、ことしの「ノーベル生理学・医学賞」に、京都大学の、

「本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授」

の受賞が決定しました!がん治療薬「オプジーボ」の開発などにつながった免疫チェックポイント分子「PD-1」を発見したことが評価されたそうです。ここ数年、毎年、

「受賞するのではないか?」

と本命候補に挙がっていたので、難しいお名前ですが、もちろん存じ上げています!

日本人の「ノーベル生理学・医学賞」受賞者(肩書は当時)は、おととし(2016年)の

「大隅良典・東京工業大学栄誉教授」

3年前(2015年)の、

「大村智・北里大学特別栄誉教授」

さらにさかのぼると、いまだに受賞時のイメージが強い、2012年受賞iPS細胞の、

「山中伸弥・京都大学教授」

と、日本人で初めて「ノーベル生理学・医学賞」を受賞した1987年の、

「利根川進・マサチューセッツ工科大学教授」

と、今回の本庶佑・京都大学特別教授の5人ですね。

この「ノーベル賞」の表記がマスコミによって違うということは、3年前の大村智・北里大学特別栄誉教授の受賞の際に気付き、その直後に開かれた新聞用語懇談会の秋季合同総会(2015年11月、愛媛・松山)で各社の表記について以下のように質問していました。

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『大村智さんの受賞が決まった「ノーベル生理学・医学賞」ですが、その部門の表記が各社、異なります。私の観察では以下の通りです。それ以外の各社の表記を教えていただきたいのと、なぜその表記になったかという「理由」も教えてください。

(日本テレビ・読売テレビ系列では、2012年、iPS細胞の京都大学・山中伸弥教授の受賞時から「ノーベル生理学・医学賞」で統一されました。「生理学」が先で「・」が入ってから「医学賞」の順番です)

★「ノーベル生理学・医学賞」=読売新聞・日経新聞・日本テレビ

★「ノーベル医学生理学賞」=朝日新聞・毎日新聞・テレビ朝日・TBS・山梨日日新聞(共同通信)

★「ノーベル医学・生理学賞」=産経新聞・NHK・フジテレビ・テレビ朝日

なお、英語での表記は

「Nobel Prize in Physiology or Medicine」(「Japan Times」)でした。

また、会議の前に寄った松山の書店で見かけた「大村先生に関する本の帯」も(「主婦の友社」と「小学館」だったと思いますが)「ノーベル生理学・医学賞」でした。』

これに対する各社の回答は、以下の通りです。

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(朝日新聞)慣習で戦前から「ノーベル医学生理学賞」。見出しで「医学賞」とすることもあり、そのためには「医学」を先にしたほうが良いのではないかなと思う。

(毎日新聞)理由はわからないが、戦後は「ノーベル医学・生理学賞」だったが、2004年に共同通信の表記に合わせて「・」を取り「ノーベル医学生理学賞」になった。

(共同通信)加盟社から表記に関して数回、問い合わせがあった。1987年、利根川進氏がノーベル賞を受賞した際から「ノーベル医学生理学賞」とした。(「・」は、なし。)「医学賞」と、見出しなどでは略す。ノーベルの遺言では「生理学」が先だが、既に「医学生理学賞」で定着しているので、そのまま。

(NHK)科学文化部のデスクに聞いた。「以前から『ノーベル医学・生理学賞』。他社もそれが多いと認識している。数年前に表記を変えるかどうか相談したが、『医学』が先に来た方が分かりやすいということで『そのまま』になった」ということだった。

今回(10月1日)、夕方のニュースを見ていたら、

(日本テレビ)生理学・医学賞

(読売テレビ)生理学・医学賞

(毎日放送)医学生理学賞

(NHK)医学・生理学賞

でした。

(2018、10、1)

2018年10月 2日 21:53 | コメント (0)