新・ことば事情
6954「押印と捺印」
貴乃花親方の引退・退職問題を巡って、「所属変更届」に、弟子を引き渡す千賀ノ浦親方の署名・捺印(なついん)がないことが問題になっています。
「署名」=サイン
「捺印」=はんこ
ですね。この「捺印」ですが、
「押印」
と書いているメディアもあります。どう違うのでしょうか?
『広辞苑』を引いてみても、ほぼ同じ意味合いしか載っておらず、「捺印」「押印」どちらを引いても、言い換えでお互いが出てくるので、堂々巡りです。そこで、意味の違いについて考えてみました。結論から言うと、
「『押印』の方が、範囲が広い」
ということですね。たとえば、
「切手のスタンプ・消印」
は「押印」であって、「捺印」ではありません。
「捺印」は、個人や団体が、その文書をきっちりと読んで理解した上で押す印鑑、という感じがします。
一方の「押印」は、ただスタンプやハンコなどを「押す」という感じ。機械的に数多くの紙などに押す場合は、「捺印」ではなく「押印」がふさわしい気がします。
しかし、どちらを使うかは、「捺」が「表外字」なので、使おうとすると、
「捺印(なついん)」
と「ルビを振らなくてはならない」ことから、ルビが不要の「常用漢字」である「押」を使うことが多いのではないでしょうか。