新・読書日記 2018_123
『永遠のファシズム』(ウンベルト・エーコ著、和田忠彦訳、岩波現代文庫:2018、8、17)
「平成ことば事情6940ファシズムの14徴候」で書いた「14徴候」が載っていた本。
読みたかったのだが「絶版」で結構高価だったので、なかなか手に入れにくかったのが、文庫で復刊というのを日経新聞の読書欄で知り、即購入!
あとは「平成ことば事情」をそのまま転載します。
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『薔薇の名前』で知られるイタリアの代表的知識人であるウンベルト・エーコの著書に、
『永遠のファシズム』
という本があります。「永遠のファシズム」というのは、
「原ファシズム」
の別名だとエーコは言います。つまり、
「ファシズムの原点」
のようなもののことですね。その本の中に、
「ファシズムの14徴候」
が載っているそうです。それを書き出してみると、
(1) 伝統崇拝
(2) 非合理主義
(3) 反知性主義
(4) 批判の拒絶
(5) よそ者排除
(6) 欲求不満層の懐柔
(7) ナショナリズム
(8) 敵の力の判断力欠如
(9) 反平和主義
(10)弱者蔑視
(11)死の崇拝
(12)武器への愛着
(13)ポピュリズム
(14)貧弱な語彙
おお、ほとんど全て、現在の安倍政権とそれを支持する人たちにあてはまるではないですか!最後の、
(13)ポピュリズム
(14)貧弱な語彙
は、「小泉純一郎内閣」に特徴的でしたね。安倍政権も、それを引き継いでいる部分があるでしょう。
この「14徴候」は、たまたまインターネットの記事で知ったのですが、「ぜひ、その本を読んでみたい!」と思って、なじみの本屋さんに注文したら、
「1998年に出て、今は絶版です」
と言われ、古本で見ると「4000円ぐらいする」ので、「図書館で借りるかあ・・・」と思っていたら、なんと、
「8月17日に『岩波現代文庫』から、文庫版で復刊」
しました!しかも940円(税別)というお手頃価格。それを『日経新聞』の読書欄で知って、すぐに本屋さんに走って購入、読みました!ウンベルト・エーコの「講演録」なんですね。読みやすいです。
20年前というのは、「昔」ではなく「現代」です。ある意味これは、
「民主主義の行き着く先について書かれた『予言の書』」
なのかもしれません。
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これに付け加えることと言えば・・・「原ファシズム」というのは「永遠のファシズム」と同義だそうです。「14徴候」の内で言うと、
(7)「ナショナリズム」で「いかなる社会的アイデンティーをもたない人びとに対して(中略)、全員にとって最大の共通項、つまりわれわれが同じ国に生まれたという事実だ、と語りかけます。これがナショナリズムの起源です。」(52ページ)
また、(12)「武器への愛着」では「永久戦争にせよ、英雄主義にせよ、それは現実には困難な遊戯ですから、原ファシズムは、その潜在的意志を性の問題にすりかえるわけです。これが<マチズモ><女性蔑視や、純潔から同性愛にいたる非画一的な性習慣に対する偏狭な断罪>の起源となります。(中略)現ファシズムの英雄は、男根の<代償>として、「武器」と戯れるようになるわけです。戦争ごっこは永久の<男根願望>に起因するものなのです。」(56ページ)
・・・これはフロイト的ですね・・・。でも安倍さん、トランプさん、わかる気はしますね。
そして(13)「ポピュリズム」では、「原ファシズムは『質的ポピュリズム』に根差したものです(中略)市民全体としては(多数意見に従うという)量的観点からのみ政治的決着能力をもっています。原ファシズムにとって、個人は個人として権利をもちません。量として認識される『民衆』こそが、結束した集合体として『共通の意志』をあらわすのです。人間存在をどのように量としてとらえたところで、それが共通意志をもつことなどありえませんから、指導者はかれらの通訳をよそおうだけです。(中略)今では質的ポピュリズムの格好の例をヴェネツィア広場やニュルンベルク競技場にもとめる必要はありません。わたしたちの未来には、<テレビやインターネットによる質的ポピュリズム>への道が開けているのですから。選ばれた市民集団の感情的反応が『民衆の声』として表明され受け入れられるという事態が起こりうるのです。質的ポピュリズムを理由に、原ファシズムは<「腐りきった」議会政治に反旗をひるがえすにちがいありません。>(56~57ページ)
いかん、全部引き写しそうだ。・・・。
そうそう、訳者の和田さんの「あとがき」には、なんと永井愛さん原作の演劇で松尾貴史さんが出演してらっしゃる「ザ・空気」についても書かれていたことを最後に書き添えておきます。