新・ことば事情
6934「含み損3」
2003年に書いた「平成ことば事情1029含み損」と2006年に書いた「平成ことば事情2456含み損2」の続編を久々に書きます。
というのは、NHK放送文化研究所発行の『放送研究と調査2018年9月号』に載った「6月22日のNHK放送用語委員会」での「用語の決定」の中に、「含み損」の「損」の読み(濁るか、濁らないか)に関するものがあったのです。NHK放送文化研究所の塩田雄大さんからご教示頂きました。ありがとうございます。
それによりますと、
「『フクミゾン』を第一推奨形とする」
となったそうです。これまでは、
「〇フクミソン 〇フクミゾン」
と「ソン」「ゾン」の両形を同等に認めていたそうです。
変更の根拠としては、2013年11月に実施された682人が回答したウェブアンケートの結果が、
(ア)「ふくみそん」と言う(「ふくみぞん」とは言わない)=11%
(イ)「ふくみぞん」と言う(「ふくみそん」とは言わない)=59%
(ウ)両方とも言うが,どちらかといえば「ふくみそん」と言うことのほうが多い=6%
(エ)両方とも言うが,どちらかといえば「ふくみぞん」と言うことのほうが多い=18%
(オ)このことばを声に出して言ったことがない=6%
と、「ゾン」と「濁る人」が「75%」、「ソン」と「濁らない人」が「17%」だったことを受けての決定のようです。そうです。
そして国語辞典・和英辞典での扱い(56冊)によると「新しい語のため、戦前・戦後昭和には立項はなし」で、「平成になって出た辞書」では、
「フクミゾン」=4冊
「フクミソン」=7冊
だそうです。
また、[参考]として「同じ後部要素の語(=損)の読み」は、
〇「~ソン」=汚損、毀損、欠損、減損、自損、破損[←すべて2字漢語]
〇「~ゾン」=大損、聞き損、手間損、骨折り損、丸損[←すべて前部要素が和語]
〇「~ソン、〇~ゾン」=評価損
だったそうです。