新・ことば事情
6933「代理母3」
「平成ことば事情322代理母」「平成ことば事情6668代理母2」の続きです。
2018年2月開催の「新聞用語懇談会放送分科会」で、私から、
「『代理母』の読み方」
について、
『「代理母」の「母」の読み方は、放送では「ハハ」でしょうか。「ボ」でしょうか。「代理母出産」と言う場合と、単独で「代理母」という場合では、読み方が変わることはあるでしょうか。手元にある辞書では、下記の通りでした。
★「辞書名」 「ハハ」 「ボ」
『広辞苑』 ○ ×
『明鏡』 × ×
『新明解』 × ×
『精選版日国』 ○ × ※「ハハ」の語釈の中に「ダイリボ」も。
『デジタル大辞泉』 ○ ×
『三国』 ○ × ※「ハハ」の語釈の中に「ダイリボ」も。
『現代国語例解』 × ×
『NHKアク新辞典』○ ○ 』
と、各社の意見を聴きました。それに対する各社の意見は、
(NHK)両方OAがあるが、「ハハ」のほうが多い。
(日本テレビ)両方OAがある。ルールは決めていない。
(テレビ朝日)わかりやすさから「ハハ」。ルールは決めていない。
(TBS)「ハハ」。ラジオでは「ボ」は聞いて分かりにくく、伝わらない恐れがある。「必ずそうする」というルールは無い。
(フジテレビ)「ハハ」と読んでいる、ルール化はされていない。
(テレビ東京)周囲のアナウンサーに聞いたところ、「ハハ」と読むと。
(ABC)「ハハ」。ラジオがあるので。しかし「代理母出産」は「ボ」もある。「代理母」単独では「ハハ」が分かりやすい。ルールを決めているわけではなく、各アナウンサーが対応している。「ミヤネ屋」で宮根さんは「ハハ」と言っていたのではないか?
(ytv)担当ディレクターによると、VTRのナレーションは、「ボ」に統一したが、スタジオでのトークでは、特に「代理母」単独の場合は「ハハ」でも「ボ」でも良いということにしたとのこと。「代理母出産」と「出産」まで付くと「ボ」ということ。
(MBS)丸岡さんの話題の際は、全部スタジオフリートークだったので、「代理母」は全部「ハハ」だった。これがニュース原稿だと「ボ」になると思う。「継母」を「ママハハ」「ケイボ」と読み分けるような感じで。
(TVO)「ハハ」が分かりやすい。
(KTV)「ハハ」。
(時事通信)「読み」は決めていない。取材先の読み方に従う。
(共同通信)「決めていない」ルビも振っていない。耳で分かりやすい表現を優先する。
その後、最近になってNHK放送文化研究所発行の『放送研究と調査2018年9月号』に載った「6月22日のNHK放送用語委員会」での「用語の決定」の中に、「『代理母』の読み方」に関するものがあるのに気付きました。そこには、
「『ダイリハハ』を第一推奨形とする」
と記されていました。ちなみに、これまでは、
「〇ダイリハハ 〇ダイリボ」
と、両方を同等に認めていたようです。「放送分科会」でのNHKの委員の回答と同じでしたね。この改訂に当たっての、ウェブアンケート(2014年11月実施【664人回答】)によると、「代理母」の読み方は「A:だいりはは B:だいりぼ」のどちらか?という問いに対して、
(ア)A・B、どちらも正しい =20%
(イ)Aは正しいが、Bはおかしい=59%
(ウ)Bは正しいが、Aはおかしい=18%
(エ)A・B、どちらもおかしい = 0%
(オ)この言い方を知らない = 2%
だったそうです。
また、国語辞典・和英辞典での扱い(56冊しらべ)では、
(戦前)(戦後昭和)(平成)
【ダイリハハ】 0 0 7
【ダイリボ】 0 0 3
と、「代理母」は「平成」になってから国語辞典・和英辞典に掲載されるようになった「新しい言葉」であることを、改めて確認できました。
また、専門用語辞典での記述は、
「surrogate mother ... 代理母(だいりはは)」
(日本医学会医学用語管理委員会編(2007)『日本医学会医学用語辞典 英和』南山堂)
だそうです。
NHK放送文化研究所の塩田雄大さんから、ご教示頂きました。ありがとうございます。