新・ことば事情
6929「『中年』は何歳か?」
平成ことば事情266「中年」、平成ことば事情340「中年2」でも昔、書いた「中年」について書きます。
寺田寅彦の『天災と国防』(講談社学芸文庫)の中の「厄年とetc.」(146ページ~149ページの中にこんな記述が。
「日本では昔から四十歳になると、すぐに老人の仲間には入れられないまでも、少なくとも老人の候補者くらいには数えられたもののようである。しかし自分はそう思わなかった。四十が来ても四十一が来ても別に心持の若々しさを失わないのみならず肉体の方でもこれと云って衰頽(すいたい)の徴候らしいものは認められないつもりでいた。それでもある若い人たちの団体の中には自分たちの仲間は中老連などと名付けられていた。」
「私の方では年齢の事など構わないでいても、年齢の方では私を構わないのでおかないのだろう。ともかくも白髪と視力聴力の衰兆とこれだけの実証はどうする事も出来ない。これだけの通行券を握って私は初老の関所を通過した。そしてすぐ眼の前にある厄年の坂を越えなければならなかった。」
1878年(明治11年)生まれの寺田寅彦は、「厄年(数えで42歳)」を迎える前にこの文章を書き始め、この文章を書き終えたのは1921年(大正10年)4月、43歳でした。大正時代には、も「40歳」で「初老」だったのですね。
最新のデータ(たぶん)を見てみましょう!NHK放送文化研究所が出している『放送研究と調査』の「2017年12月号」に載った、
"『高齢者』は、72歳7か月からである"
~2017年「日本語のゆれに関する調査」から~
という論文によると、以下のような超ッさデーらが出たそうです。
(開始年齢) (終了年齢)
「中年」 ①40歳~(41%)①~60歳(32%)
②50歳~(19%)②~55歳(25%)
③45歳~(16%)③~50歳(19%)
「おじさん」①50歳~(24%)①~60歳(32%)
②40歳~(23%)②~65歳(18%)
③35歳~(10%)③~55歳(15%)
「おばさん」①40歳~(26%)①~60歳(31%)
②50歳~(21%)②~65歳(19%)
③45歳~(12%)③~55歳(15%)
と以下、全部書く面倒臭いので、やめます。その代り「それぞれにおける平均年齢」というのが載っていて、そちらの方が恐らくわかりやすいので、それを引き写します。
<男子> ~18歳1か月
<女子> ~18歳4か月
<中年> 43歳1か月~56歳4か月
<おじさん>44歳7か月~60歳1か月
<おばさん>44歳7か月~60歳3か月
<初老> 62歳8か月~70歳4か月
<老人> 72歳0か月~
<高齢者> 72歳7か月~
<お年寄り>73歳1か月~
ということです。
なんと!先日「57歳」になったばかりの私は、
「『中年』の枠を超えてしまっている」
ではないですか!いつまでもあると思うな「中年時代」。
「初老」は「62歳」だから、しばらくは、
「『おじさん』枠」
に留まるしかないのか!
また、「老人」「高齢者」「お年寄り」は、実態は同じで言い方違うだけなんですが、微妙に対象年齢がズレますね。
「老人<高齢者<お年寄り」
なんですねえ・・・。感覚的には。これは意外な感じも。
ずいぶん前に「中年は何歳か」を神戸の女子大生たち(19&20歳)120人に聞いて調べましたが(平成ことば事情266「中年」=2001年8月29日、ピッタリちょうど「17年前」か!)、あの時の結論は、
「『中年』は37、1歳~52、4歳」
で、一番「若い中年」の認識は「28歳」で、一番年配の中年は「60歳」という結果が出たのでした。そして、その範囲の平均を取ると、
「ザ・中年=44、8歳」
ということでした。それを、「一回り以上」超えてしまったのだから、そろそろ「中年」は"卒業"ですなあ。
当時、私はちょうど「40歳」になったばかりで、ちょうど寺田寅彦が、上記の文章を書いたぐらいの年でしたが、やはり「中年」という認識はあまりなかったなあ・・・。
17年の間に、私の「中年時代」も終わりを告げたようです・・・。
その「17年間」で「平成ことば事情」で「226→6929」まで、約「6700」の言葉のコラムを書いた「中年時代」だったと言えますね。
1年平均で「394」。おお、1日1つ以上書いてるわ!頑張りました!!