新・ことば事情
6923「『判官びいき』の読み方」
平
「判官びいき」
の読み方について、総合広報部のYさんから問い合わせがありました。
『視聴者の方から、先日の『ウェークアップ!ぷらす』での高校野球の話題で、今回優勝した「大阪桐蔭」が憎まれ役みたいで、準優勝の「金足農業」ばかり取り上げられることを指して、アナウンサーが、
「はんがんびいき」
と言っていたが、正しくは、
「ほうがんびいき」
ではないか?というご指摘がありました。
『新聞用語集2007年版』では、407ページの「放送で基準とする読み方例」の項に
*「判官」=ハンガン〔裁判官のこと〕名判官、塩谷(エンヤ)判官
=ホーガン〔表外音訓〕〔検非違使の尉(じょう)〕九郎判官義経、判官びいき
とあり、私なりに察すると、「判官」の読み方は「ハンガン」も「ホーガン」でも〇。
但し、前後の言葉により決定する。従って、「判官贔屓(びいき)』は、
「〇ホウガンビイキ、×ハンガンビイキ」
ではないか?と思われますが、どうなんでしょうか?
いろいろと調べてみましたが、大体『新聞用語集』の読み方の説明とほぼ同じものでした。放送における正しい読み方を解説していただくと有難いです。宜しくお願いいたします。」
とのことです。私はこう、返事のメールを送りました。
『たしかに『新聞用語集2007年版』の「放送で標準とする読み方例」では
*「ホーガンびいき」
になっていますし『NHKことばのハンドブック第2版』では、
*「ホーガンびいき」×ハンガン
になっていますが、最新版の読売新聞社の『読売スタイルブック2017』308ページには、
*「はんがんびいき」判官びいき(「ほうがんびいき」とも)
と逆の表示になっています。
手元の国語辞典では、
*「ホーガンびいき」=広辞苑、明鏡国語辞典、旺文社標準国語辞典、岩波国語辞典
*「ハンガンびいき」=新明解国語辞典(ホーガンとも)
*両方「見出し」で載せている=精選版日本国語大辞典
*「ハンガンびいき」空見出し=デジタル大辞泉、三省堂国語辞典、現代国語例解辞典
また「はんがん」が「空見出し」の『現代国語例解辞典』は、「ほうがん」の語句説明で、
『歌舞伎の世界では「ほうがん」=源義経、「はんがん」=「塩谷(えんや)判官」を指す』
と、『新聞用語集』と同じようなことを書いています。
語源的に考えると「判官びいき」の「判官」は「九郎判官義経」(=源義経)を指すのですから、『新聞用語集』『NHKことばのハンドブック第2版』に示されたように、
「放送では『ホーガン』と読むべき」
でしょう。
しかし、現状は「ハンガンびいき」を認めている辞書もあるので、
「『絶対間違い』とまでは言えない」
のではないでしょうか?
なお、『新明解』は「ホーガンびいき」は、
「『はんがんびいき』の古風な表現」
と記しています。
『旺文社』は、見出しは「ほうがん」のみですが、「ほうがんびいき」の語句説明の中に「はんがんびいき」を載せています。
『岩浪国語』も「はんがん」「ほうがん」両方あり、「ほうがんびいき」も「見出し」がありますが「はんがんびいき」は見出しがなく、「ほうがんびいき」の語句説明の中に「はんがんびいき」と書かれていました。』