新・ことば事情
6919「OL生活」
女優の「菅井きん」さんが亡くなったと、8月23日の「ミヤネ屋」でお伝えしました。
92歳でした。
菅井さんと言うと、(他局ですけど)「必殺」シリーズで、藤田まことさん演じる主役の「中村主水(もんど)」の姑役で、いつも、
「ムコどの!」
と呼びかけて、主水が「ビクッ!」とするという、コミカルな演技が思い浮かびます。
その菅井さんが「女優」の道へ進んだのは「20歳の時」だそうです。菅井さんは
「1926年(大正15年)生まれ」
なので、
「1946年(昭和21年)」
に「女優」の道へ。その前は、
「OL生活」
だったと書かれていたのです。それを見て「おや?」っと思いました。というのも、
「OL」
という言葉が生まれたのは、
「1963年(昭和38)」
だからです。「新しい時代の働く女性」を表す言葉を週刊誌『女性自身』が公募し、読者投票の結果誕生した造語・新語が「OL(オーエル=オフィス・レディー)」なのです。
それまでは、
「BG(ビジネスガール)」
と呼ばれていたのですが、実は英語で「BG(Buisiness Girl)」は、
「娼婦」
を意味するので、イメージが良くない。そこで、それに代わる言葉を募集したのです。
ということで、「OL」という言葉が出来る「前」に女優に転身した菅井さんが、
「OL生活をしていた」
という表現は、本来はおかしいのです。そこで、
「会社員生活」
という表現に直したのです。まあたぶん、戦前は「会社員」ではなく、
「職業婦人」
と呼ばれていたと思うのですが、
「職業婦人生活」
というのも「どうかなあ」と思って、少なくとも「OL」という表現を避けたのです。
「今で言う『OL生活』」
なら、まだ良かったかな。
ところがディレクターから、
「『OL生活』というのは、所属事務所の発表資料で使われている表現のままなので、それでいかせてください」
と言ってきました。
ということで、「OL生活」という表現に戻して放送しました。
でも、「OL」という言葉も今や「死語」に近付いてきているようにも感じますね。あまり、うちの若い女性社員からは、耳にしないですし。
菅井さんに哀悼の意を捧げます。
なお、「大正15年」というのは、
「1926年1月1日~12月24日まで」
です。「昭和元年」は、その残りの
「1926年12月25日~31日」
の「1週間だけ」です。菅井きんさんは「1926年2月」生まれなので、
「大正15年生まれ」
です。つまり、
「『1926年』は、「『大正』と『昭和』が混在している」
のです。それは、
「『1989年が『昭和』と『平成』が混在している』
ように。そして、来年「2019年」は、
「『平成』と『新しい元号』が混在する西暦の年」
になります。