新・読書日記 2018_107
『ツチハンミョウのギャンブル』(福岡伸一、文藝春秋:2018、6、30)
「週刊文春」に連載している「パンタレイ パングロス」というコラムをまとめたもの。「週刊文春」は毎週買って読んでいるし、福岡ハカセの文章も好きなのだが、「週刊文春」の連載は、実はあまり読んでいない。1回1回細切れだと、何か読もうという気が起きないんですよね。なぜだろう?そもそも「パンタレイ パングロス」の意味は、
*「パンタレイ」=あらゆることは偶然で、すべては移ろっていく=万物は流転する
*「パングロス」=すべては宇宙の偉大なる設計者によってあらかじめ計画・配剤されている
だそうです。福岡ハカセの「動的平衡」の考え方につながると。「パングロス」は、この間読んだ『ゲノムと聖書』に通じるな。
この単行本は、まず、表紙カバーの「ツチハンミョウ」の絵が素晴らしい。美しい。「まえがき」にも「画家の舘野鴻(たての・ひろし)さん」が本書のために描き下ろして下さったそうです。素晴らしい出来ですね!
最初のコラム「ある産科医の物語」、これは「やられた!」と思いましたね。おもしろい、素晴らしい作品です。
また全体的には「フェルメール」に関するコラムが多いのですが、フェルメールの生涯作品数「37」とういうのは「素数」であるとか、当時の「納税記録」からフェルメールの住んでいた住所を割り出したりと、もう、ワクワク・ドキドキするお話がいっぱい!
「少子化」が問題になっているけど、「中絶」された赤ちゃんも何十万人もいると。これの対策を考えてはどうだろうか?という提案もありました。また、「共同忘却論」(282ページ)を読んで、これは「自由からの逃走」ではないか?と思いました。
楽しかったです。お盆休みの読書にお勧めです。
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