新・ことば事情 (2018、8、8)
6908「打ち上がったクジラ」
8月6日の「ミヤネ屋」の「250ニュース」のコーナーと、その後の日テレ「news every.」で、神奈川・鎌倉氏の由比ガ浜海岸に、クジラの死骸が打ち上げられたというニュースを伝えていました。このクジラが、体長10メートルの、
「シロナガスクジラ」
で、シロナガスクジラの死骸が打ち上げられたのは「国内初」なんだそうです。
このニュースで、「リード部分」では、「250ニュース」と「news every.」共に、
「打ち上がったクジラ」
という原稿で、本文では、
「打ち上げられた」
と表現していました。
「打ち上がった」
という表現は、いかがなものかと思いますね。「打つ+上がる」という複合動詞の場合の違和感に関しては、「平成ことば事情180打ちあがる」で書いています。
その後「新聞用語懇談会放送分科会」では、「立ち上げる」に関連して話し合われたことがあります。(17年前ですが。)
*(花火・ロケットが)打ち上がる=2001年9月
「立ち上げる」は、最近よく使われるが、もとはコンピューター関係から出た用語。(労働組合運動関係から出た、という説もあるらしい。)乱発するのは注意。「組織化する」「設立する」などの言い換え(ボキャブラリーを増やす、表現の幅を広げるために)も考えてはどうか。ちなみに共同通信の原稿では1989年には0件だったのに、2000年には433件使われているということで、このところ(この10年ぐらいで)急速に普及した言葉のようです。関連で去年のロケットの打ち上げ中継や、今年の天神祭りの花火の中継で「打ちあがりました」という表現を他局で耳にしましたが、これはやはりおかしい。「打ち上げられました」とちゃんと言いましょう。
というような話し合いが行われ、その後『放送で気になる言葉2011』の36ページに立項されて、
「違和感のある表現」
として載っています。大体この表現が使われるのは、
「ロケット」「花火」
が多いんですが、「クジラの死骸」などの、
「(海岸への)漂流物」
にも使われるんですね。また一つ、勉強になりました。