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『道浦TIME』

新・ことば事情

6907「アデダス」

日本ボクシング連盟の山根明・終身会長(78歳・8月8日に辞任表明)の話し方には、独特のものがあります。自分の名前をフルネームで、

「山根明が、何か落ち度があるんですか?」

「山根明が、改革を全部やって来たのです!」

というように呼ぶのも独特。「政治家」はよく、こういうしゃべり方をしますけどね。

特に最初の頃に気になったのは、ボクシングのグローブの販売に関する疑惑の際に出て来たグローブのメーカーとしての、

「adidas(アディダス)社」

のことを、

「アデダス」

と言っていたことです。「天気予報」の、

「アメダス」

のような感じで発音していました。

「ディ」

が言えないのでしょうか?昔の人やお年寄りは「拗音」(この場合は「ディ」)を言えないということは、よく耳にしますが、ちょうどこの発言を聞く前に読んだ、梅花女子大学の米川明彦教授の新著『ことばが消えたワケ~時代を読み解く俗語の世界』(朝倉書店)の中に、こういう記述がありました。

「時代にあまり関係なく、高齢者の生理上、発音の退化現象として使われる語。また、時代に関係して以前ある発音がなかったために新たに生じたその発音ができず、類語で代用する語。たとえば、『テーシャツ』『テッシュ』『デズニーランド』のように発音する高齢者がいる。これなどが老人語である。『ティ』『ディ』は『テ』『デ』になる。」(76ページ)

つまり、山根会長(78)のいう「アデダス」は、

「老人語」

なのですね。「78歳」ですし、そこに異議を唱えるつもりは全くありませんが、あんなに堂々と使われると、少し笑ってしまいました。

私も、あと20歳ほど年を取ったら「アディダス」とは言えなくなるんでしょうか???

(2018、8、8)

2018年8月 8日 18:07 | コメント (0)