新・ことば事情
6901「ヴィーガン、ビーガン」
平成ことば事情6835「ヴィーガニズム」の関連です。
この間「ヴィーガニズム」について書いたときに、川崎市の西尾さんから、こんな長文のメールを頂いてました。
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こんにちは。川崎の西尾です。
「ヴィーガニズム」よりも、「ヴィーガン」または「ビーガン」のほうが通じると思います。数年前からよく聞くようになりました。
「ヴィーガン」(完全菜食主義者)⇔「ヴィーガニズム」(完全菜食主義)
「ベジタリアン」(菜食主義者)⇔「ベジタリアニズム」(菜食主義)
ベジタリアンにもいろいろレベルがあって、乳・乳製品・卵は食べるという、
「ラクト・オボ・ベジタリアン(lacto ovo vegetarian)」
が多数派とのことですが、「ヴィーガン(vegan)」は、動物性食品は一切食べないだけでなく、動物由来の製品も利用しないというレベルです。
医薬品や化粧品や身の回りの工業製品にも、動物由来の物質が見えない形でいろいろ使われていますが、どこまで厳密にどうやって確認しているのか、ひとごとながら気になります。ちなみに、英和辞典によれば、「ヴィーガン(vegan)」は「ベジタリアン(vegetarian)」の短縮形とあります。何のことはない。
*『小学館 ランダムハウス英和辞典 第2版』(2010.7.7)
「vegan」n. 絶対菜食主義者. 卵,チーズ,牛乳なども取らない.
adj. 絶対菜食主義(者)の. [1944 VEG(ETARI)AN]
*『研究社 新英和大辞典 第6版』(2002.3)
「vegan」n. 厳格な菜食主義者.
adj. 厳格な菜食主義(者)の.[《1944》《短縮》←VEGETARIAN]
*『研究社 英語語源辞典 初版』(1997.6.11)
「vegan」n., adj, 《1944》極端な菜食主義(者)の. (短縮) ←VEGETARIAN
ネット検索すると、「vegetarian(菜食主義者)」の語源は、英語の、
「vegetable(野菜)」
ではなく、ラテン語の、
「vegetus(活気のある;元気な)」
だという記述があります。研究社の『英語語源辞典』によれば、ラテン語の「vegetus」を語源とする古語の、
「vegete(活力のある;元気な)」
から、植物的成長を意味する、
「vegetate・vegetative」
などの語が生じ、16~17世紀には、野菜・植物の意味では、
「vegitative」の短縮形「vegitive」
が一般的に用いられたとあります。
現代語の野菜「vegetable」は、その「vegete」+接尾辞「able」ですから、元をたどればラテン語の「vegetus」に行き着くわけで、
「『Vegetable』も『vegetarian』も語源は同じ」
ということになりますね。
Google検索では(2018/06/15)
*「vegetarian」=1億4200万0000件
「ベジタリアン」= 942万0000件
「ヴェジタリアン」= 5万6500件
*「vegan」=1億2500万0000件
「ヴィーガン」=477万0000件
「ビーガン」 =251万0000件
*「vegetarianism」= 712万0000件
「ベジタリアニズム」= 1万5500件
「ヴェジタリアニズム」= 282件
*「veganism」 =634万0000件
「ヴィーガニズム」= 1万7900件
「ビーガニズム」 = 3160件
*「菜食主義」=45万7000件
「菜食主義者」=40万0000件
*「完全菜食主義」=16万6000件
「完全菜食主義者」=6万7100件
*「絶対菜食主義」 =3万8600件
「絶対菜食主義者」=3万4700件
*「純粋菜食主義」 =3010件
「純粋菜食主義者」=2460件
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と、大変詳しく調べてくださいました。西尾さん、ありがとうございます!
こういうメールをもらって1か月以上たった、きょう(8月1日)の「ミヤネ屋」で、酷暑の群馬県・館林市からの中継で中山リポーターが紹介した「アツイ食べ物」の中の一つに、
「ヴィーガン・ベジ・カレー」
というのが出て来ました。出た!「ヴィーガン」!「ベジタブル・カフェ・マハロハ」というお店で、お値段は税込み1100円とのことです。
なんか最近「ビーガン」「ヴィーガン」って言葉、出て来るのかなと思って、今日の夕刊を見ていたら、「日本経済新聞」(8月1日付夕刊)でまた「ビーガン」の文字を見かけました。見出しは、
「完全菜食1兆円市場に」「大豆でパテ・植物性ハム」「五輪へ日本も対応急ぐ」
でしたが、本文には、
「肉や魚に加え、乳製品も避ける完全菜食主義『ビーガン』の市場が拡大している。米国ではバイオ技術を使った本物そっくりの『肉』ビジネスが活況だ。」
と「ビーガン」が登場!説明文によると、
「ビーガン=完全菜食主義」
と訳されているようです。
そして、なんと米・マクドナルドは、2017年末に、ノルウェーのビーガン肉メーカー(そんなのがあるんだ!)と提携して、スウェーデンとフィンランドの2国で、
「マックビーガン」
を発売したとのこと。
日本でも東京五輪・パラリンピックを控えて、「ビーガン」に対応する動きが出て来たようで、横浜市の「ヨコハマグランドコンチネンタルホテル」は、7月に館内の全レストランで、「ビーガン向けメニュー」
を始めたそうです。イスラム教の信者に対する、
「ハラル(ハラール)」
とも似ていますね。
でも、よく考えたら、これって日本の仏教で出て来る、
「精進料理」「普茶料理」
と同じ(仲間)ではないでしょうか?「ヤマイモ」で作った「ウナギ」とか、和歌山の高野山で食べたことがあります。おいしかったです。また、JRの京都駅では以前、
「精進弁当」
を売っていて大好物だったのですが(たしか1200円か1300円)、何年か前から「販売中止」になっています。五輪を控えて「再販売」してくれないかなあ・・・。
しかし落ち着いてよく考えたら、本当に「肉や魚や乳製品は食べない」のなら、もう、
「肉や魚に似せた食品」
にして食べなくても、
「野菜を、野菜としておいしく食べる」
ことに専念したらどうだろうか?と思わなくもありませんね。