新・ことば事情
6889「放送での『未明』」
一般的には、
「未明」
という言葉は、
「夜明け(日の出)前の数時間」
を指すと思いますが、「放送」では、
「午前0時から日の出まで」
を指します。つまり「未明」が表す時間帯は、今の時期だと、
「一般」=午前4時~5時ごろ(今の時期。冬は午前5時~6時ごろか)
「放送」=午前0時~4時ごろ(今の時期。冬は午前5時ごろまでか)
ということで、
「放送のほうが『未明』が指す範囲が広い」
のです。
一応、国語辞典で「未明」を引くと、
*『広辞苑』=夜がまだすっかり明けきらない時。※天気予報では午前0時から午前3時頃までをいう
*『明鏡国語辞典』=まだ夜が明けきらないころ。明け方。
*『新明解国語辞典』=夜が明けきらない時分。
*『旺文社標準国語辞典』=夜がまだすっかりあけきらないとき。明け方。(類義語)払暁
*『精選版日本国語大辞典』=夜がまだすっかりあけきらない時。明け方。夜明け前。びめい。
*『デジタル大辞泉』=まだ夜が明けきらない時分。びめい。
*『三省堂国語辞典』=夜があけはじめる前の、まだ暗い時分。午前三時ごろをいう。(気象では午前0時から午前三時ごろ)
*『岩波国語辞典』=夜がすっかりとは明けきらない時分▽午前零時から三時ごろまでを指す専門語が無いので、報道などではこの時間帯にも代用する。
これこれ!『岩波国語辞典』さん、ナイス!これですよ。
そして私は、もう一つ理由があると思うのですね。それは、
「深夜」
ということにあります。放送のニュースでは、極力「深夜」は使いません。というのは、
「『深夜』は『2日にまたがる』ために、『ひとつながりの夜』にもかかわらず、時間帯によって『きのう深夜』と『きょう深夜』に分かれてしまい、『時制(日)』をコントロールできないから」
だと思われます。