新・ことば事情
6884「斜め上を行く」
最近(ここ数年)耳にするようになった表現に、
「(予想の)斜め上を行く」
があります。
「予想の遥か上を行く」
ならば以前から使われていましたが、新しいポイントは、
「斜め」
ですよね。なんで「斜め」なんでしょうかね?
「真上」ではなく「斜め上」と言うと、なんか、
「先を行っている感じ」
がしますね。折れ線グラフなどでは、横軸(X軸)は左がマイナス、右がプラス、「時間」は右へと進みます。そして縦軸(Y軸)は「量」を表す。「斜め上」というのは、
「斜め右上」
を表しているように思いますが、ちょっと「グラフ」を意識しているのでしょうかね?
グーグル検索(7月27日)では、
「斜め上を行く」=23万5000件
も出て来ました。トップに出て来たのが、
「最近よく見る、『斜め上』の意味がわからないので調べてみた」
という、そのものズバリのサイト。それによると、「予想の上を行く」のではなく、
「常識的には予想もつかないような反応で、こちらの度肝を抜く」
ということなのだそうです。知らなかった!グラフ。関係ないやん!「斜め」というのは、
「全く別の角度から」
ということなのですかね?
そして、発生元は、1995年から1997年まで『週刊少年ジャンプ』に月に1度のペースで連載された冨樫義博さんのSFコメディマンガ、
『レベルE』
だと書かれていました。(必ずしも、この漫画が初出ではない、とも書かれていましたが)
そうすると、もう20年以上使われているということか。それにしては最近、よく目にしたり、耳にしたりしますねえ。ブレークしたのかな?
これもネットの『実用日本語表現辞典』には、
*「斜め上」=「予想を覆す、想定し得る範囲を超越しているような状況や発想を形容する俗な言い方。誰も思いつかなかった事柄、あるいは単に理解不能な事柄などを指して用いられる。元々はマンガ作品の中で用いられた言い回しが、インターネットスラングとして浸透、定着したもの。」
とありました。あ、そうかその意味では、
「予想を裏切る〇〇」
と似ていますね。この「裏切る」は、
「良い方向に裏切る」「予想もできなかったほど良い」
という「プラスイメージ」の表現ですものね。これについては「平成ことば事情501裏切る」(2001年)「平成ことば事情1374裏切る2」(2003年)に書きました。
この意味での「ななめうえ」は、『三省堂国語辞典(第7版)』にも、まだ載っていなかったです。