新・ことば事情
6881「工場を全焼か?工場が全焼か?」
7月20日のお昼のニュースを読み終えた、2年目の岩原大起アナウンサーが質問してきました。
「この火事の原稿なんですが、助詞は『を』でいいんでしょうか?それとも『が』が正しいんでしょうか?」
と見せられた原稿に目を通すと、
「いずれも木造の2階建て住宅と隣接する工場を全焼しました」
とありました。これを読むと「を」でも「が」でもOKのように思えます。
違いはどこにあるのか?そこで、こう答えました。
「これは、『住宅と工場』が主語で『焼けました』と『焼く』という動詞を強調したいなら『が全焼しました』と『が』を使う。しかし『火事で、全部焼けてしまった』という状態を『連用修飾』したいのなら『を』を使って『を全焼しました』とするだろうね。
ただ、その前の『いずれも木造の』というのは、書き言葉としては『あり』としても、『読み原稿』としてはダメだね。これは『木造の2階建て住宅と、隣接する木造の工場を全焼しました。』と『木造の』を因数分解的にまとめずに、分配した方が分かりやすいね。『焼く』か『焼ける』かで、その前の助詞も変わってくるということだね。」
と答えると、
「分かりました!」
と答えてくれました。
まとめると、
(1)「いずれも木造の2階建て住宅と隣接する工場を全焼しました」
=これの主語は「火事」。住宅と工場は「目的語」。
(2)「いずれも木造の2階建て住宅と隣接する工場が全焼しました」
=これの「主語」と言うか強調したい目的語は「住宅と工場」。
という違いなんですね。