新・ことば事情
6874「宵山」
今年4月に入社した読売テレビの新人アナウンサー
「澤口実歩さん」
が、7月14日土曜日のお昼のニュースで、
「初鳴き」
を行いました。「初鳴き」というのは、読売テレビにおいては、
「テレビで初めて『ストレイトニュース』を読むこと」
ですね。彼女は、他の番組やイベントにはすでに登場していますが「ストレイトニュース」を読むのは初めて。一人だけで全責任を持ってニュースを読む、時間管理も行う、しかもお昼のニュースは、結構「追い込み」で原稿ができることが多く、きっちり対応するのは難しく、責任重大なのです。
しかし、初めてにしては、大変落ち着いて、ニュースを読んでいました。
翌15日のお昼のニュースにも「連投」で登板していました。この日は「猛暑」のニュースの中で、
「きょうは祇園祭の宵山」
と読み、スーパーも「宵山」と出ていました。でもちょっと待って、「宵山」というのは「山鉾巡行が行われる7月17日の前夜・前日」
つまり、
「7月16日」
のことではないか?辞書を引いてもそう載っていますし、私の30数年のアナウンサー経験の中でもそうです。きょうは、まだ「15日」。つまり、きょうは、
「宵々山」
なのではないか!高石友也とザ・ナターシャーセブンが7月15日に行っていたコンサートは「宵々山コンサート」であって「宵山コンサート」ではありませんでした。
こういうミスも、最終チェック機関として、アナウンサーは気付いて防がないといけないんだ、という良い例になったなと思っていて、本人にもそのように伝えました。ところが!萩原アナウンス部長が後でやって来て、
「これ、私も立ち会っていたんですが、最近は、14日・15日・16日の3日間を『宵山期間』として『宵山』と称しているみたいなんですよ」
と言うではありませんか!
え?「拡大解釈」?それって、
「クリスマスイブが3日間ある」
ようなものじゃない。「クリスマスセール」は別に1か月やってもいいけど、それは、
「クリスマスが1か月ある」
というわけではない。「クリスマス」は、あくまで、
「12月25日だけ」
で、「クリスマスイブ」は、あくまで、
「12月24日だけ」
なのは当たり前ですよね。
「大晦日が12月29・30・31日の3日間ある」
ようなものじゃない。もしお寺さんがそう言って来たとして、それ、認められますか?除夜の鐘を3日3晩「108×3=324発」、撞くんですか!?煩悩ありすぎじゃないですか!
新たな解釈に新しい言葉を付けるならともかく、従来からある、
「宵山」
という言葉の解釈を「変更・拡大する」のは、いかがなものか?・・・というように私は思いますが、いかがでしょうか?少なくとも「放送の言葉」としては、採用するべきではないでしょう。
(追記)
7月22日の『読売新聞』に、
「後祭 ゆったり宵々々山 祇園祭」
という見出しが出ていました。本文は、
「京都・祇園祭は21日、後祭(あとまつり)の山鉾(やまほこ)巡行を3日後に控えた『宵々々山』を迎えた。」
ということで、「山鉾巡行」の「3日前」は、
「宵々々山」
なのですね。しかしそれと同時に、
「後祭りの宵山期間(21~23日)」
という表記もありました。京阪電車の京橋駅に出ていた看板にも、
「宵山」
という字の横に、
「14日(土)~16日(祝・月)」
と「3日間」の「期間」が記されていました。でも、
「『宵山期間』と『宵山』は、同じではない」
ということは、はっきり主張しておきたいと思います。
(2018、7、23)