新・ことば事情
6867「大雨・暴風のアクセント」
今回の西日本の大雨で「ミヤネ屋」ナレーターの松尾さんから質問を受けました。
「『大雨』のアクセントは、『オ/ーアメ』(平板)ですか?それとも『オ/ーア\メ』(中高)ですか?」
私は迷うことなく、
「オ/ーア\メ(中高アクセント)です」
と答えました。ちなみに、よく似た言葉の、
「暴風」
は、以前の『NHKアクセント辞典』では、
「ボ/ーフ\ー」(中高アクセント)
だけしか載せていなかったのですが、新しい『NHK日本語発音アクセント新辞典』では「中高」と併せて「平板アクセント」の、
「ボ/ーフー」
も載せています。(※これは「暴風雨」=「ボ/ーフ\ーウ」(中高アクセント)と「暴風」=「ボ/ーフ\ー」(中高アクセント)と区別をしたいという意図もあるようです。)
しかし「大雨」は、「新しいアクセント辞典」でも、この「中高アクセント」の、
「オ/ーア\メ」
しか載っていませんでした。
以下は、「14年前」の「2004年」に、NHK(当時)の原田邦博さんからもらったメールです。
『台風シーズンですが、NHKのアクセント辞典の「ボーフー」は、「暴風」「防風」ともに、「中高アクセント」しか採用していません。現場からは「平板」ではないかとの声もあがっています。『日本国語大辞典』では、標準式が「中高」、京式が「平板」となっていますが、
東京アクセントを優先する『新明解』では、なぜか①「平板」②「中高」となっています。
関西地区では、ごく普通に「平板」ではないかと推察しますが、いかがでしょうか。」
うーむ、確かに「京阪式=関西」では「平板アクセント」で、
「ボー/フー」「オ/オアメ」
と言いそうですね。でも起伏型の「中高アクセント」の方が「暴風」と「大雨」を強調できるから、
「放送では『中高アクセント』」がいい」
のではないかなあと思いました。
あ!それと、今回の西日本豪雨で「問題となった言葉」について書いているのですが、そのさいに「過去に書いたもの」を検索すると、出て来るのは
「2004年に書いたもの」
なのです。ということは、
「『平成ことば事情』から見た今回の災害は、2004年以来14年ぶりの規模」
と言えるのではないでしょうか?
(追記)
「暴風」のアクセントについては2016年2月と12月の用語懇談会で話し合われていました。その内容を以下に示します。
【2016年2月】
「暴風」のアクセントは、今は「ボ/ーフ\ー」という「中高アクセント」しか載っていないが、これだと「暴風雨(ボ/ーフ\ーウ)」と区別が付きにくい。これは『NHK日本語発音アクセント新辞典』では、どちらを採用したのか?
→結局これまで通り「中高アクセント」の「ボ/ーフ\ー」を①とし、「平板アクセント」の「ボ/ーフー」は②とした。というのも、NHKの全国のアナウンサーへのアンケート(重複回答)では、
・「ボ/ーフ\ー」(中高アクセン)=92%
・「ボ/ーフー」(平板アクセント)=46%
で、「掲載の基準」として「50%以下は(メーンでは)載せない」というのがあるので、それに従った。
というような説明と質疑応答がありました。
【2016年12月】
(日本テレビ)新NHKアクセント辞典は「データ主義」ということだが、全て「第1アクセント」が一番支持率が高く、「第2アクセント」はそれよりも低いというような順番になっているのか?
(NHK)「第1」と「第2」に「優劣の差」はない。「これまで載っていたかどうか?」も順番の要素になっている。例えば「暴風」のアクセントはこれまで「ボ/ーフ\ー」という「中高アクセント」しか載せていなかったが、今回の調査では、
・「ボ/ーフ\ー」(中高)=92%
・「ボ/ーフー」(平板) =46%
だった。50%に達していないが、「平板アクセント」の「ボ/ーフー」を2番目に載せたというようなこともある。
(2018、7、17)