新・ことば事情
6856「袂を分かつ」
きょう(2018年4月3日)、ビートたけしさんの事務所からの独立問題がらみで、森社長とたけしさんが、ビジネスパートナーではなくなったということを指して、
「袂(たもと)を分かった2人」
という表現が出て来ました。これに違和感が。
「袂を分かつ」
という終止形での言葉は言いますが、これは「古語」ですよね?現代語で「分かつ」ではないですよね?
そうすると活用させると、
「袂を分かちぬ」
「袂を分かちぬる2人」
になるのではないか?と。
「古語」でも、「現代語」の中に「定型」として残っている表現はありますが、それを「現代文の活用」をするのはルール違反ではないのかな?と思ったので、
「袂を分かつ 二人」
と、「分かつ」と「二人」の間を少し空けるテロップにしたのですが。
これはどんなもんでしょうか???
これに関して、6月の新聞用語懇談会放送分科会で議題に出して、委員の皆さんのご意見を伺いました。口火を切って答えて下さったのは読売新聞からオブザーバー参加の関根さんでした。
『常用漢字表に「分かつ」は載っているので「現代語」ともいえる。活用させると過去形は「分かった」で正しい。しかし「分かった」という過去形は「理解した」という意味の「分かる」の過去形というイメージがあるので、「分ける」意味の「分かつ」の過去形としては「違和感がある」という気持ちもわかるので、「袂を分かつことになった」と表現すればどうか。』
その後各社から、
(ABC)「袂を分けた」ではダメなのか?
(ytv)あくまで「袂を分かつ」という「慣用句」を使いたいみたいなので・・・。
(テレビ大阪)「関係を断った」のように言い換えてみてはどうか。「袂を分かった」で過去形は正しいとしても、「分かつ」はやはり「文語」だろう。
最後に、日本新聞協会の用語担当のご意見番・伊藤氏が、
『「袂を分かって」という「連用形」なら違和感はない。本来「文語」だが「常用漢字表」に載っている動詞としては、「間違える」の意味の「あやまつ」がある。これも過去形にすると「あやまった」になって「謝罪」しているような感じがして違和感がある。』
と意見を述べて、この議題はオシマイになりました。