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『道浦TIME』

新・ことば事情

6852「ワープロで書かれた遺書」

大阪・堺市で弟を殺したとして姉が逮捕された事件。弟はトイレで練炭自殺をしたように"偽装"されており、パソコンには「遺書」と思われる文章を書いたデータが残っていたそうです。これを伝える読売テレビのお昼のニュースの原稿で、

「ワープロで書かれた遺書」

という表現が出てきて、担当のアナウンサーが、

「『ワープロ』っていうのは、もう、ないんじゃないでしょうか?」

と質問してきました。つまり

「手書きではない遺書」

に関して、

「ワープロで書かれた遺書」

という表現でよいのか?という問題です。今やハード(機械)としての「ワープロ(ワードプロセッサー)」は、ほぼ絶滅しているので、

「『ワープロソフト』を使って、『パソコンで書かれた遺書』なのではないか?」

というのです。

思えば「筆」が入っていなくても「筆箱」、「下駄」が入っていなくても「下駄箱」、「スロット」しかなくても「パチンコ店」、「金属に字形を刻んだもの」で印刷していなくても「活字」と呼ばれていることや、「ワープロソフトを使っている」ことから考えると、

「『ワープロで書かれた遺書』という表現でも良いのではないか」

と私は思いますが、世の中的にはどうなんでしょうか?

実際の放送では、報道デスク判断で、

「パソコンで書かれた遺書」

になりました。その後、他社の放送を聞いていたら、

「パソコンで作成された遺書」

という表現もありました。

ただし、もし本当に「ワープロ」の機械で書かれていたら、それが大きな特徴となります(脅迫状などの場合)から、「ワープロ」としなくてはならないと思います。

6月21日の朝刊各紙は、

<読売新聞>

【見出し】「PCに入力形跡」

【本文】「パソコンに、弟のものとされた遺書の文言を入力した形跡があった。」

    「遺書は(中略)プリンターで印字されており、字体などから、パソコンの文書

作成ソフト『ワード』で作られたとみられる」

「遺書の文章と同じ文言が入力された形跡がみつかり、遺書が実家のプリンターで印刷された可能性が高いことがわかった」

「夫はパソコンで手紙を書かない。文面や言い回しも違う。」

<朝日新聞>

【本文】「パソコンで書かれた遺書」

<毎日新聞>

【見出し】「弟の遺書 偽造の痕跡」

【本文】「遺書には足立容疑者がパソコンで作成した痕跡が残っていることが」

「遺書には(中略)などと記されていた」

というような表現でした。

これに関しては、今度開かれる「新聞用語懇談会放送分科会」で、各社の意見を聞いてきますね!

(2018、6、28)

2018年6月28日 17:19 | コメント (0)