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『道浦TIME』

新・ことば事情

6838「整合性・対策を『図る』?『取る』?」

森友問題で財務省の決裁文書「書き換え」について、なぜ「書き換え」(つまり「改ざん」)をしたのか?という理由に関して、

「佐川理財局長(当時)の国会での発言との『整合性を取る』ため」

という文章が出て来ました。

私の「語感」によると、「整合性」は、

「図る」

だと思うのですが、

「整合性が取れない」

という「否定形」や、

「整合性が取れた」

「過去形」では言うので、

「『整合性を取る』も『あり』」

なのかなあとも思います。

手元の各辞書の「整合性」&「☆整合」を引いてみたところ、用例は、

『広辞苑』=「整合性がない」「整合性を図る」

『新明解国語辞典』=「整合性に欠ける」※「整合性」は「cosistency」(一貫性)の訳語(論理学で)

『語感の辞典』=「整合性に欠ける」

『精選版日本国語大辞典』=引用はあるが、この手の作例はなし

『デジタル大辞泉』=「整合性」は空見出しで「無矛盾性」を見よとなっていて、「無矛盾性」には用例なし。

『三省堂国語辞典』=「整合性に欠ける主張」

『明鏡国語辞典』☆=「整合性に欠ける」

『現代国語例解辞典』☆=「整合を保つ」「理論の整合性」

『岩波国語辞典』☆=「会則は整合している」「整合な~」

『新潮現代国語辞典』☆=用例なし。⇔不整合

ということで、

「整合性が無い」「整合性に欠ける」

といった「否定形」での用例が目立ちました。

また、「対策」を「取る」か?「講じる」か?これは、

・「取る」=「短期的、臨機応変の対策」

・「講じる」=「中・長期的な、組織的・体系立った対策」

というように使い分けができる気がします。

『語感の辞典』で「対策」を引くと、

「対策を練る」「対策を立てる」

という用例が載っていました。用語懇談会放送分科会の各社の委員の皆さんは、どう考えているか、4月に開かれた会議で聞いてみました。それによると、

(MBS)辞書に載っていれば扱う。「整合性がない」「整合性を図る」、「対策を講じる」をよく使う。

(NHK)きょう欠席したT委員が「日本語使用例データベース」の検索で調べた結果によると、「整合性」の後につながる言葉は、

(1) 保つ(2)図る(3)取る

の順。「対策を」については、

(1) 講じる(2)推進する(3)行う・・・(10)取る

の順だったとのこと。

(共同通信)1984年以降のデータベースでは「整合性を」は、

・「図る」=162件

・「取る」=102件

また「対策を」は、

・「取る」 =2253件

・「講じる」=2218件

だった。

(読売新聞)データベースで「整合性を」に関しては、

「取る:図る」=「3:1」

だった。コロケーション(言葉のつながり)では「対策を」の後は、もっと緩やかで、いろいろあった。

とのご教示を頂きました。皆さま、ありがとうございました。

(2018、6、13)

2018年6月14日 22:10 | コメント (0)