新・ことば事情
6830「差しつ差されつ」
6月12日に初の米朝首脳会談がシンガポールで開かれました。
しかし、この首脳会談の実施までには「やる」「やらない」という米朝双方の「駆け引き」があり、一時は開催が危ぶまれる事態にもなったのは、ご存じのとおりです。そういった経緯を紹介した「ミヤネ屋」のVTRのテロップをチェックしていたら、こんな文言が。
「差しつ差されつの攻防」
うん?これは表現がおかしいですねえ。「差しつ差されつ」というのは、
「酒を酌み交わす様子」
を表す言葉ですよね、言うまでもなく。
「ナイフで刺し合う」「攻撃し合う」
ということではありません。
アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長は、まだ一度も直接会ったことなどないのですから、酒を酌み交わしたということも当然ないでしょう。
米・朝が「会談をする・しない」という駆け引きのことは、
「虚々実々の駆け引き」
という表現が一番ピッタリだと思ったのですが、言葉がちょっと難しく、周囲の若い人に聞いても、
「そんな言葉、知りません」「初めて聞きました」
と言っているのと、「実々」というのが、「とても言いにくい」ので、結局、
「激しい駆け引き」
という表現にテロップも原稿も変えました。
それにしても、まだ、
「米朝会談」
という文字を見ると、
「桂米朝さん」
を思い浮かべてしまいます。
「米朝・小さん 人間国宝対談」
みたいな。またアメリカと北朝鮮の、
「両国の行方は」
という文字を見ると、
「大相撲の力士の『両国』」
を思い浮かべてしまいます・・・。