新・ことば事情
6828「連れ子2」
6月4日放送の読売テレビの「かんさい情報ネットten.」で「ドイツの赤ちゃんポスト」のリポートをしていました。そのナレーションで、横須賀ゆきの元アナウンサーが、
「連れ子」
という言葉を、
「つれご」
と「濁って」読んでいました。
「あれ、これは『つれこ』と『濁らない』のではなかったか?」
と思ってアクセント辞典を引いてみたところ、以前の『NHK日本語発音アクセント辞典』では、
「つれこ、つれっこ」
と「濁らず」でしたが、2年前に出た『NHK日本語発音アクセント新辞典』では、
「つれご」
と「濁った読み方」が先に載っていて、
「濁らない『つれこ』は『許容』」
になっていました。知らなかったあ!
過去の新聞用語懇談会で「連れ子」について話し合われたのは、私がチェックしている限りでは、3回です。
【2003年7月・放送分科会】
「連れ子(こ=濁らない)」という言葉は使っても言いのか?
→(NHK)=使わないようにしている。単に「子」とか、「母(父)親の子」というような表現方法。
(毎日放送)=言葉の響きに差別的な匂いがあるのでできるだけ使わないようにしている。
(読売テレビ)=たしかに差別的な響きはあるが、特に規制していない。去年だったか、尼崎で連れ子をせっかんして死なせるという虐待事件があったが、その時は使っている。「連れ子」ということが事件の一つの大きな要素になっている場合、使わざるを得ないこともあるのではないか。(委員の中にも「つれご」と濁ると思っている人が、かなりいたが、辞書ではどれを見ても「つれこ」。濁らない。)
【2008年9月・放送分科会】
「連れ子」=共同通信の記者ハンドブックでは「里親」「里子」は「使わない」となっている。言い換えは「母親の子」「○○さんの長男」など。しかし、事件報道で使うことはある。(各社)
【2012年10月(関西地区新聞用語懇談会)】
「連れ子」という表現は使っていいのか?(愛媛新聞)
→(毎日新聞)「よく使っている。『○○さんの長男』という表現も使う」
(共同通信)「差別的な意味では使わない」
ということでした。
たぶん「国語辞典」は「つれこ」と「濁らない」ほうが、まだ多いんじゃないかなあ。
そしてきのう(6月6日)、香川県から東京・目黒区に引っ越した5歳の女の子が、虐待を受けてことし3月に死亡した事件で両親が逮捕されましたが、亡くなった
「船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)」
は、逮捕された母・船戸優里容疑者(25)の「連れ子」でした。
このニュースを伝えた6月7日の日本テレビ「スッキリ」で森圭介アナウンサーは、
「つれご」
と濁って読んでいました。
父・船戸雄大容疑者(33)から虐待を受け、それを母は「見て見ぬふりをしていた」と。いたたまれません・・・。
なお、平成ことば事情694「連れ子」もお読みください。