新・ことば事情
6822「第5弾のアクセント」
6月6日の読売テレビ『かんさい情報ネットten.』で黒木千晶アナウンサーが、
「第5弾」
のアクセントを、
「ダ\イ・ゴ\ダン」
と読んでいました。そこで、
『「第5弾」のアクセントは、
×「ダ\イ・ゴ\ダン」→〇「ダ\イ・ゴ/ダン」
ですよ。』
とメールしたところ、
「ありがとうございます!今日たくさんこの言葉が出てくるので気を付けます。ご指摘ありがとうございます。」
と返事が来ました。そこでさらに、
『「第5弾」のアクセントの間違いがなぜ起きるかと言うと、意味の区切りが違うからです。
×「第5・弾」(×ダ\イ・ゴ\ダン)
〇「第・5弾」(〇ダ\イ・ゴ/ダン)
「ゴダン」は「5弾」「5段」共に「平板アクセント」で「ゴ/ダン」ですが、「5」を強調しようとすると、×「ゴ\ダン」になってしまうのではないかと思います。』
と送っておきました。
『NHK日本語発音アクセント新辞典』の巻末「数詞と助数詞のアクセント一覧表」には、「弾」は載っていませんが、
「段(階段など)」
「段(段位)」
の2種類の「段」のアクセント一覧が載っていますが、これも先ほど書いたように、共に「5段」は「平板アクセント」で、
「ゴ/ダン」
です。ただ、両方のアクセントを見ていると、面白いことに気付きました。あ、そのまま引き写しますね。アクセントが違う所を「赤」で塗ります。(アクセント表記は、道浦式斜線で)
【階段など】 【段位】
1段 イ/チ\ダン(頭高) ショ/ダン(平板)
2 ニ\ダン(頭高) ニ\ダン(頭高)
3 サ\ンダン(頭高) サ/ンダン(平板)
サ/ンダン(平板)
4 ヨ\ンダン(頭高) ヨ/ダン(平板)
(許容)ヨ/ダン(平板)
5 ゴ/ダン(平板) ゴ/ダン(平板)
6 ロ/ク\ダン(中高) ロ/ク\ダン(中高)
7 ナ/ナ\ダン(中高) シ/チ\ダン(中高)
(許容)シ/チ\ダン(中高)
8 ハ/チ\ダン(中高) ハ/チ\ダン(中高)
9 キュ\ーダン(頭高) ク/ダン(平板)
(許容)ク/ダン(平板)
10 ジュ\ーダン(頭高) ジュ\ーダン(頭高)
ということです。「段位」は「伝統的」なものが多いので、「伝統的な数え方」を使う傾向にあります。(4=ヨ、7=シチ、9=ク)
そして、全体のアクセントパターンを見ると、
「頭高アクセント」と「中高アクセント」
が多いことに気付きます。
「平板アクセント」
なのは、「階段等」では、
「3、4(許容)、5、9(許容)」
で、「許容」を除くと「3,5」だけです。しかも「3」は「頭高」も認めているので、
「単独で『平板アクセント』なのは『5』だけ」
です。「段位」のほうは、
「1、3,4,5、9」
ですが、「伝統的読み方」である「4、9」を除くと「1、3、5」。数字の「拍数」に注目すると「1拍」のものは、
「5だけ」
です。以上のようなことから、
「全体のアクセントパターンにつられて、本来『平板アクセント』の『5(ゴ/ダン)』も『頭高アクセント』になる傾向があるのではないか?」
と考えられます。よく知られたそういう傾向は、
「2月」「4月」
が本来は「平板アクセント」で、
「ニ/ガツ」「シ/ガツ」
であるにもかかわらず「5月(ゴ\ガツ)」「9月(ク\ガツ)」という「頭高アクセント」につられて、間違って、
「ニ\ガツ」「シ\ガツ」
と「頭高アクセント」で発音されることが多いことに似ているのかもしれませんね。