新・ことば事情
6817「大量か?多量か?」
「紀州のドン・ファン」野崎さんの遺体から検出された薬物を「ミヤネ屋」では、
「大量の覚醒剤成分」
と報じていますが、この「大量の」に違和感が。当然「成分」にかかる形容なので、
「多量の覚醒剤成分」
なのではないか?と思いました。これはどう違うのか?
数え方には、
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1個、2個というように数えられるもの(countable)=数
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1個、2個とは数えられないもの(uncountable) =量
があります。そして、それぞれの「量」の「多い・少ない」の表現には、
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少量<大量(数えられるもの=数)
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微量<少量<多量(主に数えられないもの=量)
を用います。つまり「少量」は「(1)(2)どちらにも用いられる」のです。だからその反対語は「大量」にも「多量」にもなりうるのではないでしょうか?
今回の場合の「覚醒剤の成分」の数え方は、当然(2)なので、
「多量の覚醒剤成分」
としたほうが妥当に思うのですが、いかがでしょうか?
もし、「覚醒剤の密輸」で、
「『パケ』と呼ばれるポリ袋に包まれた覚醒剤3キロ・末端価格で〇億円分をのみ込んで密輸した」
という場合は、「パケ」は「数えられる」ので、
「大量の覚醒剤」
となるでしょう。
以上は私の「語感」によるものですが、『日本語語感の辞典』 によると、
*「大量」=数や量がきわめて多い意で、会話にも文章にも使われる漢語。<大量生産><大量に出回る><大量に購入><大量の注文を受ける>★「多量」とは違い、数の多い場合にも使い、まとまった感じがある。「清濁併(あわ)せ呑(の)む大量の人」のように、度量の大きい意でも用い、その場合は古風な感じがある。
*「多量」=物の分量が多い意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。<出血多量><有無に多量の油が浮く><多量の薬物が検出される><多量の薬を服用する>★別に「多数」という語がある関係で、「大量」とは違い、良の多い場合に限って使う傾向があり、数については用いない。「少量」と対立。
とありました。大体、合ってたかな。
次の放送の分からは、
「多量」
にすることにしました。