新・ことば事情 (2018、6、5)
6814「充填豆腐の表記」
世の中の豆腐に「2種類ある」と気付いたのは、10年ぐらい前です。
え?そんなの生まれた時から知ってるって?それは、
「冷奴」と「湯豆腐」
のことだろうって?いえ、「料理法」ではないんです。じゃあ、
「木綿豆腐」と「絹ごし豆腐」
のことだろうって?違います。たしかに「製造法」のことなんですが、私が気付いたのは、
「充填豆腐」と「それ以外」
という意味での「2種類」です。
まず確認ですが、昔からの製法で作る最も一般的なのは、
「木綿豆腐」
これの作り方を「全国豆腐連合会(全豆連)」のサイトによると、
「まず豆乳を凝固させ、それを崩します。そして豆腐に取り込まれなかった水分や油分(上澄み=「ゆ」という)を取った凝固物を柄杓(ひしゃく)などで型箱に盛り込む。型箱は孔があいたものを用い、箱の中に(木綿の)布を引いておき、凝固物がほぼ一杯になったら布を覆い蓋をして上から重しを乗せ圧力を加える。これにより箱の穴から「ゆ」が出てキッチリ とした豆腐が成型される。これを水槽に取り出し水晒しを行い、一定の大きさに切り分けると『木綿豆腐』の出来上がり。その名前は従来、型箱の中に木綿の布を引いていたため、豆腐の表面にその布目が付いていたことに由来している」
一方、
「絹ごし豆腐」
の作り方はと言うと、「木綿豆腐」のように寄せ桶の中での撹拌・崩しや型箱での圧搾を行わず「ゆ」を取ることをしません。
「熱い豆乳を凝固剤を入れた、穴のない布を引かない型箱に直に一気に流し込む。流し込みの勢いで凝固剤が均等に混ざる。一定時間静かにしておき固める。その後の型出し、水晒し等は木綿豆腐と同様。『木綿』に対し、『絹』のように、あるいは『絹の布で漉(こ)したように』滑らかでキメ細かい肌目をしているため『絹ごし』の名があるが、実際に絹で漉しているわけではない」
これに対して、
「充填豆腐」
というのは、
「絹ごし豆腐と同様の滑らかさがあり『充填絹ごし豆腐』とも称する。製法は、豆乳を一旦冷やし、凝固剤と一緒に1丁ずつの容器に注入(充填)・密閉し、加熱して凝固させる。型箱に入れない、水晒しをしないことや、1丁ずつカット(切断)しない。他の豆腐を『カット豆腐』とも言う。充填豆腐の製法は、機械化による流れ作業の大量生産に適しており、戦後の機械化の進展に伴い生まれた豆腐。 また豆乳充填・容器密閉後、加熱凝固させるので、その間に殺菌が行われるため、日持ちの良いのも特長」
とのことなのです。
先日、その「充填豆腐」の商品の包装に記された「表記」が、なんと、
「4種類」
あることを見つけました。すなわち、
「充填豆腐、充てん豆腐、充てんとうふ、充填とうふ」
です。
「木綿豆腐」「絹ごし豆腐」に比べると、まだ新しい「豆腐」なので、表記が一定していないのかもしれませんね。
『三省堂国語辞典』の「充填」の項目にも、「充填豆腐」は載っていませんでした。