新・ことば事情
6812「食べた過ぎる・天使すぎる・感謝しかない」
ツイッターで、こんな記述を見かけました。20代の女性の手によるものです。
「麺類 食べたすぎるんだけど。」
この意味は、
「麺類、めっちゃ食べたいんだけど。」
ですね。
また、こんな記述も見かけました。
「感謝しかない。」
この意味は、
「ただただ感謝。ひたすら感謝」
ということですね。
ちょっと似てる気がするな、この使い方は。
(2017、8、16)
(追記)
2017年8月2日の朝日新聞の言葉のコラム「ことば広場」で「○○過ぎる」について取り上げていました。松本理恵子記者の執筆です。それは、
「新しいほめ言葉?『〇〇すぎる』特別な思いの表れ」
と題したコラム。例として挙げているのは、
「天使すぎるアイドル」「青春すぎる漫画」
で、これらは「2008年ごろ」に話題になった、
「美人すぎる市議」
(2007年に青森県八戸市議に初当選し、「美人すぎる市議」と話題になった藤川優里さん)
あたりから使われるようになったのではないか?と記しています。これは私も2010年1月25日に「平成ことば事情3825美しすぎる」で書いています。
しかし「天使すぎる」と名詞につなげたり、「好きすぎる」とほめる際に使う用法には、違和感を持つ声も聞かれると。たしかに。
これに対して大阪大学の由本(ゆもと)陽子教授(理論言語学)は、
「形容動詞にもなる名詞とつながるのは『幸せすぎる』のように以前からあり、規則から逸脱したものではない。違和感を生むのは、形容動詞になり得るような性質を表す名詞なのかの判断に個人差があるからだろう。」
と述べています。由本教授は、
「神戸らしさの程度を表す意味を込めて、本の題名に『神戸なお店』とつける現象と同じ」
と説明しています。私は両方、違和感がありますけどね。でもたしかに「時代を表す表現」「イマドキの表現」なのかもしれません。
松本記者のこの記事は「紙」の紙面だけではなくて、ネットにも載っていました。【ことばをフカボリ:4】(2017年10月3日)そこにはもう少し詳しい情報も。
「天使すぎるアイドル」
と呼ばれているのは「橋本環奈さん」だそうです。なるほど。
本来は「遅すぎる」「目立ちすぎる」のように「好ましくないもの」に使っていた「〇〇すぎる」を、「プラス表現に使うところ」が新しく、また違和感を覚える人もいるのだと。
そして(他局の番組ですけど)最近では、タイトルにズバリ掲げた、
「なるみ・岡村の過ぎるTV」
というテレビ番組もあると紹介。
「想像を超えた」「世の中の常識を逸するモノや人」
を紹介する朝日放送のバラエティー番組です。まあ朝日新聞は系列ですからね。仕方ないか、紹介しても。ここで松本記者は、
『新しい「すぎる」の使い方からは、「とても」や「非常に」で表しきれないくらいに感情が大きく動いたことを訴えたい思いも感じます。インパクトのあるものが尊ばれる時代。自身が受けた衝撃をネット上などで強調して伝えようとする、イマドキ特有の表現とも言えそうです。』
とまとめていました。
納得。
でも、私は使いません。
※1年近くほったらかしにしていたものを、書き継ぎました。