新・読書日記 2018_073
『想いの奇跡1975-2013』(塩野七生、新潮文庫:2018、2、1)
タイトルにあるように、塩野七生さんが1975年から2013年までに書いたものを集めたもの。40年近い作家生活の中で記されたものだが、読んでみると、若い頃からその姿勢は一貫しているように思う。
若い頃からイタリアに住んで、年に何回か日本に「来日」する中で、「日本人でありながら、日本人ではない視点」を持てるようになったところに、彼女の「価値」があると思う。ずいぶん過去に書いた文章から最近書いたものまでを、年代に関係なく、いくつかのテーマ別に分けている。章ごとのエッセイの数は、
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地中海に生きる」=19編
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日本人を外から見ると」=5編
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ローマ、わが愛」=7編
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忘れえぬ人びと」=11編
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仕事の周辺」=5編
というのを見ればわかるように、一番ボリュームがあるのが「第1章 地中海に生きる」だ。塩野七生ワールド全開!時代を超えて、地中海と生きてきた塩野さん。ちなみになぜ「七生」という名前が付けられたかと言うと、誕生日が「七月七日」だったからだそうです。「第5章」の「忘れえぬ人々」に出てきた政治学者の故・高坂正堯さんとの交流は新鮮だった。また映画監督のフェデリコ・フェリーニとの交流。イタリアの貴族ってこんな感じなんだあと。本当は「19世紀の人」だったのかなフェリーニって。
「はじめに」にあたる「読者へ」の3行目に、
「押しも押されぬ存在」
という表現が出てきて、塩野さんほどの大作家でも、こういう書き方をするのかと。(正しくは「押しも押されもせぬ」)
また、誤植も1か所発見。219ページ14行目。
×「法王教書を見に行く。」→◯「法王禁書を見に行く。」
~その1行前に「法王禁制の書にあげられた。」とあり、2行後には「法王禁書」とあるので、やはりこの「教書」は誤植でしょうね。