新・読書日記 2018_060
『知的ヒントの見つけ方』(立花隆、文春新書:2018、2、20)
月刊誌『文藝春秋』の巻頭コラムを集めたもの。以前(2014年10月)に出た『四次元時計は狂わない』(文春新書)が、著者71歳から74歳のときに書いたもので、その後3年かけた書いたものを集めたのが本書。立花隆は一貫して「知的ヒント」を見つけては、調べて書いて来た。『僕はこんな本を読んで来た』とか、この『知的ヒントの見つけ方』でも「私はこう生きて来た」という「人生の軌跡」を綴った物ですねえ。そういう意味では「生きながらにして、常に遺書を書いているような感じ」
だなあ。月刊誌で毎月読むのはなんか面倒なのだけど、こうやってまとめて読んだ方が、ありがたみがあるというか、頭に入ってくる感じがしますね。300ページの内の最後の50ページほどは『文藝春秋special2015年冬号』に載せた講演録で「特別講義」になっています。ちょっと文体が違います。
また「はじめに」は、今年に1月の『広辞苑・第7版』の発売のことが書かれているので、一番新しく書いた物でしょうね。そこで、『広辞苑』の記述で「間違い」を指摘された「LGBT」問題について触れています。それによると、ルーブル美術館のミロのヴィーナスなどのギリシャ時代古典期の傑作彫刻が並ぶ部屋のはしっこに、
「ヘルマフロディア」
と題された少年像があり(見たことあるかもしれないが、覚えていない)この像は、
「両性具有の像」
なのだそうです「ヘルマフロディア」というのは、
「ヘルメス神(男神)とアフロディテ神(美の女神のヴィーナス)」
が合わさった神様なのだそうです。
また、哲学者のデカルトが最晩年に、スウェーデンのクリスティーナ女王に招かれて女王の哲学教師になったが、このクリスティーナ女王が両性具有者だったことが、のちに明らかとなったそうだ。ローマ法王庁に残っているそのことを書いた書類には、
「ヘルマフロディテであったクリスティーナな女王に関する書類」
と記されているそうな。つまり、その時代から「LGBT」というものはあったのだなあという話。『広辞苑』には、こんなに詳しくは載せられないだろうけれど。
千葉県野田市にある「鈴木貫太郎記念館」にある「最後の御前会議」(白川一郎画伯・画)を一度見て見たいと思った。
また、先日、映画『ウィンストン・チャーチル』を見たのだが、その中で出て来た「ダウニング街10番地」(首相官邸)の地下にある「マップルーム」(参謀本部と直結した通信連絡本部)、キャビネット・ウォー・ルーム(戦時閣僚会議室)について立花隆は書いていて「あれのことか!」と、すぐに思い当った。これも実物を一度、見に行っててみたいと思った。見学できるそうだ。ロンドンまで行かないと駄目だが。
2016年1月号からは、
「最近政府高官の口から、アベノミスクの新・三本の矢だの、一億総活躍社会だの、GDP六百兆円だのといったあてにならない数字の羅列を聞かされる。日本はあの決戦算術の時代に戻りつつあるのではないかと心配だ。」(167ページ)
その心配は当たってしまっている・・・。
こんなに勉強になる一冊だが、例によって誤植も見つけてしまった。
・「これとズバりリンクしている」(6ページ9行目)
×「り」→○「リ」
・「次々に明きらかにされきた」(228ページ10行目)~「き」は現代の送り仮名では不要だが、昔は「き」が入ったので、ちょっと古い書き方。