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『道浦TIME』

新・ことば事情

6799「広島『向島』のアクセント」

愛媛・今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者が逃走し、広島・尾道市の

「向島(むかいしま)」

に潜伏しているとみられる事件に関して、系列の広島テレビから、

「『むかいしま』のアクセントは『平板アクセント』で読んでほしい」

という連絡があったそうです。それによると、

「(各局の)アナウンサーが『ム/カイ\シマ』と『中高アクセント』で間違って読んでいる。正しくは『平板アクセント』の『ム/カイシマ』だ!」

というクレームが広島県庁に続々届き、県庁から各局に「配慮のお願い」が来ているとのことで広島テレビでもアナウンサーは「平板アクセント」に統一しているそうです。

そこで読売テレビでも「平板アクセント」で読みましょうということになりました。

この連絡をアナウンス部に送ったところ、萩原アナウンサーから以下のような返事が。

『「○○○じま」と連濁していると、一概念の意識から平板になりやすいんですよ。「○○○しま」だと、ちょっとアクセントを付けておきたくなる。だから「むかいしま」は、感覚的にアクセント付けちゃいますね。』

これに対して私は、こう返しました。

『「しま」でも、「広島」「長島」は「平板」ですね。(三重の「長島スパーランド」は地元は「ナ/ガ\シマ」と「中高」になる。)「しま」でも、「淡路島」「佐渡島」「因島」は「中高」ですね。つまり「しま」だとアクセントを付けたくなるのではなく、「しま」の前の拍が「2拍」だと「平板」、「3拍以上」だと「中高」になるのが多い、ということではないですか?また、「中島」が人名だと「なかじま」と濁ると「平板」、「なかしま」と濁らないと「中高」。「中之島」は「3拍」でが「平板」。まあ、例外も多いと。』

ここで「ハッ!」と気付きました。

本当に陸地から隔絶されている「島」だと、その前が「3拍以上」の「淡路島」「佐渡島」「因島」「小豆島」「大三島」のように「中高アクセント」になるけれども、隔絶された島という形状よりも、すでに「地名」として定着している場所は、「島」の前が「3拍以上」でも「平板アクセント」になるのではないか。つまり、

「地名としての定着度が高い」

ということ。

「地名」としての定着度が高い「平板アクセント」の例としては、「シマ」では、

「中之島」(大阪)、「向島」(広島)

「ジマ」では、

「宮古島」(沖縄)、「都島」(大阪)、「向島(ムコウジマ)」(大阪)

といったところです。

(2018、4、19)

2018年4月19日 18:16 | コメント (0)