新・ことば事情
6794「一瞬」
4月11日付「朝日新聞」夕刊のコラム「ことばのたまゆら」で、朝日新聞元・校閲部長の前田安正さんが、
「現代人にない?『一瞬」の緊張感」
というタイトルの文章を書かれていました。
「『一瞬いいですか』と言って、長々と話をする彼。一瞬ってなんだ?」
で始まる一文です。
私も「一瞬」が「一瞬でない」ことについては、だいぶ前(18年前、「平成ことば事情134ひと昔・一瞬」)に書きました。
そうですよね!同感、同感。
しかし、実は最近は、
「これは、『敬意表現』の一種なのではないかな」
と思っています。気を使って「一瞬」と言っていると。でも、相手にとっては全然、敬意表現になっていないんですけどね。
それと「時間」に関して言うと、仏教用語の、
「刹那」
などは、
「微分的な極小時間」
を表しているのではないでしょうかね?つまり「一瞬」もう「微分・積分」なんて、40年以上使ったことはないんだけれども、考え方だけ。
『広辞苑』で「刹那」を引いてみたら、
*「刹那」=極めて短い時間。一説に、一弾指(指ではじく短い時間)の間に65刹那あるという。一瞬間。⇔劫
とありました。また、先日読んでいた立花隆の『知的ヒントの見つけ方』(文春新書)の中で、
「X線自由電子レーザー」
について書いてあり、それによると「X線自由電子レーザー」の波長は、
「オングストロームレベル」(1オングストロームが原子1個の大きさ)
で、しかも「パルス光」(パッパと点いたり消えたりする)で、その「パルスの幅」が
「100フェムト秒」(10兆分の1秒)
だと書かれていました。(274ページ)
これは、「究極の一瞬」ではないでしょうか?
また、テレビのコマ数ですが、同期のSカメラマンの話によると、テレビに関してはこれまでは、そして現在のHDテレビは「1秒30コマ」ですが、今、出て来ている「4K」「8K」テレビは、フレームこそ同じ「30コマ」なのですが、その中に「4K」は現行の「HD」の「4倍」の映像情報が、「8K]は「8倍」の映像情報詰まっているのだそうです。
「密度が濃い」
ということだそうです。
そうすると、これまでの「フレーム」(コマ)という考え方も、あまり意味をなさなくなってきているのかなという気もしました。
といったことを前田さんにメールしたところ、お返事があり、
「江戸時代の『塵劫記』に10のマイナス16乗が『瞬息』とあります。」
と教えてもらいました。これ「一瞬」ですね。「100フェムト秒」(10兆分の1秒)とどっちが「一瞬」なのだろうか?
「10のマイナス16乗」
というのは、
「10の10京分の1」
だな。(指を折って数えました。)
「1フェムト秒」=「10のマイナス15乗」
のようですから、
「瞬息」=「0、1フェムト秒」
となり、「X線自由電子レーザー」の「パルス光」の「1000分の1」ということか。
もう、わけが分からん。