新・読書日記 2018_054
『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎、光文社新書:2017、5、20第1刷・2017、9、25第9刷)
ハッキリ言って「バッタ」に興味はなかった。
もちろん、「食料を食べ尽くしてしまうバッタの被害を食い止めるには?」というようなことはとても重要だと思うが、自分から研究や調査を行おうとは思わない。虫は、どちらかというと苦手だ。子どもの時は「虫取り」もしたけど、大人になってからは、あまり触りたいとは思わない。最近は余り目にしなくなったが子どもの頃は天敵だったゴキブリとか、大学時代の下宿に出現したカマドウマなんて、もうホントにイヤでイヤでたまらなかった・・・でも世の中には、そんなバッタが大好きな人もいるんですよね。著者はバッタが大好きで、
「バッタに食べられたい」
という「ドM」な考えまで持っている、表紙の、
「仮面ライダーのできそこないのような恰好をした男」
が著者だが、これ「イラスト」だとずっと思っていたが、ある時よく見ると「写真」ではないか!なんだコイツは!?
本の帯には、
「バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。それが修羅への道とも知らずに・・・」
とある。「第11回新書大賞2018」や「第71回毎日出版文化賞」を受賞したということで興味を持ち、読んでみた。
おもしろい。
これは「バッタ版・深夜特急」ではないか!
ユーモアあふれる文体も、自らを客観視できる俯瞰した目を持っているからだと思う。
バッタを追いながらモーリタニアという国の人間を描き、その人間と人間の交流・・・
著者の「前野ウルド浩太郎」という名前の、違和感のあるミドルネーム「ウルド」というのは、別に彼がモーリタニア生まれなのではなく(秋田県生まれだ)、モーリタニアでの研究活動が認められて現地のミドルネーム「ウルド(○○の子孫の意)」を授かったものだ。それだけ「お互いの絆」が感じられるね。
また、「ポスドク」という立場の苦悩が、如実に描かれているというのも、学者や学者の卵でないと分からない世界だなあと思いました。
おもしろいやないか!オススメです!
参考までに「新書大賞2018」の「ベスト10」(9位が2つ)は、以下の通り。
【大賞】前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)
【2位】河合雅司『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(講談社現代新書)【3位】三谷太一郎『日本の近代とは何であったか 問題史的考察』(岩波新書)
【4位】水島治郎『ポピュリズムとは何か』(中公新書)
【5位】楠木新『定年後』(中公新書)
【6位】伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書)
【7位】金成隆一『ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)
【8位】藤原辰史『トラクターの世界史』(中公新書)
【9位】磯田道史『日本史の内幕』(中公新書)
【9位】亀田俊和『観応の擾乱』(中公新書)
トヨザキ社長によると「新書大賞」は、「中央公論新社が主催しているにもかかわらず、中公新書から出た本は一度しか大賞を受賞していません。外部の識者から投票を募るというシステムが生むフェアさが素敵な賞といえます。」だそうです。