新・読書日記 2018_053
『脳は回復する~高次脳機能障害からの脱出』(鈴木大介、新潮新書:2018、2、20)
著者の鈴木大介さんは1974年生まれのルポライター。「貧困女性」をテーマに取材し、『最貧困女子』『最貧困シングルマザー』という、世の中の光の当たりにくい人たちに関して取材し、足で本を書いてきたのを読んだ。「ああ、これは昔ながらのルポだな。すごいなあ。」と思って読んでいた。そしたら急に「脳梗塞」となったという。次に出た本が『脳が壊れた』だ。え!一体どうしたの?と思って読んだ。ホントに脳が完全に壊れたら、本は書けないよな?と思いながら。そうすると本当に脳が壊れたのだけれども、そこから懸命のリハビリを行って来た、と。その様子を書いている。だから『脳は回復する』のだ。つまり「ルポの取材対象を『自分自身』にした」のだ。そしてその後の様子。今度は取材対象を「周囲の人たち」まで、「奥さんまで」含めて、周りの様子から自分の様子を映し出す。もちろん、自分の内面も吐露するのだけれど、それだと「独りよがり」になる部分もあるから、そうではない書き方で回復の様子を描いていく一冊。若くして脳梗塞になって後遺症が残った人の「高次脳機能障害からの脱出方法」の手掛かりになる一冊。
そこで分かったことは、「これまで彼が取材して来た『最貧困女子』の中の『困った人たち』に見られた、理解の出来ない行動が、脳が壊れた今になって初めて分かった」と。
そんな人たちを、彼の奥さんは「脳コワさん」とネーミングした。かわいい。これも個性なんだね。本は、ちょっと話が長くて、途中はザッと読んだ部分もあるけどが、ユーモアを交えた文体は楽しい。頑張ってほしいです。
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