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『道浦TIME』

新・ことば事情

6799「広島『向島』のアクセント」

愛媛・今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者が逃走し、広島・尾道市の

「向島(むかいしま)」

に潜伏しているとみられる事件に関して、系列の広島テレビから、

「『むかいしま』のアクセントは『平板アクセント』で読んでほしい」

という連絡があったそうです。それによると、

「(各局の)アナウンサーが『ム/カイ\シマ』と『中高アクセント』で間違って読んでいる。正しくは『平板アクセント』の『ム/カイシマ』だ!」

というクレームが広島県庁に続々届き、県庁から各局に「配慮のお願い」が来ているとのことで広島テレビでもアナウンサーは「平板アクセント」に統一しているそうです。

そこで読売テレビでも「平板アクセント」で読みましょうということになりました。

この連絡をアナウンス部に送ったところ、萩原アナウンサーから以下のような返事が。

『「○○○じま」と連濁していると、一概念の意識から平板になりやすいんですよ。「○○○しま」だと、ちょっとアクセントを付けておきたくなる。だから「むかいしま」は、感覚的にアクセント付けちゃいますね。』

これに対して私は、こう返しました。

『「しま」でも、「広島」「長島」は「平板」ですね。(三重の「長島スパーランド」は地元は「ナ/ガ\シマ」と「中高」になる。)「しま」でも、「淡路島」「佐渡島」「因島」は「中高」ですね。つまり「しま」だとアクセントを付けたくなるのではなく、「しま」の前の拍が「2拍」だと「平板」、「3拍以上」だと「中高」になるのが多い、ということではないですか?また、「中島」が人名だと「なかじま」と濁ると「平板」、「なかしま」と濁らないと「中高」。「中之島」は「3拍」でが「平板」。まあ、例外も多いと。』

ここで「ハッ!」と気付きました。

本当に陸地から隔絶されている「島」だと、その前が「3拍以上」の「淡路島」「佐渡島」「因島」「小豆島」「大三島」のように「中高アクセント」になるけれども、隔絶された島という形状よりも、すでに「地名」として定着している場所は、「島」の前が「3拍以上」でも「平板アクセント」になるのではないか。つまり、

「地名としての定着度が高い」

ということ。

「地名」としての定着度が高い「平板アクセント」の例としては、「シマ」では、

「中之島」(大阪)、「向島」(広島)

「ジマ」では、

「宮古島」(沖縄)、「都島」(大阪)、「向島(ムコウジマ)」(大阪)

といったところです。

(2018、4、19)

2018年4月19日 18:16 | コメント (0)

新・ことば事情

6798「ポンペオか?ポペイオか?2」

「平成ことば事情6637ポンペオか?ポペイオか?」の続きです。

問題の「ポンペオ・ポンオペイオCIA長官」は、なんと、

「次期国務長官」

というさらなる重職に就くことになりました。このひと1963年12月生まれ。私より「2つ年下」です。「平成ことば事情6637ポンペオか?ポペイオか?」を書いた、ことしの1月9日の時点では、

「ポンペイオ」2社=日経新聞・NHK

「ポンペオ」 5社=読売新聞・毎日新聞・共同通信・MBS・ABC(テレビ朝日)

でしたが、これ(次期国務長官就任決定)を機に、表記は統一されていくのだろうなと思っていましたが、4月18日の夕刊各紙は、

・「ポンペオ」=読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・産経新聞・日経新聞

ということで、全国紙は全て「ポンペオ」でした。「日経新聞」は、

「ポンペイオ」→「ポンペオ」

に変更されたようです。文字数が少ない方が、新聞的には文字数が少なくて助かりますよね。しかし、4月18日午後7時の「NHKニュース」では、

「ポンペイオ」

のままでした。また、日本テレビとテレビ朝日もやっぱり「ポンペオ」だったので、4月18日時点で確認できたのは、

・「ポンペイオ」1社=NHK

・「ポンペオ」 9社=読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・産経新聞・日経新聞・共同通信・日本テレビ・MBS・ABC(テレビ朝日)

ということになります。

(2018、4、18)

2018年4月19日 15:37 | コメント (0)

新・ことば事情

6797「CarsとCardsの発音の違い」

ふと気になりました。

「車Carの複数形のCarsと、カードCardの複数形のCardsの発音は同じではないのか?」

何でこんなことを思いついたのかは分からないけど、何にせよ、そう感じたんですね。

それで調べて見ると、やはり同じような疑問を持つ人はいるんですね。答えから言うと、

「違います」

発音は「別」でした。スペルを見ると、

d

が入っているかどうかですから、このd」の発音が違いの決め手なのでしょう。

なぜか「日本ワーキングホリデー協会」というところのサイトで、発音の違いを分かりやすく説明していました。それによると、

「車」の「Cars」は「z」の音なので「ス」を濁らせた「ズ」の音だそうです。

一方、「カード」の「Cards」は「dz」の音なので 「ツ」を濁らせた「ヅ」の音だそうです。つまり、

Cars」=「カーズ」

Cards」=「カーヅ」

ということ。おんなじじゃねーか!と思わないこと。「昔の日本語」だと、この発音を聞き分けられて、発音もできたんだな。「四つ仮名問題」ですね。

さらにサイトでは「それぞれの発音の仕方の違い」を説明してくれています。

それによると、

「z」の発音は、舌を上顎につけないようにして「スーーーーー」と「息」を出し、この状態で声と共に息を出すと「ズーーーー」となるのだそうです。

一方のdz」の音は、まず「ツ」と声に出してみると、音が出る前に舌が上顎につく、その状態で一緒に声を出すと「ヅ」の音になるそうです。

なるほど、「ズ」よりも「ヅ」の方が、「息の出る隙間が狭い感じ」ですね。

舌の位置」が「上か?下か?」かな?

皆さん、一度やってみてください、さん、ハイ!

どうですか?分かりましたか?

(2018、4、18)

2018年4月19日 11:36 | コメント (0)

新・ことば事情

6796「ピューリッツアー賞か?ピュリツァー賞か?」

4月17日の「ミヤネ屋」の「250ニュース」で、「Me Too」など一連のハリウッドでのハーベイ・ワインスタイン氏の「セクハラ問題」追及の運動を伝えた「ニューヨーク・タイムズ」紙と「ニューヨーカー」誌が、

「ピュリツァー賞」

を受賞したと伝えました。その際に日本テレビは、

「ピューリッツアー賞」

というスーパー・ナレーションでしたが、読売テレビ側は、読売新聞社の『読売スタイルブック2017』の表記に合わせて、

「ピュリツァー賞」

でスーパーしました。4月17日の夕刊各紙は、

読売新聞、毎日新聞、朝日新聞、共同通信(産経新聞、日経新聞) とも、

「ピュリツアー賞」

でした。

グーグル検索(4月18日)では、

「ピューリッツアー賞」=   8490件

「ピュリツアー賞」  =31万7000件

でした。

(2018、4、18)

2018年4月18日 23:34 | コメント (0)

新・ことば事情

6795「その時、阪神大震災が」

4月16日の「かんさい情報ネットten.」の特集のナレーションで、

「その時、阪神大震災が発生」

というナレーションがあり、違和感が。というのは、「震災」は、

「地震によって引き起こされる災害全般」

をいうのであって、

「その時」

に起きたのは、

「(大)地震」

であって「(大)震災」ではないのではないか?と思ったのです。

いかがでしょうか?

(2018.4、17)

2018年4月18日 21:33 | コメント (0)

新・ことば事情

6794「一瞬」

4月11日付「朝日新聞」夕刊のコラム「ことばのたまゆら」で、朝日新聞元・校閲部長の前田安正さんが、

「現代人にない?『一瞬」の緊張感」

というタイトルの文章を書かれていました。

「『一瞬いいですか』と言って、長々と話をする彼。一瞬ってなんだ?」

で始まる一文です。

私も「一瞬」が「一瞬でない」ことについては、だいぶ前(18年前、「平成ことば事情134ひと昔・一瞬」)に書きました。

そうですよね!同感、同感。

しかし、実は最近は、

「これは、『敬意表現』の一種なのではないかな」

と思っています。気を使って「一瞬」と言っていると。でも、相手にとっては全然、敬意表現になっていないんですけどね。

それと「時間」に関して言うと、仏教用語の、

「刹那」

などは、

「微分的な極小時間」

を表しているのではないでしょうかね?つまり「一瞬」もう「微分・積分」なんて、40年以上使ったことはないんだけれども、考え方だけ。

『広辞苑』で「刹那」を引いてみたら、

*「刹那」=極めて短い時間。一説に、一弾指(指ではじく短い時間)の間に65刹那あるという。一瞬間。⇔劫

とありました。また、先日読んでいた立花隆の『知的ヒントの見つけ方』(文春新書)の中で、

「X線自由電子レーザー」

について書いてあり、それによると「X線自由電子レーザー」の波長は、

「オングストロームレベル」(1オングストロームが原子1個の大きさ)

で、しかも「パルス光」(パッパと点いたり消えたりする)で、その「パルスの幅」が

「100フェムト秒」(10兆分の1秒)

だと書かれていました。(274ページ)

これは、「究極の一瞬」ではないでしょうか?

また、テレビのコマ数ですが、同期のSカメラマンの話によると、テレビに関してはこれまでは、そして現在のHDテレビは「1秒30コマ」ですが、今、出て来ている「4K」「8K」テレビは、フレームこそ同じ「30コマ」なのですが、その中に「4K」は現行の「HD」の「4倍」の映像情報が、「8K]は「8倍」の映像情報詰まっているのだそうです。

「密度が濃い」

ということだそうです。

そうすると、これまでの「フレーム」(コマ)という考え方も、あまり意味をなさなくなってきているのかなという気もしました。

といったことを前田さんにメールしたところ、お返事があり、

「江戸時代の『塵劫記』に10のマイナス16乗が『瞬息』とあります。」

と教えてもらいました。これ「一瞬」ですね。「100フェムト秒」(10兆分の1秒)とどっちが「一瞬」なのだろうか?

「10のマイナス16乗」

というのは、

「10の10京分の1」

だな。(指を折って数えました。)

「1フェムト秒」=「10のマイナス15乗」

のようですから、

「瞬息」=「0、1フェムト秒」

となり、「X線自由電子レーザー」の「パルス光」の「1000分の1」ということか。

もう、わけが分からん。

(2018、4、16)

2018年4月16日 21:21 | コメント (0)

新・ことば事情

6793「京都府知事選挙のアクセント」

4月8日に行われた京都府知事選挙で、前・復興庁次官の西脇隆俊氏(62)が40万票余りを得て、31万票余りを得た元・京都府弁護士会副会長の福山和人氏(57)を破って初当選を果たしました。

翌日のお昼にそのニュースを読む山本隆弥アナウンサーが、質問して来ました。

「『京都府知事選挙』の読み方なんですが、どこで区切ればいいんでしょうか?僕は『京都・府知事選挙』って、これまで読んできたんですけど、他の人のを聞いていると『京都府・知事選挙』って読む人もいたり、バラバラなんですが・・・」

つまり、

(1)「キョ\ートー・フ/チジセ\ンキョ」=『京都・府知事選挙』

なのか、

(2)「キョ/ート\フ・チ/ジセ\ンキョ」=『京都府・知事選挙』

なのか?という問題ですね。これに加えて、全体をコンパウンドする(区切りがない)、

(3)「キョ/ートフチジセ\ンキョ」

もありますが。(今、4月16日NHK大阪放送局の男性アナウンサーは、このアクセントで全体をコンパウンドしていました。)

私は、

「(2)キョ/ート\フ・チ/ジセ\ンキョ」=『京都府・知事選挙』

ですね。理由は「知事選挙」がまずあって、「どこの知事選清か?」と言うと、「京都府」の知事選挙であると。そうすると切る所は「京都府」と「知事選挙」の間ですね。バランスも良いしね。

でもこれは、「何の選挙か?」「京都府知事」の選挙ということで、

「京都府知事の選挙」

と考えれば、

「キョ/ートフチジ・セ\ンキョ」

という様に、ほぼ「(3)と同じアクセント」になることも考えられますが、ちょっとコンパウンドするには、「センテンスが長い」気がします。

皆さんは、どう読まれますか?

(2018、4、16)

2018年4月16日 18:19 | コメント (0)

新・ことば事情

6792「こじる」

ツイッターで見かけた、古い電車の客車内の写真。その電車の窓枠の下に付いていたのが、

「センヌキ」

でした。ああ、そういえば、昔はあったなあ。最近、見たことないけど。

そこに「使い方」も記されていました。

「ビンを上にこじる」

え?「こじる」って何?

「こじあける」と「ねじる」が合わさったのかな?聞いたことがない言葉ですね。

「風邪がこじれる」

は聞いたことがあるけど。『広辞苑』を引いてみたら、なんと載っていました。

「こじる(抉る)」=えぐる。また、棒などをあてがってえぐるようにする。」

知らんなあ。「ほじる」はわかるけど。

『新明解国語辞典』も、

「こじる(抉る)」=モノのすきまなどに棒を入れてねじるようにする。

『明鏡国語辞典』は、

「こじる(抉る)」=隙間などに物をさし入れてねじる。(例)缶のふたをナイフでこじる」

『三省堂国語辞典』

「こじる(抉る)」=(ふたを取ったり、あけたりるために)すきまなどに物をさしこんで、強くねじるようにする。(例)ドライバーでこじって開ける。(「こじて」など一段にも活用する)

うーむ、普通に使われているのか。知らんなあ。

少なくとも私は使ったことのない言葉でした。勉強になりました。

(2018、4、13)

2018年4月14日 19:33 | コメント (0)

新・読書日記 2018_055

『フォークソングの東京~聖地巡礼1968―1985』(金澤信幸、講談社:2018、3、15)

著者の金澤さんは、編集者としての仕事の傍ら、

『バラ肉のバラって何?~誰かに教えたくてたまらなくなる"あの言葉"の本当の意味』((講談社文庫、2013)

『サランラップのサランって何?~誰かに話したくてしかたなくなる"あの名前"の意外な由来 』(講談社文庫、2015

という、とってもおもしろい本を書いている。両方読みました。「読書日記」に感想を書いたところ金澤さんの目に留まり、今回も新著を贈っていただきました。ありがとうございます。

これも、私の興味の「どストライク」の本なので、楽しみ楽しみながら読みました!しかし、金澤さんは私よりも6歳年上なので、時代の感覚が全くシンクロしているというわけではない。やはり子どもの時の「6歳」というのは、大きい。今となってはおんなじだけど。私が小6の時に高3だからね。(あ、うちの下の弟と私が6歳違いだ。)そういう意味で、私がフォークソングなどに触れて夢中になった時期と、金澤さんが夢中になった時期は少しずれているので、「知識」としては知っていても「時代の空気」は、当時は分からなかった。それをこの本で「学ばせてもらった」感じでした。しかし、それぞれの出来事を追いながら「コンサート・ライブ会場を中心とした場所」に注目し、その「場所」が現在はどうなっているかをフォローすることで、時代を超えた立体的なものとして話が立ち上がってきたように思います。いくつかの「場所」(新宿厚生年金会館や武道館など)は、私も実際に行ったことがあり、なおかつ大学時代に合唱団員として「ステージに立って歌った」こともある所だったので、その意味でも懐かしく興味深く読めました。

さだまさしの「木根川橋」も懐かしい。「はっぴいえんど」特に大瀧詠一の話なんかは、水道橋博士の本や中川右介さんの本でも読んでいたが、それとはまた違う側面、もっと初期の結成された当時の話は知らなかったので「そうだったのか」と勉強になりました。小田和正などとのからみも。もうこれは、フォークの「ときわ荘物語」やね!

1か所、「あれ?これは合っているのかな・誤植かな?」と思ったのは、

『「今はまだ人生を語らず」は80年にCD化され』(145ページ1行目)

この「CD登場」は、私の記憶では「1982年」だったと思うのですが・・・と、金澤さんに連絡したところ、

「1986年でした。重版がかかれば修正します」

とのことでしたので、皆さん、買ってください!重版かけましょう。


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(2018、4、7読了)

2018年4月15日 18:31 | コメント (0)

新・ことば事情 (2018、4、13)

6791「山崩れか?土砂崩れか?」

4月11日の未明に、大分県中津市耶馬渓町(やばけいまち)で、民家の裏山が崩れた事故で、6人の安否が不明でしたが、その日のうちに男性1人の死亡が確認されました。(翌12日に、さらに1人の死亡が確認されましたが、13日午前10時現在では、まだ身元が特定されていません。)この現象を指して、

「山崩れ」というか?「がけ崩れ」と言うか?

という問題で、この日(4月11日)の「ミヤネ屋」では、見出しは、

「山崩れ」

で、その後のサイドスーパーは、

「土砂崩れ」「山崩れ」

両方出て来ました。ナレーションでは、

「土砂崩れ」

で、ヘリコプター中継で、三浦隆志アナウンサーは、

「山が崩れた」

と表現していました。その後の「かんさい情報ネットten.」は、

「山崩れ」

と表記していました。4月11日の各紙夕刊は、

(読売)山崩れ

(朝日)山崩れ

(毎日)土砂崩れ

(産経)裏山崩落

(日経)山崩れ

でした。

4月11日の日本テレビ「every.」では、帯テロップでは

「大規模土砂崩れ」

で、右上のサイドスーパーは、

「裏山崩れ」

そして中継のアナウンサーとVTRのナレーターは、

「土砂崩れ」

と言っていましたが、翌4月12日の日本テレビ「スッキリ」の中のニュースでは、帯スーパーもナレーションも、

「山崩れ」

になっていました。NHKの夜9時のニュース・ウオッチ9」では、テロップ(サイドスーパー)もナレーションも、

「がけ崩れ」

でした。

4月13日のテレビ朝日のお昼のニュースでは、テロップもナレーションも、

「山崩れ」

でした。つまり、

「『山崩れ』が起こって『土砂が崩れた』」

わけです。一般的な「土砂崩れ」は、「山が崩れる」ほどの規模にまではいかないことが多いのですが、今回は、

「高さ100メートル、幅200メートル」

という大規模な崩落だったので、まさに、

「山が崩れた」=「山崩れ」

と言えるのでしょう。

NHKは、4月13日のお昼のニュースでもナレーションは、

「がけ崩れ」

で、スーパーは、

「土砂崩れ」

でしたが、あれは、こんもりと木が繁る「裏山」だったんので「がけ」ではなかったように思うのですが・・・。

亡くなった方に哀悼の意を表するとともに、安否不明の方が無事に見つかってくれれば・・・と祈ります。

2018年4月15日 12:35 | コメント (0)

新・読書日記 2018_054

『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎、光文社新書:2017、5、20第1刷・2017、9、25第9刷)

ハッキリ言って「バッタ」に興味はなかった。

もちろん、「食料を食べ尽くしてしまうバッタの被害を食い止めるには?」というようなことはとても重要だと思うが、自分から研究や調査を行おうとは思わない。虫は、どちらかというと苦手だ。子どもの時は「虫取り」もしたけど、大人になってからは、あまり触りたいとは思わない。最近は余り目にしなくなったが子どもの頃は天敵だったゴキブリとか、大学時代の下宿に出現したカマドウマなんて、もうホントにイヤでイヤでたまらなかった・・・でも世の中には、そんなバッタが大好きな人もいるんですよね。著者はバッタが大好きで、

「バッタに食べられたい」

という「ドM」な考えまで持っている、表紙の、

「仮面ライダーのできそこないのような恰好をした男」

が著者だが、これ「イラスト」だとずっと思っていたが、ある時よく見ると「写真」ではないか!なんだコイツは!?

本の帯には、

「バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。それが修羅への道とも知らずに・・・」

とある。「第11回新書大賞2018」や「第71回毎日出版文化賞」を受賞したということで興味を持ち、読んでみた。

おもしろい。

これは「バッタ版・深夜特急」ではないか!

ユーモアあふれる文体も、自らを客観視できる俯瞰した目を持っているからだと思う。

バッタを追いながらモーリタニアという国の人間を描き、その人間と人間の交流・・・

著者の「前野ウルド浩太郎」という名前の、違和感のあるミドルネーム「ウルド」というのは、別に彼がモーリタニア生まれなのではなく(秋田県生まれだ)、モーリタニアでの研究活動が認められて現地のミドルネーム「ウルド(○○の子孫の意)」を授かったものだ。それだけ「お互いの絆」が感じられるね。

また、「ポスドク」という立場の苦悩が、如実に描かれているというのも、学者や学者の卵でないと分からない世界だなあと思いました。

おもしろいやないか!オススメです!

参考までに「新書大賞2018」の「ベスト10」(9位が2つ)は、以下の通り。

【大賞】前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)

【2位】河合雅司『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(講談社現代新書)【3位】三谷太一郎『日本の近代とは何であったか 問題史的考察』(岩波新書)

【4位】水島治郎『ポピュリズムとは何か』(中公新書)

【5位】楠木新『定年後』(中公新書)

【6位】伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書)

【7位】金成隆一『ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)

【8位】藤原辰史『トラクターの世界史』(中公新書)

【9位】磯田道史『日本史の内幕』(中公新書)

【9位】亀田俊和『観応の擾乱』(中公新書)

トヨザキ社長によると「新書大賞」は、「中央公論新社が主催しているにもかかわらず、中公新書から出た本は一度しか大賞を受賞していません。外部の識者から投票を募るというシステムが生むフェアさが素敵な賞といえます。」だそうです。


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(2018、4、2)

2018年4月13日 15:59 | コメント (0)

新・ことば事情

6790「米朝のアクセント」

4月9日、落語家でタレントの月亭可朝さんが、急性肺線維症のため3月28日に亡くなっていたことが分かりました。80歳でした。もう80歳だったのか!その年齢にも驚きました。可朝さんというと私達の世代は知っていますが、若い人は知らんかなあ。

「♪ボインは、お父ちゃんのためにあるんや、ないんやで~」

という「嘆きのボイン」が有名ですが、落語家としては桂米朝さんに入門して、

「桂小米朝」(2代目)

の名をもらっていたが、後に改名したということは、知識としては知っていました。

ということで、このニュースの中で、師匠の、

「桂米朝」

という名前が出て来て、この「米朝」を、黒木千晶アナウンサーが、

「ベ/―チョ\ー」

というアクセントで読んだのを聞いた、現在「かんさい情報ネットten.」のフィールドキャスターをやっている大田良平・元アナウンサーが、

「アクセントはどれが正しいんでしょうか?僕は『頭高アクセント』で『ベ\―チョー』って言うんですけど」

と聞いて来ました。これに対して、

「標準語アクセントだと、黒木の『ベ/ーチョ\ー』という『中高アクセント』だろうな。『志ん朝』だって『シ/ンチョ\ー』と『中高アクセント』だろ。でも関西弁では『頭高アクセント』の『ベ\ーチョー』だろうね。また、近しい人たちは『平板アクセント』で『ベーチョー(師匠・さん)』ということもあるだろうね。標準語の『平板アクセント』だと『ベ/ーチョー』だけど、関西弁の場合は最初の『ベ』から全部の音が高い『平板アクセント』だけどね。」

と答えました。「頭高アクセント」の「ベ\ーチョー」と言うと、

「米朝首脳会談」

のような、

「アメリカと北朝鮮」

の略語のように、私などは感じてしまいます。

なお、可朝さんの「ボイン」の話に戻ると、

「ボイン」

という言葉は、日本テレビの『11PM』の司会をしていた大橋巨泉さんが、アシスタントをしていた朝丘雪路さん(津川雅彦さんの奥様)のバストに対して言った言葉だと言われています。今なら、

「巨乳」

でしょう。(朝丘さんも、現在82歳です。)

「野球は巨人、司会は巨泉」

と言っていた巨泉さんですから、「ボイン」よりも「巨乳」のほうが、フレーズ的にはピッタリきたのではないか?つまり、

「野球は巨人、司会は巨泉、雪路は巨乳」

下品だねえ~!などと言いながら。今なら「セクハラ」で「即、アウト!」ですね。

つまりは「時代が変わった」ということでしょう。40年以上、経ってるものね。合掌。

(2018、4、11)

2018年4月14日 12:28 | コメント (0)

新・ことば事情

6789「女人禁制2」

「平成ことば事情6786女人禁制」では「女人禁制」そのものについて論じましたが、ここにきて、

「読み方」

も、話題に上って来ました。

というのは、視聴者の方から

「『禁制』は『キンセイ』と濁らない。なぜ、濁って『キンゼイ』と読むのか?」

という質問・ご意見が、読売テレビの視聴者センターに数多く寄せられているというのです。それを知って、私は別の意味で驚いています。というのも私は、

「ニョニンキンセイ」

濁らずに読むと、モノを良く知った視聴者の方から、

「こんな読み方も知らんのか!勉強不足だ。これは『キンゼイ』と濁って読むのだ!」

というお叱りの指摘がたくさん来ると思っていたのです。そこで、あえてスーパーはもとより、パネルにまで「ルビ」まで振って、

「キンゼイ」

濁って読むようにしていたのです。

「女人禁制」という4文字の熟語としては、「宗教用語」的には、

「『キンゼイ』と濁る」

のです。

『NHK日本語発音アクセント新辞典』でも、アクセントの種類は2種類載っていますが、読み方は、

「キンゼイ」

「濁るもの」しか載っていません。

ただ、「女人」を外した「禁制」という単語に関しては、「禁制品」のように、

「キンセイ」

と濁りません。その意味では、「女人禁制」の「対語」として出て来る、

「男子禁制」

に関しては、後から作られた「造語・新語」であり、伝統も宗教的背景もないと思われますので、「キンゼイ」と濁る必要はないと判断し、

「ダンシキンセイ」

濁らないようにして、区別しています。

「女人」の本当の「対語」なら「男人」か「人」だと思います。逆に「男子禁制」を基にした「対語」を考えるなら「女人禁制」ではなく、

「女子禁制」

となるのではないでしょうか?この言葉なら、伝統もありませんし、

「キンセイ」

濁らずに読むほうが良いと思います。

『精選版日本国語大事典』「禁制」を引くと、

「きんせい(古くは「きんぜい」)」

とあるので、やはり「古く」は(=伝統のあるものの中には)、

「キンゼイ」

「濁るもの」があり、「女人禁制」(という言葉)は「伝統がある」という判断なのでしょう。

その項目の用例では「浄瑠璃・用明天皇職人鑑()」(1705年)の、

「けふの供養には、女の参詣きんぜいとこそ候つれ」

という、「濁る」形の、

「きんぜい」

が載っています。浄瑠璃ですから、そう「濁って発音」したのでしょう。

そして、『精選版日本国語大事典』の「女人禁制」の見出し「きんせい」濁っていないのですが、

(「にょにんきんぜい」とも)

と「濁ったもの」も記してあるし、用例の「謡曲・道成寺」は、

「1516年頃」

という「歴史があるもの」を挙げていました。

(2018、4、11)

2018年4月13日 21:26 | コメント (0)

新・ことば事情

6788「天使と悪魔」

「天使と悪魔」

というと、「ダン・ブラウンの小説のタイトル」のようですが、アメリカ・メジャーリーグの話です。ロサンゼルス・エンゼルスの「二刀流・大谷翔平選手」です。

3試合連続ホームランにピッチャーでも2勝。2勝目は7回までパーフェクト・ピッチング、打たれたヒットはわずかに1本って、スゴすぎる!

4月10日の読売新聞スポーツ面の見出しは、

「『悪魔的』フォーク12K連勝」

で記事を読むと、

「米メディアが『devilish(悪魔のような)」と形容したスプリットが効いた」

とありました。

「スプリット」

と呼ばれる変化球は、日本では、

「フォーク」

ですね。記事では、

「大谷は渡米後、この球を『スプリット』と呼んでいる。それは『こっちの表現に合わせただけ』。中身は日本ハム時代と同じフォークだ」

と書かれています。

この「『悪魔的』フォーク」という見出しを見て私は、

「悪魔的?エンゼルス(天使)なのに?」

と思ったんです。アメリカのメディアは絶対、

その対比を考えて表現している」

に違いない!

米カリフォルニア州アナハイムからこの記事を届けた「福井浩介記者」は、そこには全然触れてないんだよなあ・・・。残念!

(2018、4、10)

2018年4月13日 11:25 | コメント (0)

新・読書日記 2018_053

『脳は回復する~高次脳機能障害からの脱出』(鈴木大介、新潮新書:2018、2、20)

著者の鈴木大介さんは1974年生まれのルポライター。「貧困女性」をテーマに取材し、『最貧困女子』『最貧困シングルマザー』という、世の中の光の当たりにくい人たちに関して取材し、足で本を書いてきたのを読んだ。「ああ、これは昔ながらのルポだな。すごいなあ。」と思って読んでいた。そしたら急に「脳梗塞」となったという。次に出た本が『脳が壊れた』だ。え!一体どうしたの?と思って読んだ。ホントに脳が完全に壊れたら、本は書けないよな?と思いながら。そうすると本当に脳が壊れたのだけれども、そこから懸命のリハビリを行って来た、と。その様子を書いている。だから『脳は回復する』のだ。つまり「ルポの取材対象を『自分自身』にした」のだ。そしてその後の様子。今度は取材対象を「周囲の人たち」まで、「奥さんまで」含めて、周りの様子から自分の様子を映し出す。もちろん、自分の内面も吐露するのだけれど、それだと「独りよがり」になる部分もあるから、そうではない書き方で回復の様子を描いていく一冊。若くして脳梗塞になって後遺症が残った人の「高次脳機能障害からの脱出方法」の手掛かりになる一冊。

そこで分かったことは、「これまで彼が取材して来た『最貧困女子』の中の『困った人たち』に見られた、理解の出来ない行動が、脳が壊れた今になって初めて分かった」と。

そんな人たちを、彼の奥さんは「脳コワさん」とネーミングした。かわいい。これも個性なんだね。本は、ちょっと話が長くて、途中はザッと読んだ部分もあるけどが、ユーモアを交えた文体は楽しい。頑張ってほしいです。


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(2018、4、2読了)

2018年4月12日 21:37 | コメント (0)

新・読書日記 2018_ 052

『老後破産~長寿という悪夢』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫:2018、2、1)

来るべき将来に備えて今から心構えというか、こういうようにならない様に準備をしなくてはならない。そのための"予習"と思って読んだ。NHKの番組は見ていなかったのだが、おそらく番組以上に、具体的な描写は「客観的な感じ」に見える。「感性」ではなく「事実を客観的に理解させるような描写」である。

近い将来、こういった事態が日本を襲うことは分かっているはずだ。「政治」は、それを如何にソフトランディングさせるのか?そのために一体何をしてくれるのか?我々の税金を使って・・・。

まだ自分は「老後」じゃないから、少し他人事と思っていたが、よく考えたら、うち両親はしっかり「老後」だった・・・・。


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(2018、3、26読了)

2018年4月12日 09:36 | コメント (0)

新・読書日記 2018_051

『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(河治良幸、内外出版社:2017、9、1)

ワールドカップイヤーである(ロシア)

それなのにあと2か月で開幕!というところで、なんと日本代表監督(ハリルホジッチ)解任である。これは大変な事態なのに、あまりバタついていないのは、なぜだろう?あまり期待していないからではなかろうか?

それはさておき、著者は1973年生まれのスポーツジャーナリスト。

その彼が、5人の専門家に話を聞いて、

「どういうふうにテレビ中継の解説者の言葉を聞けばサッカーが解るのか?」

ということを聞き出すインタビュー本。その5人の専門家というのは、

反町康治・都並敏史・柄沢晃弘アナ(WOWOW)・後藤健生・中西哲生の5人。

このうち、柄沢アナウンサーは知り合い(同期)なので、ヨーロッパサッカーの取材・実況経験の長い彼がどのように答えるのか?に大変興味を持って読んだ。こんな本、出たのなら教えてくれれば良いのに!たまたま見つけて購入したんです。

彼はやはり「アナウンサー」だった。「解説者とどのようにチームを組んで、上手く盛り上げて話させるか?」というようなアナウンサー的視点の話で、共感が得られました。

他も「へえー」と思うような話が、たくさん引き出されていて、楽しかったです。


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(2018、3、28読了)

2018年4月11日 21:35 | コメント (0)

新・読書日記 2018_050

『建物と日本人 移ろいゆく物語』(共同通信社取材版、東京書籍:2012、6、26)

6年前に購入していて、ようやく読み通せました。ふんだんにカラー写真も載っているのだが、一つ一つのコラムが細切れになるので、読み通すのは意外にもなかなか難しい。最初に、先日(と言っても昨年末に)東京の博物館で見た安藤忠雄の十字架の「光の教会」(大阪・茨木市)が載っていたので、一気に読もうという気になった。

高松丸亀町商店街のガラスドームの天井や、五島列島の教会、東京都庭園美術館(旧・朝香宮邸)、沖縄の佐喜真美術館、宮崎・西の正倉院など、行ってみたいなと思った。

「建物」はやはり「人間の暮らしの歴史」を表すのだなと改めて思った。


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(2018、3、26読了)

2018年4月11日 08:33 | コメント (0)

新・読書日記 2018_049

『いつも日本語で悩んでいます~日常語・新語・難語・使い方』朝日新聞校閲センター、さくら舎:21018、3、10)

この本は「朝日新聞・朝刊」で連載しているコラム「ことばの広場」の2015年4月8日~2017年12月6日までに掲載されたものを書籍化したものだそうです。ああ、それなら毎週、コピーして切り抜いてスクラップしてるから全部読んでるし、本を買わなくても・・・とも思いましたが、やはり本になるとちょっと雰囲気が違うんですよね。それに新聞用語懇談会でご一緒している方たちが書いているので、これは買わなくては!と。

ちょうど「見開き2ページで1つのテーマ」なので、とても読みやすかったです。

章立てとしては5つ。

  1. 覚え違いしていませんか?~ことばづかいの死角

  2. どう書く?どう読む?~迷ってしまうことば対策

  3. ほんとうの意味は?~字源・語源がおもしろい

  4. 進化、それとも当然変異?~激動することばたち

  5. さらに磨きたい!~日本語感覚

というふうになっています。この手の本は、この「章立て」が、結構難しいんですよね。

大体読んでいるので、それほど目新しくはなかったんですが、「『真逆』の広がり」(116-117ページ)で、知り合いの法政大学の尾谷昌則先生が出て来て「お!」っと思ったり、私が知らない若い言語学関係の先生のお名前が結構、出て来たので、勉強になりました。


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(2018、3、26読了)

2018年4月10日 23:32 | コメント (0)

新・ことば事情

6787「混じると混ざる」

4月10日お昼の日本テレビ系「ストレイトニュース」で、元NHK・山形放送局記者の強姦致傷事件の初公判の様子を報じていました。その中で、現場に残されたDNA型が、被告のものと別のものが、

「混ざっていた」

とスーパー(テロップ)には出ましたが、裁判所前から中継で伝えていた地元・山形放送のアナウンサー(だと思う。上手だった)は、

「混じっていた」

と話していました。「混ざる」と「混じる」はどう違うのでしょうか?

「意味上」はほとんど、

「違わない」

ですね。でもそれを、

「おんなじやないか!」

と切り捨てしまえば、進歩はありません。考えてみましょう!

私の語感で言うと、

*「混ざる」=意図せずして入ってしまう

*「混じる」=意志を持って入っていく

という違いがあるように思うのですね。

こんなときは『語感の辞典』かな。・・・載ってた!

*「混ざる」=ある種類のものに他の種類のものが少なからず入り込んで一体化する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的和語。()二つの色が混ざる、紅茶にミルクが混ざる ※「混じる」より混合比が大きい感じがある。

*「混じる」=別種のものが混合する意で、くだけた会話から硬い文章まで広く使われる和語。()酒に水が混じる、赤に黄色が混じる、外国人の血が混じる、主観が混じる ※水上勉の『雁の寺』に「つきあげてくる嬉しさとかなしみがまじって膝を固くした」とある。「交じる」と違い、異種のものが融けあって判別しにくくなった状態の場合に用いる表記。なお、「不純物が混じる」のように好ましくないものの場合には「雑じる」と書く例もある。

ということで、ポイントは「混ざる」の注意書きにあった、

『(「混ざる」は)「混じる」より混合比が大きい感じがある』

でしょうね。言われて見れば、そんな感じもしますね。

いずれにせよ、「混ざる」と「混じる」は、微妙にニュアンスが異なりそうです。

意味は同じ。

(2018、4、10)

2018年4月11日 18:27 | コメント (0)

新・ことば事情

6786「女人禁制」

4月4日、京都府舞鶴市で行われた大相撲春巡業・舞鶴場所で、挨拶に立った多々見(たたみ)良三市長が、土俵上で心筋梗塞のため倒れました。命を助けるために、知り合いの看護師の女性が土俵上に挙がったところ、若い行司が、

「女性は土俵から下りてください」

と再三アナウンスしたことが問題になっています。

もうひとつ、市長が担架で病院に運ばれたすぐ後に、土俵に塩が撒かれたことも、

「女性が土俵に上がって穢(けが)れたとして、塩をまいて清めたのではないか?」

という問題まで起きています。

市長が無事だったので、それは本当に良かったと思います(多々見市長はお医者さんで、心臓カテーテルの京都府で一、二を競う名医なんだそうです)が、いろんな問題点があるので、ちょっと整理しないと議論がかみ合わない気がします。

そこで、私なりに「"悪い"と批判されるポイント」を上げてみました。つまり、

  1. そもそも女性を土俵に上げないのが女性差別で悪い。

  2. 人命救助という緊急事態なのに、女性を排除しようとしたのが悪い。

  3. 女性を穢らわしいものとみなして、その女性が神聖な女人禁制の土俵に上がってしまったので塩で清めたと思われる行為が悪い。

  4. 「清め」という思想そのものが、差別につながるので悪い。

という「4点」に集約されるのではないでしょうか。

その中でとりあえず、今回の一番のポイントは、

(2)人命救助という緊急事態なのに、女性を排除しようとしたのが悪い

なのだと思います。その延長線上に(1)をどうするか?という問題がある。これの根拠としては、

「相撲は神事。神様が女神なので、女性が土俵に上がると嫉妬する」

というようなことが言われます。「船」でも同じような話は聞きますね。

また(3)(4)は、女性が土俵に上らなければ起きない問題ですので、また別の区分になります。(3)に関しては、

「女性が土俵に上ったから塩を撒いたのではなく、病人やけが人が出た場合には塩をまいて清めることになっている」

と相撲協会は話していました。つまり、

「女性差別ではない」

と。しかし、批判する人がもし(4)の立場を取るとすれば、(3)に対する相撲協会の言い分も否定され、それどころか普段の相撲の取組で力士が土俵に塩を撒くのも「悪い」ということになります。

うーん、そうすると料理屋などが商売繁盛を願って、お店の前に塩を小皿に入れて盛る、

「盛り塩」

もダメなのか?たしかに最近は、葬式帰りに渡される御礼状に、

「清めの塩」

が入っていないことが増えました。それは、

「『死』が、清めなければいけない"穢れ"ではない」

という考え方に基づくのでしょう。「塩」って、単なる、

「NaCl」

なのにね。

いろんなことを深く考えなくてはならない感じがしますが、とにかく人命救助のために、相撲協会がすぐにでも手を付けなくてはならないことは、たくさんあるように思いますね。

その前に「女人禁制」の読み方は、

「にょにんきんぜい」

宗教的にはそういうことですが、単に「女の人が入れない・立ち入り禁止」と言うなら

「女性禁制(じょせいきんせい)」

でも良いとは思うのですが。

(2018、4、6)

2018年4月11日 15:26 | コメント (0)

新・ことば事情

6785「花材」

春です。

母の誕生日のプレゼントとして花を買いに花屋さんに行きました。

そこで注文して待っている間に目についたプラカードに、こう書かれていました。

「お供えのお花、ご注文は承ります。

花材・カサブランカなど。」

まだ、「お供え」は要らないんだけどね、うちは、生きてるから。

目についたというのは、この、

「花材」

という言葉。想像するに、

「花束などを作る時の花のこと」

のことを言うのでしょう。お花屋さんの専門用語のように感じました。

あ、「華道・生け花」をする人も使いそうですね。

辞書に載っているかな?

『広辞苑』ではズバリ端的に、

「かざい【花材】=生け花の材料。」

とありました。『精選版日本国語大事典』は、もう少し詳しく、

「かざい【花材】=いけばなの材料。木、花、草、蔓などの植物のほかに、植物を枯らしたもの、金属、合成樹脂など広範囲にわたって用いられている。

とありました、詳しいな。『デジタル大辞泉』もかなり詳しくて、

「かざい【花材】=いけばなに用いる材料。木物(きもの)・草物(くさもの)・葉物(はもの)・つる物など種類も多く、ドライフラワー・金属・合成樹脂などの無機物も用いられる」

とありました。整理整頓された感じの記述ですね。「有機物」と「無機物」に分類してる。

『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『旺文社標準国語辞典』には「花材」は載っていませんでした。「家財」は載ってるんだけどね。小型辞典では『三省堂国語辞典』が載せていました。

「かざい【花材】=いけばなやフラワーアレンジメントの材料」

シンプルです。グッド。さすが。

グーグル検索では(4月10日)

「花材」=775万件。

やはり「生け花市場」というマーケットがあるので、ネット上では「花材」を扱う「商売」のサイトが、たくさんあるようですね。

(2018、4、10)

2018年4月11日 12:26 | コメント (0)

新・ことば事情

6784「ご重」

3月10日のNHKラジオ第一の佐藤誠アナウンサーの番組で、アシスタントの千堂あきほさんが、

「お重」

つまり「重箱」のことを、

「ご重」

と言っていました。漢字で書けば、

「御重」

ですが、読みはやはり、

「おじゅう」

でしょう。「ごじゅう」というのは、私ももう「ごじゅうろく」になりましたが、これまで聞いたことがありません。

そういう言い方が、辞書に載っているのか?一応調べて見ましょう。

『広辞苑』『新明解国語辞典』『精選版日本国語大事典』『デジタル大辞泉』

には、「おじゅう」は載っていましたが、「重箱」の丁寧語としての「ごじゅう」という言葉は載っていませんでした。

グーグル検索(4月10日)では、

「重箱・お重」=36万5000件

「重箱・ご重」を検索したら、「重箱・お重」で検索されてしまいました。間違いだと判断したのでしょう。

「お重」=161万0000件

「ご重」=    3890件

しかも出て来たのは「重五」などで「ご重」ではありませんでした。

「御重」=8万6700件

でした。

千堂さんは「おじゅう」という言葉を使ったことがなかったのでしょうか?

それとも、千堂家では「ごじゅう」と呼んでいたのでしょうか?

「御重」という漢字を「ごじゅう」と「誤読」して覚えていたのでしょうか?

謎です・・・。

(2018、4、10)

2018年4月11日 10:25 | コメント (0)

新・ことば事情

6783「鎮静化か沈静化か?」

4月9日の「ミヤネ屋」で、「オフィス北野」を巡る騒動について取り上げた際に、チェックをしていたら発注された紙にこんな表現が出て来ました。

静化に向けて話し合いを」

これについて、ADのKさんがが、

「新聞には『沈静化』って書いてあるんですが、『鎮静化』でいいんでしょうか?」

と質問して来ました。なるほど!良いいところに気付きましたね!「同音異義語」ですね。意味の違いは、

「沈静」=「自然と収まる」

で、『新聞用語集2007年版』では「沈静化」で載っていました。

一方の「鎮静」は、

「鎮静」=「人為的に鎮める」

どちらかというと、

「デモを鎮圧する」

のような「力ずく」のイメージがあります。

今回の場合「チン静化に向けて」というのは、

「自然に収まる(沈静する)ような方向へ、周囲の条件を整える」

という感じなので、

静化に向けて話し合いを」

でいいでしょう。ああ、難しい!

(2018、4、10)

2018年4月10日 21:24 | コメント (0)

6782「ドンペリ」

安倍首相主催の「桜を見る会」名古屋のキャバクラ嬢が招待されたという話題を、4月9日の「ミヤネ屋」で取り上げました。実際にそのキャバクラ嬢のお店での様子を取材させてもらいました。お客さんが「ドンペリ」を開けると、

「ドンペリ、入りましたあ!」

というようにはやし立てる様子は、ドラマで見た、

「ホストクラブ」

とおんなじだなと思いました。まあ、男女が入れ替わっただけで、同じですよね。

その「ドンペリ=ドンペリニヨン」という超有名な「シャンパーニュ(シャンパン)」にも、いろいろ種類があるようで、取材のVTRの中では、

「ドンペリ・ロゼ」「ドンペリP2」

なるものが出て来ました。ディレクターそれに、お店でのお値段を( )付きでスーパー表記していました。それによると、

「ドンペリ・ロゼ」(約15万円)

「ドンペリP2」(約25万円)

でした。たっかいなあ。

普通に酒屋さんで買ったらいくらぐらいするんだろう?とネット検索してみたら、同じ「ドンペリ・ロゼ」でもビンテージ(年代)によって値段が違うと。シャンパンは、

「よっぽどブドウの出来が良い年」

は、

「その年の年号(ビンテージ)を付けます」

が、普通はアッサンブラージュ(違う年のブドウを混ぜる)ので、

「ビンテージは付かない」=「ノン・ビンテージ(NV)

なんんですね。それと、ネットで見ると、

「中古品」

という表記がある物も。「中古品」と言っても「半分、飲んだ」のではなく、

「箱に入ったままで転売されたもの」

で、「中身は新品」だと思われます。当たり前だけど。それじゃないと売れないよね。昔、インドで、半分ぐらい飲み残したウイスキー(メーカーズ・マーク)の瓶を、売ったことあるけど。

シャンパンは「贈答品」としてもよく使われるんですね、味わうのはもちろんですが。

それで、肝心の値段ですが、なんと、

「3万円~65万円」

ぐらい幅がありました!ひと口で「ドンペリ」と言ってもこんなに値段が違うのか!「高い」のには、変わりはないけど。

ということで、結論は、

「ドンペリも ピンキリ」

ということでした!お後がよろしいようで・・・。

(2018、4、10)

2018年4月10日 19:03 | コメント (0)

新・読書日記 2018_048

『生き残る芸能人のすごい処世術~大物たちのここだけの話』(城下尊之、KKベストセラーズ:2017、10、30)

「ミヤネ屋」にご出演頂いている著者・城下さんに頂きました。ありがとうございます。でも、なかなか読めずにいて「早く読まなきゃ!」と思っていて、ようやく読み終えました。読み出すと、最初は、

「新聞(日刊ゲンダイ)に連載していたものだから、芸能人のヨイショが書かれていて、あまり批判とかの裏話はないのでは?」

と感じて読んでいたのですが、真ん中あたりから、

「おや?こんな目線でも書いているんだ」

と面白くなってきて、途中から一気に読み切りました。

章立ては「第1章 人心掌握術」「第2章 危機管理」「第3章 気遣い」「第4章 プロ意識」「第5章 人間力」と、一応「ビジネス書らしい感じ」に分けられてはいるけれど、それはあんまり関係なかった感じ。30数年の芸能ジャーナリストとしてのあらゆる知見を、余すところなく(?)披露してくれています。

中でも、ちょうど騒動になっている「ビートたけしさん」に関するところや、つい先日亡くなって、きのう(4月3日)「お別れの会」が開かれた「左とん平さん」など、まさに「旬」の人(もう、亡くなってはいるが)が出て来て興味深かったです。

また「松田聖子」さんの項での、

「営業成績ナンバーワンのスター社員が必ずしも優秀な管理職になれるわけではない。聖子は自分にその能力がないと知るや、あっけないほど潔く身を引いた。そこにプライドは持ち込まない。長く居座り続ける老経営者には、この視点が欠けているのではないか。」

という一文は、書かれた時期(2016年8月6日)から考えると明らかに、結局解散した"あの国民的グループ"の所属事務所の経営者に向けられている、鋭い刃だと思う。

そして、「ミヤネ屋」の「宮根誠司さん」についても書かれていますし、私の先輩の「辛坊治郎さん」まで出て来て「おやおや・・・」と思っていたら、その辛坊さんが「あとがき」まで書いていました。結構、仲良しなんですね、辛坊さんと城下さん。

あと、ほとんどの登場人物は「褒められている」のだが、一人だけ、

「強く反省を求められている人」

がいた。よっぽど・・・なんでしょうね。辛坊さんではありませんよ。それが「誰なのか」は、本を読んでくださいね。


star4

(2018、4、4読了)

2018年4月 6日 21:54 | コメント (0)

新・ことば事情

6781「自動車学校2」

「平成ことば事情6765」で書いた「自動車学校」の続編です。

やはり、

「自動車学校」

という言葉は、

「気づかない大阪弁」

でした!

『大阪府のことば』(編集者代表・平山輝男、大阪府編者・郡史郎、明治書院:1997)に載っていた『気づかない大阪弁』に、

「全国共通後とは言いにくいが、そうした意識は薄い語や表現の例」(60ページ)

として、

「自動車学校」(教習所のこと)

と載っていました。そのほかには、

「押しピン」(画鋲のこと)

「カッター」「カッターシャツ」(ワイシャツのこと)

「菊菜」(春菊のこと)

「サシ」(定規のこと)

「小(ショウ)ビン」(小瓶(こびん)のこと)

「ひく」(敷く)

「ひちや」(質屋)

「ヘレ」(ヒレ肉のこと)

「モータープール」(有料駐車場)

などが載っていました!

(2018、4、6)

2018年4月 9日 11:46 | コメント (0)

新・ことば事情

6780「エープリルフール」

4月1日は「エープリルフール」でした。子どもの頃は、一生懸命、

「何かウソをつかなくては!」

と思っていました。今年は、朝起きぬけに家族に

「きょうは晴れてるけど、お昼頃に大雨になるらしいで」

という「ウソ」をつきました。見事にみんな引っかかりました。ウシシ。

さて、この「エープリルフール」は、もちろん、

「4月1日」

ですが、ちょうどこの日の夜に一緒に食事をした82歳の父が、

「エープリルフールは、4月1日の"午前中"だけなんやで」

と言ったので、

「え?ほんま?」

と聞き返すと、

「ハハハ、引っかかった」

ヤラレタ。まだ、ボケてないな。

ところが実は『広辞苑』で「エープリルフール」を引くと、たしかに、

「4月1日の午前中」

と書かれているではありませんか!

他の辞書はどうか?と手元の辞書を引いてみたところ、

『精選版日本国語大事典』『岩波国語辞典』『三省堂国語辞典』『明鏡国語辞典』『新明解国語事典』『新潮現代国語辞典』『デジタル大辞泉』『旺文社標準国語辞典』は、

「4月1日」

でした。つまり、私が引いた辞書では、

「『広辞苑』だけが、『4月1日の午前中』と記してある」

のです。なんでやろうか?

岩波書店の『広辞苑』編集を担当している平木靖成さんにメールで聞いてみたところ、

「1991年の『第4版』から『午前中』という表記が入っているが、資料は残っていないので理由は分からない。ウェブ検索してみると、イギリスでは『午前中』という風習があるようだが・・・」

というお返事を頂きました。

謎は残りました。

(追記)

また、4月5日の日本テレビ「スッキリ」で、ちょっと変わった「エープリルフールのうそ」を紹介していました。面白かったのは、「牛丼の吉野家」の、

「吉野家が牛丼やめました」

もちろん、「ウソ」です。そして、「ファミレスのジョナサン」が、

「『サン』だと距離があり、より親しんでもらうために『ジョナチャン』に変えます」

と発表した、というのも、かわいくて笑えました。

これ、アルファベットも「t」と「c」の「1字違い」なんですね。

「Jonathan」⇔「Jonachan」

「ジョナサン」   ⇔「ジョナチャン」

うまい!

(2018、4、10)


(2018、4、6)

2018年4月 8日 18:44 | コメント (0)

新・ことば事情

6779「入都式」

1年前の、去年(2017年)の4月に書いたまま、ほったらかしでした。ちょうどシーズになったので、出します!

***********************************

4月3日月曜日、新年度が始まりました。

「東京都」に就職する人たちの「式」は、

「入都式」

なのだそうです。「都庁」で働くのだから、

「入庁式」

かと思っていました。それなら「大阪府」の場合は、

「入府式」

かと思ったら、

「職員の任命式」

だそうで、「入府式」と呼ぶのは、

「内閣府」

だそうです。

また、他の「都道府県」はどうなるのか?調べてみました。

*入都式=東京都

*入庁式=三重、愛知、北海道、香川、(滋賀)、鹿児島

*入県式=福島

*新規採用職員辞令交付式=秋田、山形、奈良、鳥取、愛媛、兵庫、佐賀、栃木

*新規採用者辞令交付式=高知

*任用式=長野

辞令交付式=和歌山、茨城、沖縄

*新規採用職員任命式=大阪府

*新規採用職員就任式=埼玉

*職員新採用者辞令交付式=岩手

*新採用者辞令交付式=青森、宮崎

*新規採用職員への辞令交付式=新潟、千葉

*新規採用職員らへの辞令交付式=徳島

*新規採用職員の辞令交付式=山口、滋賀

*今年度採用職員の辞令交付式=熊本

*辞令交付式・新規採用職員入庁式=群馬

*新規採用職員入庁式=神奈川

といった具合でした。

ついでに「会社」じゃない組織に入ることをどう言うか?調べました。

*「信用組合」=入職

*「信用金庫」=入庫

*「JA」(旧・農協)=入組

*「病院」=入職

*「特許庁」=入庁式

*「大阪市」=入庁式

でした。

***********************************これは、去年(2017年)書いてそのままになっていましたが、もう出しますね!

(2018、4、6)

2018年4月 8日 12:39 | コメント (0)

新・ことば事情

6778「天皇陛下への敬語」

3月26日夜7時のニュ-スで、天皇皇后両陛下が、沖縄・与那国島訪問をされるというニュースでの「敬語」について気になりました。

女性アナウンサーが読んだ原稿で、

「天皇皇后両陛下は、沖縄に思いを寄せ続けられてきました」

「沖縄の文化の理解にも努められてきました」

という、

「られる敬語」

を使っていたのですが、これに違和感が。特に最初の、

「寄せ続ける」

という「複合動詞」において違和感が顕著でした。私なら、それぞれ、

「天皇皇后両陛下は、沖縄に思いを寄せ続けてこられました」

「沖縄の文化の理解にも努めてこられました」

とするところです。

こう直して並べて見ると、違和感があった文章に使われていて違和感があるのは「られる」だけではなく、

「きました」

ではないか?と思います。「きました」は「敬意表現」ではありませんよね。

それが文の最後に来るのが「違和感の原因」ではないか?

「きました」→「こられました」

と、ここで「られる敬語」を使った方が、敬意は表されるのではないでしょうか?

(2018、3、27)

2018年4月 7日 12:24 | コメント (0)

新・ことば事情

6777「髭・鬚・髯」

3月30日の「ミヤネ屋」のゲストでお笑いコンビ、

「髭男爵」

の「山田ルイ53世」さんが出演してくれました。テレビ画面で見るよりもかなり大きな人でした。彼は関西出身なんですね。さて、それで、

「髭」

です。実は「ひげ」を表す漢字は「3つ」あります。タイトルに書いた通り、

「髭・鬚・髯」

の3つです。それぞれ、どの部分の「ひげ」なんでしょうか?調べたところ、

・「髭」=口ひげ

・「髯」=頬(ほお)ひげ

・「鬚」=顎(あご)ひげ

です。しかし、3つの漢字とも、

「表外字」(常用漢字ではない)

ので、放送などでは普通は、

「ひげ」「ヒゲ」

なのですが、「固有名詞」は例外的に出て来るので、「髭男爵」という「コンビ名」=「固有名詞」なので、珍しく「鬚」が生えて来た・・・出て来たということです。

それで、難しい漢字(表外字)なので、全部ではないですが、

「髭(ひげ)男爵」

と「ルビ」を振りました。でもこれって実は、もし、

「とっても有名な人」

であれば、

「ルビを振ることは、その人にとって失礼に当たる」

ので、ルビは振りません。ルビを振るということは、

「有名ではない」

と言うことになるので、できたら振りたくなかったのですが、

「読めないかも・・・」

ということで、一部、ルビを振りました。山田ルイ53世さん、ゴメンナサイ。

(2018、4、5)

2018年4月 6日 19:22 | コメント (0)

新・ことば事情

6776「デコポンのアクセント」

平成ことば事情5064「デコポンとくまモンのアクセント」で5年前(2013年4月)に書いたものの関連です。

その際に「デコポン」のアクセントに関して、NHK(当時)の原田邦博さんから、

「かんきつ類の『デコポン』。今、NHKの番組では『デ\コポン』と『頭高』で言いました。関東人としては『デ/コポン(平板)』が自然なのですが・・・。これは登録商標ですので、権利者の熊本県のJAがどう言うか?なお、品種名は『しらぬい』です。」

という質問を受けて、熊本県民テレビ(KKT)のアナウンス部長に聞いてもらったところ、

「熊本では『平板アクセント』で『デ/コポン』と言う。しかし、同じくデコポンを作っている四国では、『デ\コポン』と『頭高』で言っているケースもあるようだ」

という答えをもらっていました。

ところが、きょう(2018年4月5日)、その「熊本のデコポン」のコマーシャルをやっているのを見たら、

「JAあしきた(熊本)果実部の竹村鉄也さん」

という方が出演していて、その竹村さんも、ナレーターの男性も、

「デ\コポン」

というように、

「頭高アクセント」

だったのです。「熟成」がついて、「熟成デコポン」では、

「ジュ/クセーデ\コポン」

でした。

また、2016年5月に出た『NHK日本語発音アクセント新辞典』にも「デコポン」は載っていて(それ以前の1997年に出た『NHK日本語発音アクセント辞典』には「デコポン」は載っていなかった)、

*「デコポン(かんきつ類、商標名)」

=デ/コポン(平板アクセント)、デ\コポン(頭高アクセント)

の順番で載っていました。

どちらのアクセントOK、ということなんですかねえ。

(2018、4、5)

2018年4月 6日 17:21 | コメント (0)

新・ことば事情

6775「菊池桃子さんにストーカー容疑」

4月3日の産経新聞夕刊(大阪版)に、こんな見出しが、

「菊池桃子さんに ストーカー容疑」

サブタイトルで小さい文字が、

「無職の男逮捕」

とありました。

ご存じのように、元タクシー運転手の56歳の男が、菊池さんをタクシーに乗せたことから自宅などの場所を知って、付きまとって逮捕されたという事件です。

しかし、この産経新聞の見出しだと、

「まるで菊池さんがストーカーをして、捕まったみたい」

です。ここは、

「菊池桃子さん ストーカー被害」

とするか、

「菊池桃子さんに ストーカー行為」

とすべきでしょう。「被害者」か「加害者」かが、しっかりとわかる書き方を、たとえ「見出し」でもすべきです。

同じ日の読売新聞の電子版の見出しは、

「菊池桃子さんにストーカー行為、56歳の男逮捕」

でした。これなら、わかりやすい。

なお、男は「好意があった」「行為」を認めているそうです。これもヤヤコシイな。

(2018、4、5)

2018年4月 6日 15:20 | コメント (0)

新・ことば事情

6774「退職か?退局か?」

NHKの有働由美子アナウンサーが、3月31日をもって、27年間勤めたNHKをやめました。それを指して、

「退職」

というのか?

「退局」

というのか?

4月4日の新聞各紙は、

【退職】スポーツ報知・ニッカンスポーツ・サンケイスポーツ・毎日・産経・日経

【退局】スポーツニッポン・デイリースポーツ・読売・朝日

というように、

「退職:退局=6:4」

でした。

以前、女優の野際陽子さんが亡くなった時に、昔NHKを辞めたことを「退職」「退社」「退局」のどれを使うか?ということを、去年7月の新聞用語懇談会放送分科会で質問しました。そのときの各社の回答は、

(NHK)「退局」は原稿にはなかった。「入局」「退局」も「入った」「やめた」と和語で言い換える。

(フジテレビ)野際陽子さんは「女優に転身」という表現で「NHKをやめた」という関係の表現はなかった。

(TBS)野際さんはNHKを離れた後は「TBS」の番組に来られたので、この場合は「TBSが抜擢」か。(笑)

(テレビ東京)野際陽子氏については、元NHKアナウンサーで民放(テレビ東京)に移ったという「経験者である私」(=発言者)から言わせてもらうと、外部から言われた表現は、全部「退職」だった。

ということでした。

4月4日の「ミヤネ屋」で、有働アナウンサーに関しては、「NHKに入った」のは、

「入局」

にしました。この「入社」「入局」に関しては、以前、野際陽子さんが亡くなった際に、

「NHKに入社」

としたら視聴者の方から

「NHKは『入局』と言うのだ」

というご指摘があったこともあり、「入局」にしたのです。

しかし「NHKをやめた」ことに関しては、

「退職」

で放送しました。「入局」の「対」は「退局」ですが、これはなじまないということと、この日取り上げた「日刊スポーツ」は「退職」だったので、担当ディレクターの主張に合わせて、

「退職」

にしたものです。

「就職」の中に「入社」「入局」があり、「退職」の中に「退社」「退局」が含まれますよね。

(2018、4、5)

2018年4月 6日 11:54 | コメント (0)

新・ことば事情

6773「全治不明2」

大阪・茨木市の住宅での飲み会中に、男性の頭を殴るなどして殺害しようとしたとした男女4人が逮捕されたニュースを、4月2日の夕方のニュースでやっていました。

その被害者の男性のケガの程度について、

「全治不明の重傷」

と言っていたのが耳に留まりました。普通は「全治1か月」とか「全治3か月」などと言うのに、

「全治不明」

というのは、よほど症状が重いのですね。

これ、以前書いたような気がしてきた。検索してみると・・・やっぱりあった!

平成ことば事情5982「全治不明」

ですね。2年前に書いています。それ以来、ですね。

ごくたまに耳にする程度の重いケガということですね。

ごくたまに、でも、聞きたくない言葉でもあります。

(2018、4、3)

2018年4月 3日 21:37 | コメント (0)

新・ことば事情

6772「朝ごはん、抜かしてきました」

4月3日の「かんさい情報ネットten.」、大阪・京橋グルメ取材で、中谷キャスター・黒木アナウンサー・お天気の蓬莱さんが、芸人のヤナギブソンに導かれてマグロのお寿司のお店を紹介していました。その中で黒木アナウンサーが、ズラリと並んだマグロの色んな部位のお寿司を見て、歓声を上げて、

「きょうは朝ごはん、抜かしてきました」

と言いました。でもこれは普通、

「朝ごはんを、わざと食べないこと」

を指しては、

「抜く」

と言い、

「抜かす」

とは言いません。従って、

×「朝ごはん、抜かしてきました」→○「朝ごはん、抜いてきました」

ですね。

「抜かしてきました」

なんて言い方をすると大阪では、言葉のことでゴチャゴチャと絡んでくるガラの悪いおっちゃんに、

「何、抜かしとんねん!」

と言われます。あ、オレのことか。

ちなみにこの場合の「抜かす」は、

「(ふざけたことを)言う」

という意味です。

(2018、4、3)

2018年4月 3日 19:36 | コメント (0)